Q 文字による支援方法にはどのようなものがありますか?
文字による支援方法とは
「文字による支援」とは、教員などが発した音声を何らかの方法で文字に変換し、聴覚障害学生に提示することによって、聴覚障害学生を授業に実質的に参加させるための支援(講義保障)のことです。
音声を文字に変換する方法は様々で、手書きによる方法や一般的なパソコンを利用する方法、あるいは特殊な機材を利用する方法などがあります。また、速記入力のようにすべての言葉を文字化することが可能な方法もあれば、状況に応じて要約して伝える方法などもあります。さらに最近では遠隔地からの支援についても徐々に実用化されはじめています。
どの手法を利用するにしても、情報保障に対する教員や関係者の理解が必要となります。また、毎回の授業で情報保障を提供するためには、人員の確保はもちろん、コーディネート業務なども必要となることがあります。
通常、アナウンサーの話す速度は1分間あたり350文字から400文字と言われています。手書きや一般的なパソコンを利用する方法では、この発話速度に追従することは困難です。そのため、話者の発話速度によっては発話者の話の中から重要性の高い内容を抽出して伝える(要約する)ことが重要な技術の1つとなります。
どの手法も、聴覚障害学生にわかり易く、そしてスムーズに実施するためノウハウが蓄積されています。
文字による支援方法の種類
各手法の概要
手書によるノートテイク | 読みやすさを考慮した筆記具、ノートやルーズリーフ | 原文の2割程度(70文字/分程度)。箇条書き、体言止め、略語等を活用する | 読みやすい筆記。要点と構造を理解し、構文を作成する力 | 授業を理解する専門性が必要。導入は容易だが、スキルアップに課題もあり |
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パソコンノートテイク | 一般的なパソコン、支援用ソフト、ワープロソフト等 | 1名での要約入力では原文の4~5割。複数名による連係入力では8割程度 | パソコンを筆記用具として活用する力。整文する力。連係した文章作成 | パソコン操作の習熟が必要なので、トレーニングが欠かせない |
OHCを用いた 手書き要約筆記 | OHC、投影用スクリーン、用紙、ペン等 | 3名以上のチームで担当。筆記者が1名の場合、原文の2割程度。補助の筆記者との連携で3~5割程度 | 機材の特性に即した使い方や連携作業。要約して文章を構成する力。連携した文章作成能力 | 地域福祉分野で養成を受けた人材の活用も可能だが、高等教育に対応可能な知識と技術の追加習得が必要 |
音声認識 | 音声認識ソフトウェア、マイク、一般のパソコン、通信用機材等 | 要約からほぼ全文まで多様。復唱者、修正者ともに1~複数名が交代で担当 | 音声認識に適した話し方、教員の音声を聞きながら発話する能力。独特の誤変換を修正する能力 | 実験的な段階であるために、主に復唱に必要な技能やその養成手法等が明確ではない |
速 記 (特殊な入力装置を利用) | 特別な機材(キーボード、連携作業用の機材等) | ほぼ全文。1名ずつ交代で実施する他、入力担当と校正担当を組み合わせ同時に2~6名で実施する形態もあり | 特殊な入力装置に応じた入力技能、連携した文章作成能力。いずれも数年に及ぶ特別な訓練が必要 | 高速な入力が可能になるためには長期に渡る訓練が必要で、それに応じたコストがかかる |
参考になる資料
文字による支援方法については、以下のTipSheetに概要がまとめられています。
TipSheet「文字による支援方法 ⑬」
三好茂樹(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター准教授)
文字による支援とは?
ノートテイク
OHPを用いた手書き要約筆記
パソコンノートテイク
速記による支援
音声認識による支援
遠隔地での支援
おわりに
→「 文字による支援方法 」ダウンロード

