実践発表P7 タイトル:ろう難聴学生のための大学同士による国際交流のパラダイムシフト 大学間交流協定締結校・米国ギャローデット大学とのオンライン国際協働学習(COIL)実践 発表者:小林洋子(1), ジニー・ガーツ(2), 田中晃(1), 神村幸蔵(1), 井上正之(1), 藤井太陽(1), 平賀瑠美(1)   (1) 筑波技術大学, (2)ギャローデット大学 ■はじめに 筑波技術大学とギャローデット大学*は、ろう難聴(聴覚障害)学生のための大学同士として、従来から学生や教職員同士の教育や研究における交流活動を実践してきている。2023年7月にはオンライン国際協働学習(COIL)を通じて、文化や言語、価値観の異なる学生が、その違いを認識し、オンライン上で協働して課題に取組むなど、双方大学の学生・教職員の交流活性化を図り、障害者が活躍する社会の実現に向けた取組みを促進すること等を目的として覚書を交わしている。本稿では、筑波技術大学の学生とギャローデット大学の学生とのオンライン国際協働学習(COIL)の概要について報告するとともに、実践の中で明らかになった学習効果と課題等について考察する。 *ギャローデット大学:米国ワシントンD.C.にあるろう難聴(聴覚障害)学生のための総合大学。世界100カ国以上から多様な背景を持つ学生や研究者が集まってきている。筑波技術大学と同様に、ろう難聴(聴覚障害)者が集うコミュニティとしても知られ、障害バリアのない環境の中でろう難聴(聴覚障害)学生がキャンパスを拠点として共同生活を共にしてきている。 ■オンライン国際協働学習(COIL)とは 「Collaborative Online International Learning」の頭文字を取った略称 オンライン会議システムや情報共有アプリケーションなどのコミュニケーションツールを活用し、国内に居ながら海外の学生と繋がり、協働学習を行うという教育実践手法 ■成績評価:単位付与 筑波技術大学:異文化コミュニケーション Cross-cultural communication ギャローデット大学:ろう者学入門 Introduction to Deaf Studies オンライン国際協働学習:継続的交流(オンラインでの国際交流、異文化間コミュニケーションスキル向上) オンデマンド授業:知識習得(コンテンツ作成・共有、いつでもどこでも学習) 現地研修(短期留学):異文化体験(現地の施設訪問、空間・感動の共有) ■実戦 同期型 1回目:2024年9月24日 ・アイスブレーキング ・自己紹介1 ・共通の学習テーマ「国際ろう者週間」「手話言語国際デー」についてプレゼンテーション ・ディスカッション 参加者数 筑波技術大学学生10名、ギャローデット大学学生30名 2回目:2024年11月19日 ・グループワーク ・自己紹介2 ・ディスカッション ・グループワークの内容についてプレゼンテーション 参加者数 筑波技術大学学生9名、ギャローデット大学学生21名 非同期型 ・同期型1回目の前 ・事前講義 ・動画コンテンツ配信 ・交流校について調べ学習 ・共通の学習テーマについて調べ学習 ・ASL学習 ・自己紹介動画作成 ・JSL教材作成、配信 同期型1回目の後 ・事後講義 ・動画コンテンツ配信 ・自己紹介2について準備 ・ASL学習 同期型2回目の後 ・事後講義 ・SNSを用いた学生相互の交流 ・米国のろう社会について調べ学習 ・現地研修準備 ・ASL学習 使用言語:アメリカ手話(ASL)、日本手話言語(JSL) 情報保障:ASL-JSL、JSL-日本語 ■考察 多様なオンライン学習方法を活用したオンライン国際協働学習(COIL) の実践により、学生が世界や日米におけるろう難聴(聴覚障害)の社会的・文化的な知識を深める様子が伺えた。また、オンラインを通じて異なる視点からの意見を互いに共有し合うことで、大学内の講義だけでは得られない異文化理解や異文化コミュニケーションの促進が可能であるということが示唆された。一方で、使用言語の違いや、情報保障を通じたオンラインでのコミュニケーションの難しさ、文化的背景や学年、専門知識の違いなどからくる心理的なハードルなど、実施の方法に関する課題も示された。 (イラスト:人物アイコンの周りに4つの吹き出しがある。それぞれ以下のコメントが記載されている。 ・相手国への興味関心、留学志向増進 ・多様性を受容する力の向上 ・チャレンジ精神、主体性向上 ・実践的語学力、コミュニケーション能力向上)