日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク
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対談企画 NETACサイトコーディネーターに学ぶ聴覚障害学生支援

【企画主旨】

 PEPNet-Japanのモデルとなった米国PEPNet(聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク)では、全米を4地区にわけてそれぞれに地域センターをおき、ここが中心となって各地区の聴覚障害学生支援体制充実をはかっている。本対談ではこのようなPEPnetの中でも、最も積極的な取り組みを行っている北東地区の地域センター「北東地区テクニカルアシスタントセンター(netac)」から、お二人のゲストを招き、全米における聴覚障害学生支援の取り組みについてお話を伺いたい。

【司 会】

白澤麻弓氏(筑波技術大学)

ゲスト

【ゲスト】

barbara keefe氏(メイン州サイトコーディネーター)
desiree duda氏(ニューヨーク州サイトコーディネーター)

【概 要】

 ニューヨーク州サイトコーディネーターのdesiree duda氏(写真右)とメイン州サイトコーディネーターのbarbara keefe氏(写真左)に、アメリカでの支援の現状についてうかがった。聴覚障害学生支援に関する情報を提供するNETACの体制と、netacからサポートを受けて学生支援を実施する大学側それぞれの状況について、さまざまな具体例を聞くことができた。

【対談(一部)】


司会/netacとお二人のお仕事について教えてください。


barbara keefe氏/私はメイン大学に雇われています。労働時間全体のうち、90%はメイン大学の業務、10%をNETACの業務に充てています。しかし、たまたまメイン大学内で担当している業務がe-learningに関わるものなので、ちょうどNETACの仕事と共通する部分が多くなっています。

desiree duda氏/私はnetacコーディネーターを専門としていますが、身分はラガーディア・コミュニティカレッジの職員です。このような例は珍しく、13人のNETACサイトコーディネーターのうち、専属で仕事をしているのは私とサチューセッツ州担当者の2人だけです。netacでは、サイトコーディネーターとして、他大学から来る聴覚障害学生支援に関する質問に答えたり、要望に応じてワークショップを開くなどの支援を行っています。

司会/サイトコーディネーターの給与はどのように支払われているのですか?


desiree duda氏/netacには米国教育省より年間約1億円の資金援助がなされています。サイトコーディネーターの給与も、この予算の中から働きに応じて支払われる形になっています。例えばkeefe氏の場合、10%の勤務時間をNETACの業務に充てているということでしたが、この場合には10%にあたる人件費をnetacが大学に支払い、大学のシステムを通じてサイトコーディネーターに支払われる仕組みになっています。
1億円というと非常に大きな額ですが、聴覚障害学生支援の資金は、約10年前までは国の予算から各個別大学に提供されていました。しかし、具体的な支援方法は大学独自で考えなければならない状態でしたので、個々の大学では支援方法がわからず、行き詰まりが生じたワケです。そのため、より発展性のある方法として、PEPnetのようなセンター的機能を持っているところに資金提供されるようになったという経緯があります。つまり、国はセンターに資金を提供すれば、支援に関する情報やノウハウがそこに集約され、これが各大学への還元につながると考えたわけです。

司会/netacから支援を受けている大学の状況はどうなっていますか?

barbara keefe氏/アメリカの場合、各大学にもたいてい1人以上の障害学生支援コーディネーターがいます。しかし、受け入れる障害学生数が少ない大学では、聴覚障害の専門のコーディネーターではなく、すべての障害を対象にしている方が多くなります。メイン州の場合、こうした大学が非常に多いので、私自身は彼らに聴覚障害についての知識を与える仕事をしています。

desiree duda氏/ニューヨーク州の高等教育機関は2つのタイプに分かれます。 1つは、聴覚障害学生が10人・30人と多く在籍していて、聴覚障害学生専用の支援室があるというケースです。この場合には、聴覚障害について知識のあるコーディネーターやカウンセラーがいて、たくさんの支援サービスが用意されています。こうした大学からの質問というのは、すでにある程度整っている支援サービスをさらに向上させたり、特別なニーズに応えるために出されるもので、内容も非常に絞られてきます。
これに対して、もう1つのタイプの大学というのは、keefe氏が指摘していたように、コーディネーターが1人だけしかいないような大学です。この場合、はじめて聴覚障害学生が入学して、どのように対応していいかわからないという「パニック状態(?)」にあります。そのため、netacからはまず聴覚障害についての基本的な知識を提供し、関係者を励ましていくことになります。

