テーマは「聴覚障害学生の障害差差別解消法の理解度によるセルフ・アドボカシースキルの様相と手話への認識程度 聴覚障害学生の手話習得教育プログラム開発に向けての予備的調査」である。 聴覚障害学生の高等教育機関への進学が年々増加しており、障害者差別解消法施行も踏まえた上でどのような支援方法が妥当なのか判断が不可欠であるため、聴覚障害学生の障害者差別解消法の理解の程度及びセルフ・アドボカシースキルの様相、手話への認識について把握した上で、聴覚障害学生の手話習得教育プログラムが必要な根拠となるものを探った。結果として、35名の聴覚障害学生から得られた質問紙調査より、聴覚障害学生を障害者差別解消法の法律内容も含めて知っている、理解有群と理解無群に分類し、分析をした。有意差がみられたセルフアドボカシースキルは「私はたびたび、情報保障などのニーズについて大学に提案する」という項目であった。理解有群では平均値が2.59であり、標準偏差は0.98であった。理解無群では、平均値が1.83、標準偏差が0.58であった。有意差があった「私は度々、情報保障などのニーズについて大学に提案する」項目において、障害者差別解消法の理解有群と理解無群にて、ろうアイデンティティ尺度の「私は、まわりの人と手話で話ができたら、もっと自分の言いたいことを伝えられると思う」項目にてそう思う・少しそう思う・どちらでもない・そう思わないと回答した学生ごとに分類した。結果として、周囲と手話で話ができることで、情報保障などのニーズ提案が大学に対してできる学生の割合が高いことが明らかになった。理解有群にて、情報保障などのニーズを提案できる学生5名全員が「私は、まわりの人と手話で話ができたら、もっと自分の言いたいことを伝えられると思う」について「そう思う」と回答していた。提案できない・しない学生12名のうち、情報保障などのニーズを提案できない・しない学生12名のうち、私は、まわりの人と手話で話ができたら、もっと自分の言いたいことを伝えられると思う」について「そう思う」学生が5名、「少しそう思う」学生が3名、「少しそう思う」「どちらでもない」学生がどちらも3名、「そう思わない」学生が1名であった。つまり、法的知識を有していると、ニーズを大学に提案することができることと、周囲と手話で話し合える、すなわち手話で議論し合えることが、聴覚障害学生のセルフ・アドボカシースキルにとって重要であることが窺えた。今後、本調査で作成したセルフ・ア ドボカースキルの質問項目の探索的因子分析を実施し、信頼性の検討を行う。また、手話習得や手話に関する意識との関連性に ついてさらに検討する。改正障害者差別解消法の内容もふまえて、今回の調査で得られた知見を、聴覚障害学生向けの手 話習得教育プログラム開発に活かし、聴覚障害学生のセルフ・アドボカシースキル向上に繋げる予定である。