■タイトル 聴覚障害学生のいない中小規模大学における情報保障支援の維持と整備 ■発表者 和歌山大学キャンパスライフ・健康支援センター 小馬加奈子 (和歌山大学のシンボルマーク) ■背景・目的 本学は全学生4500名程度、4学部1学環を有する中規模大学である。支援部署設立(2014年)以降、情報保障の利用を必要とする学生は在籍していない。いざ支援が必要になった際に迅速かつ適切に対応するためには、教職員や大学自体が「備え」を維持し続けることが不可欠である。 本発表では、@教育的要素としてのサポーター学生養成、A即応性・安定性を担保する学外資源の活用と連携、B文化の醸成を目的とした学内への働きかけ、という三つの観点から情報保障体制維持の実践を紹介し、その課題を検討する。 ■サポーター学生養成 本学での取り組み 情報保障に限らずに、通年での募集を行っている。(現在13名) ・サポーター学生に対する情報保障導入講座 基礎的な知識の導入/音声認識活用の紹介。 ・継続的なテイク研修 2024年度は1名(週1、6回)実践レベルまでの向上を目的。 ・他大学と連係した研修会 2024年度は1度開催(オンライン) ・オープンキャンパスでのサポーター学生による情報保障活躍の機会を作り、自信やモチベーションの向上につながる。 (サポーター学生養成講座の写真) 課題 ・活動機会が少なく、モチベーションが保てない/参加学生が少ない。 ・実践的な指導ができるスタッフが必要。 今後の展望 ・学内での活躍機会を増やす 入学式/卒業式/オープンキャンパス/支援部署関連の授業/FD/SD 等 ・聴覚障害学生以外にも役立つ支援であることのフィードバック。 ・サポーターとしての活動が、大学卒業後も活きる経験となることを意識させる。 ■学外資源の活用・連携 本学での取り組み ・情報保障企業/団体の活用年に1度の利用(FD/SD)利用実績の積み上げになる。 ・学内支援担当者の変更の後も支援できる状況を担保する。 本学での主な担当が1名のため、担当者の変更で大きな影響が出る可能性がある。 ・PEPNet-Japan準会員への参加研修への参加。 相談箇所の確保。 課題 ・費用面での負担が大きいため、通常授業での導入は困難である。(本学学生謝金1000円/時間) ・地域団体との連係の弱さ。 今後の展望 ・今連係のある団体だけではなく、複数団体とのルートを確保する。 ・引き続き、定期的に学外団体の利用を続け、利用実績やノウハウを蓄積し、必要な際には迅速な依頼を行えるようにする、 ・他大学との連係合同研修や模擬演習を行い、実践機会の確保につなげる。 ■学内への働きかけ 本学の取り組み ・全学FD/SD研修への文字情報保障の導入 利用希望はなくても、すべての参加者が利用可能。 「理解の助けになった」と感想。 ・教職員の情報保障体験 複雑ではない・負担も少ないという実感につながった。 ・支援機器の整備 ロジャー/iPad/スタンド等予算に余裕がある時に購入する。 (学内FD/SDでスクリーンに文字情報保障を出している様子の写真) 課題 ・不在なことで「今は不要」と判断されやすい。 ・未知の支援に対しての教職員の心理的ハードルの高さ。 ・機器の点検/管理の不十分さ。 今後の展望 ・支援機器活用方法の作成/共有。 ・教職員を対象とした、支援機器/情報保障体験イベントを開催し、実感に繋げる。 ・提供義務が教員一人ひとりにも課せられているという啓発。 ・情報保障の利用を年次行事化し、利用学生の有無に関わらず継続。 ・授業改善や全学生への授業支援に応用する。 ■考察・結論 ・情報保障体制は「学生のため」だけではなく、大学や教職員が安心して教育に臨むための基盤でもある。 ・維持することが組織の学習につながり、次の学生受け入れに直結する。利用学生がいない大学こそ、支援体制を持ち続ける意義を再考する必要がある。 ・支援部署が中心になりつつ、大学全体に浸透させる仕組みづくりが重要である。 ・特に中小規模大学の場合、担当者の変更での影響は少なくないと予想されるため、できるだけ単純かつ普遍的な方法を取ることを意識する。 ■問い合わせ先 和歌山大学キャンパスライフ・健康支援センター 小馬加奈子(コーディネーター) Tel/ 073-457-7155 Mail/ shien@ml.Wakayama-u.ac.jp (和歌山大学 キャンパスライフ・健康支援センターのロゴマーク)