司会/具体的にどのようなアドバイスをされるのですか。

desiree duda氏/これまで聴覚障害学生を相手にした経験がないコーディネーターの場合、どのようなサービスを提供すべきなのかといった全体像を理解していないことが多いです。そのため「聴覚障害なら手話通訳」と短絡的に判断するケースもよく起こります。ですので、まずコーディネーターが学生と対面し、そのようなニーズを持っているのか聞いてくださいと助言します。具体的には、コミュニケーション手段は何なのか、どのようなサポートが適しているのか、そのサポートは実際に提供可能なのか、可能であればどうやって提供すればいいのか、無理であれば代替手段としてどのようなことが考えられるか・・・などです。その上で、例えば手話通訳が必要となった場合には、どこに連絡をすれば派遣が得られるのかといった情報を伝えます。

司会/日本では、専門的な手話通訳者やノートテイカーの派遣機関がなかなか見つからない状況にありますが、そういう問題はアメリカでは起こりませんか。


desiree duda氏/同じ問題はアメリカでも常に生じています。特に、技術の高い通訳者はどこでも引く手あまたなので、なかなか十分には確保できません。例えば、ニューヨーク市のようにろう者の人口が多いところでは手話通訳者も密集していますが、依頼数も多いので結果的には通訳者不足が生じてしまいます。
ただ、最近では手話でも文字でも遠隔地情報保障という手段が出てきているので、昔のように通訳者不足により派遣できないという言い訳が成り立たなくなってきています。

barbara keefe氏/ただし、聴覚障害学生の中には、遠隔手話通訳サービスを好まない人もいます。やはりどの学生にとっても、手話通訳は生で見た方がわかりやすいし快適ですから。

【質疑応答】

q.太田晴康氏(静岡福祉大学)

アメリカでは、障害学生支援というのは支援を受ける「権利」という枠組みで提供されていると理解しています。これに対して、障害学生の側からその権利を侵害された、あるいはサービスがない故に、私たちは非常に差別を被った、と訴えた事例があるのかどうか。あるとしたらその裁判がどういう結果になったのか教えて下さい。

A.desiree duda氏

アメリカ西部の有名な大学で、多くの聴覚障害学生を受け入れているところがあります。この大学の中で、ある学生グループが、手話通訳サービスが受けられなかったと、訴えたケースがあります。
この大学では、多くの授業で手話通訳が提供されていましたが、全部についていたわけではなかったのです。そのため、連邦市民権事務所が入り、調査を行いました。この結果、学生たちの主張が認められ、大学側にはニーズに応じたサービスを提供できるような制度に作り替えるようにと、改善命令が出ました。
これを受けて大学側は、手話通訳のサービスを極力増やす努力もしましたが、同時に同じ授業で複数のコマに分かれて開講されているような授業科目を履修する場合には、どの授業に手話通訳がつくかという情報を提供し、できるだけ多くの聴覚障害学生がまとまったグループで授業を履修できるかたちを取りました。また、聴覚障害学生には事前履修登録制度を設け、優先的に手話通訳のつく授業に参加できる形にしたという例があります。

A.barbara keefe氏

他にも、C-print[という文字通訳サービス(80%程度の要約した情報が提供される)を受けていた聴覚障害学生が、cart(100%の情報が提供可能な速記方式による文字通訳サービス)による支援を受けたいと訴えたケースもあります。
この学生は、医学部に在籍しており、この場合も調査の結果、当該学生には100%の文字情報が必要だと認められました。その後、大学側はこの学生にcartサービスを提供するようになりました。

対談の様子

q.金澤貴之氏(群馬大学)

先ほどの話に関連してうかがいたいのですが、近隣に手話通訳者がいても、それでは質的に十分な情報保障ができないという理由で遠隔手話通訳サービスを希望する学生はいるのでしょうか。

A.desiree duda氏

非常に興味深い質問だと思います。アメリカは非常に大きな国なので、大都市圏ではないところにいる学生が、遠隔手話通訳でいいから質の高い通訳を望むというケースはありうると思います。ただ、ほとんどの聴覚障害学生は、やはり遠隔による手話通訳よりも生の通訳の方がよいと考えているようです。
ただ、「質」が重要なキーポイントになるのは確かです。大学機関の中には、質について考慮せず、とにかく手っ取り早く通訳者を確保するような場合もあります。しかし、通訳というのは特殊技術です。手話を知っていることと通訳ができることは大きな違いがあることは皆さんご存知の事実です。

開催要項プログラム基礎講座分科会(1)分科会(2)対談企画パネルディスカッション参加者の声当日資料


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