Q 手話通訳者の健康を守るためにはどのようなことに注意したらよいですか?

手話通訳作業に関する注意

長時間の連続した通訳をなくし、一日の作業量を適切に管理して過労を防ぐ必要があります。あらかじめ通訳内容がわかっている授業でも、1時間を越えて一人の通訳者が行うことは負担が大きすぎるため、交代で通訳にあたる必要があります。
通訳者がとる休憩については、心身がリラックスできる条件が必要です。
その他、手話通訳者に通訳内容をあらかじめ伝えて学習・準備できるようにすること、ゼミや会議などで複数の者が同時に発言することがないように事前に司会者や参加者の協力を求めること、会話が早すぎないよう配慮を求めること等も通訳者の負担を軽減する上で大切です。

手話通訳環境に関する注意

手話通訳者が椅子に座り、聴覚障害者に面して通訳するようにすべきです。机などを間に挟むと、不必要に腕を上げて通訳しがちになり良くありません。冷風にさらされた場所での通訳や、騒音や周囲の話し声などで音声が聞き取りにくい場での通訳や、照明が暗かったり逆光での通訳も負担を大きくします。手話通訳者の健康を守り、質の良い通訳を保障するためにも、通訳者にとって通訳しやすい環境が大切です。

健康管理に関する注意

頸肩腕障害の初期症状は腕や肩のだるさやこりなどの一般的な筋疲労症状で始まるため、検診を通じて心身の状態を把握し、予防や疲労回復をはかるための指導や通訳量の調整などを行う必要があります。手話通訳者がプロであってもボランティアであっても、手話通訳を依頼する大学や教員は手話通訳者の健康に関して配慮する責任があります。手話通訳者の利用頻度が高い大学は、手話通訳のコーディネートについて専門研修を受けた職員等を準備すべきです。

手話通訳者の自己努力

頸肩腕障害は筋の疲労が原因で生じるので、手話使用前後にストレッチ体操を行うことは予防に効果があります。手話通訳者向けのストレッチ体操のDVD教材も出版されていますので、正しいストレッチ体操の行い方を身に付けて下さい。

TipSheet「通訳者の健康障害とその対応」垰田和史より
(2007/11/30)

参考になる資料

通訳者の健康障害とその対策については、以下のTipSheetに概要がまとめられています。

TipSheet「通訳者の健康障害とその対策 ⑲」
垰田和史(滋賀医科大学社会医学講座予防医学分野)

はじめに
頸肩腕障害とは
手話通訳における頸肩腕障害問題の経過
なぜ手話通訳者は頸肩腕障害になりやすいのか
手話通訳者の健康を守るための注意事項
おわりに

「通訳者の健康障害とその対策」ダウンロード

チップシート「通訳者の健康障害とその対応」1
チップシート「通訳者の健康障害とその対応」2

この他参考になる書籍には以下のようなものがあります。

■手話通訳者の健康管理マニュアル

全国手話通訳問題研究会 編/垰田和史 監修
文理閣
第Ⅰ章 手話通訳者の健康保障への取り組みの経過
第Ⅱ章 手話通訳者の健康障害
第Ⅲ章 予防対策
第Ⅳ章 手話通訳の歴史と役割
第Ⅴ章 スイスの手話通訳者と健康問題
第Ⅵ章 静岡県の手話通訳者の健康管理実践例

健康管理マニュアル表紙
■ヒューマン手話通訳の発見

垰田和史 編著
文理閣
Ⅰ 手話通訳者がたのしく生きるための労働と健康
 手話通訳者の健康とけいわん予防
Ⅱ さらに学習するために
 手話通訳者の頸肩腕障害予防の方策
 専任手話通訳業務により発症した頸肩腕障害の一例
 聴覚障害者に受療抑制はあるか?-手話通訳者を配置した病院の来院状況から

ヒューマン手話通訳の発見表紙
■手話通訳がわかる本

全国手話通訳問題研究会 編集/伊東雋祐・小出新一 監修
中央法規
第1章 聞こえないってどんなこと?
第2章 あなたも手話通訳にチャレンジ
第3章 よりよい手話通訳を目指して

手話通訳がわかる本表紙
■みんなでめざそうよりよい手話通訳

財団法人全日本ろうあ連盟・全国手話通訳問題研究会 発行
はじめに
a 心がけたい基本事項
 ①手話通訳を依頼する方々に
 ②ろうあ者の方々に
 ③手話通訳者の方々に
 ④手話通訳者の健康管理
b いろいろな場面での手話通訳
c 手話通訳のよりよい環境を求めて

みんなでめざそうよりよい手話通訳表紙
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