タイトル:情報保障支援学生団体「てくてく」における学生講座の成果と課題 発表者:細川祥吾 後藤恵 萩梨奈 大口万里亜(愛知教育大学 てくてく) ■背景 ◆今年度100名を超える1年生が情報保障支援学生団体「てくてく」に加入した。 ◆長年の課題として「支援の質の保障」があり、その改善策として、てくてくでは「学生が主催する保障の質の向上を目的とした学生講座(以下、学生講座)」を始めた。大学では「学生支援者の養成を目的とした講義」が開講された。 ◆学生講座について、今年度は2つの活動が行われた。 ①パソコンテイクを利用者側で疑似体験する活動と、手話の理解と支援学生同士のつながりを増やすことを目的とした②手話部の活動である。 ■①パソコンテイクの疑似体験 目的:支援学生が授業のパソコンテイク支援について利用者側の視点で疑似体験し、支援の質を高める方法を考える。 講座内容:昼休みに約30分のワークショップ(同じ内容)を2回開催し、延べ10名の参加があった。利用者役(ヘッドホン着用)は文字情報だけで授業を体験し、支援者役は模擬授業のパソコンテイクを行った。その後お互いの立場から感想や改善点を共有した。これを利用者役と支援者役の立場を交代して再度行った。 写真:ノイズが流れるヘッドホンをして、文字情報だけで授業を受ける体験をする様子 写真:利用学生と支援学生で行った研修会の集合写真 ■課題 課題として、活動の継続の難しさが挙げられる。今回のような活動に、より多くの支援者が参加し研修できるように団体として継続的に企画・運営を行う基盤作りが課題である。後期は毎週木曜日の昼休みに支援者向けのミニ講座を計画している。 ■成果 「『文字情報』と『授業のスライド』と『話者』を同時に見るのはとても大変だった」という感想が多かった。授業支援を行うのみでは気づかない発見であり、講座の目的を達成することができた。また、講座を企画・運営した学生からは「当日の準備や改善点の共有を学生同士で行えたことに、大きなやりがいを感じた」という感想を聞くことができた。これは、学生主体の活動特有の成果と言える。 ■②手話部 目的:手話の学習を通して学生同士の交流を深める。 講座内容:毎週木曜日の昼休みに約30分のワークショップを合計13回行った。 毎回10~20名の参加があり、昼食を取りながら和んだ雰囲気で学習を進めた。 講座内容は、前半で指文字や基本的な手話を教えた後、後半は実際に手話を使って参加者同士の交流を行った。指導者は、特別支援教育専攻の3年生が担当した。聴者の支援学生だけでなく、聴覚障害のある利用学生が手話の指導を行うことで、授業以外の交流の場となった。 写真:手話部の様子。4人の小グループで手話で会話する様子 写真:8人が輪になり、手話で自己紹介をしている様子 ■成果 手話部の活動を通して、定期的にてくてく関係者の学生が集まることで、授業での緊張した時間と違って、互いについて情報共有をする場が生まれた。参加学生から「学生間のつながりがより強くなった」「支援をすることへのモチベーションが上がった」との感想が挙げられ、目的を達成することができた。 ■課題 課題として、参加学生の偏りが挙げられる。毎週同じ曜日の同じ時間に行ったため、授業や課外活動により都合が付かず、参加できる学生が限定されてしまった。手話に興味のある学生は多いので、手話部の活動の機会を増やしていきたい。 ■まとめ 学生が主体となって企画・運営を行った学生講座は、両講座ともに当初のそれぞれの目的に加えて、学生同士の学び合いから、支援の枠に留まらない場作りや新たな気づきを学生に提供することができた。これは、教員が教えて学生が学ぶ正課の活動では得ることのできない学生講座特有の学びであった。今後もこのような学生講座を継続し、学生同士で学び合うことで質の向上を図りたい。 以上