■大阪教育大学 OSAKA KYOIKU UNIVERSITY 障がい学生修学支援ルーム E-mail: sienroom@bur.osaka-kyoiku.ac.jp TEL: 072-978-3479 ■支援活動に関わる人を増やすためにー学生の声から見えてきた壁と可能性ー ■学内アンケートについて 問題と目的 大阪教育大学障がい学生修学支援ルーム(以下、支援ルーム)では、季節行事や新歓を通じて支援ルームに関わる人が増えている。一方、大学における障がい学生に対する 支援活動(以下、支援活動)への参加については一定のハードルを感じる学生もいる。そこで、支援ルームとあまり関わりのない学生を対象にアンケートを行い、参加を促 す・妨げる要素が何か明らかにすることを目的とする。 本調査における仮説としては、支援活動に対する難しさ、不安という感情が活動意欲の妨げとなっていること、そしてより多くの人に支援活動を行ってもらうためには、広 報活動が必要とされることである。 方法 1)対象者大阪教育大学に通う学生97名。 2)調査項目支援ルームの認知度について、「名前だけ知っている」「活動内容を知っている」「サポート学生として活動している」「利用学生」「知らない」の項目で 調査した。また、支援活動の「難しさ」、「不安」、「活動意欲」をそれぞれ4件法で、「難しさや不安を感じる要因」、「支援活動にどういう意味を感じるか」、「興味の ある活動」を選択式により測定した。 3)手続きサポート学生5名が個別に依頼を行った。調査はGoogle Formsを用いてオンラインで実施した。 結果@ 学生における支援ルームの認知度について (支援ルームマスコットキャラクター ここわ のイラスト) 障がい学生修学支援ルームの認知度について(N=97) (円グラフはじめ) 名前だけ知っている(n=65) 67% 知らない(n=15) 16% 活動内容を知っている(n=11) 11% サポート学生として活動している(n=5) 5% 利用学生(n=1) 1% (円グラフおわり) 結果A 支援活動への意欲と難しさ・不安の関係について 障がい学生修学支援ルームを「知らない」または 「名前だけ知っている」と回答した80名のうち、活動への意欲に関する回答を「意欲がある」「少し意欲がある」「あまり意欲がない」「意欲がない」の4群に分類し、活動に対する不安要素(「知識がない」「経験がない」「自分にできるか自信がない」「活動内容のイメージがわかない」「活動日程・時間帯がわからない」)との関係について、複数回答形式によるクロス集計を実施した。その結果、意欲群1(「意欲がある」)においてのみ、「活動内容のイメージがわかない」「活動日程・時間帯がわからない」といった不安要素が認められた。このことは、活動への高い意欲を有しているにもかかわらず、具体的な活動像を描けないことが心理的障壁となっている可能性を示唆している。したがって、活動内容の可視化や日程の明示を含む広報の充実が、当該群の参加を促進すると考えられる。また、全体的に「知識がない」ことへの不安が広く見られたことから、研修の実施状況や勉強会の存在を積極的に周知する広報活動が有効であると考えられる。さらに、意欲群2~4においては「知識がない」>「経験がない」という傾向が認められた一方で、意欲群1においては「知識がない」「経験がない」が同数であり、両者が同程度に不安要素として認識されていることが明らかとなった。この結果は、意欲群1に対しては、知識の提供に加えて、実際の活動を体験できる機会の提供が有効であることを示唆している。体験会等の実施は、知識と経験の両面から不安を軽減し、参加意欲の維持・向上に寄与する可能性がある。 どのような点に難しさや不安を感じるか(複数回答可) (棒グラフはじめ) 知識がない 意欲がある(n=14) 11 少し意欲がある(n=41) 29 あまり意欲がない(n=21) 16 意欲はない(n=4) 3 経験がない 意欲がある(n=14) 11 少し意欲がある(n=41) 8 あまり意欲がない(n=21) 3 意欲はない(n=4) 1 自分にできるか自信がない 意欲がある(n=14) 7 少し意欲がある(n=41) 4 あまり意欲がない(n=21) 2 意欲はない(n=4) 0 活動のイメージがわかない 意欲がある(n=14) 3 少し意欲がある(n=41) 0 あまり意欲がない(n=21) 0 意欲はない(n=4) 0 活動日程、時間帯が分からない 意欲がある(n=14) 3 少し意欲がある(n=41) 0 あまり意欲がない(n=21) 0 意欲はない(n=4) 0 (棒グラフおわり) 結果B 支援活動にどのような意味を感じるかについて 最も多かった回答は、「障がいや支援に関する知識が得られる」、次に「自身のスキルアップ」であり、人数は全体の3分の2を超えている。ここから、支援活動を行うことで得られる知識やスキルに意味を感じている人が多いと読み取れる。また、「他専攻・他学年の学生との関わり」に意味を感じている学生も多く、支援ルームの活動によって他専攻や他学年との交流ができるということも押し出していきたい。 障がい学生に対する支援活動にどのような意味を感じますか?(複数回答可) 回答数(N=91) (表はじめ) 項目 障がいや支援に関する知識が得られる 回答数 68 項目 自身のスキルアップ 回答数 60 項目 社会への貢献 回答数 39 項目 他専攻・他学年の学生との関わり 回答数 26 項目 就職活動などにおける自己PR 回答数 22 項目 謝金が出る 回答数 14 項目 アクセシビリティリーダー資格1級の取得 回答数 1 項目 意味は感じない 回答数 1 項目 その他(人助けできる) 回答数 1 (表おわり) 結果C 支援ルームにおける興味のある活動について 手話や研修など自身のスキルアップや知識習得に関する活動に興味がある回答が多かった。勉強会にも知識習得の要素があるが、勉強会には自らの知識・経験を基盤とした双方的なコミュニケーションが求められ、そのことが回答の少なかった要因として考えられる。 この中に興味のある活動はありますか?(複数回答可) 回答数(N=80) (表はじめ) 項目 特別支援教育に関する学生同士の勉強会 回答数21 項目 視覚障がい支援の研修・支援活動(ノートテイク・パソコンテイク、動画の字幕挿入) 回答数 39 項目 障がい学生修学支援ルームで行われている季節の行事イベント(七夕、ハロウィン、クリスマスなど) 回答数 27 項目 手話講座 回答数 42 項目 これらの活動に興味はもたなかった 10 考察 本調査の仮説は、支援活動に対する難しさ、不安という感情が活動意欲の妨げとなっていること、そしてより多くの人に支援活動を行ってもらうためには、広報活動が必要とされることであった。結果Aより、知識や経験の不足による難しさ、不安が活動意欲の妨げとなっていると考えられる。また、結果Cより、興味のある活動には研修・支援活動や勉強会も挙げられているが、まだこれらの活動の認知がされていないことが課題として考えられる。結果B・Cより、研修・支援活動や手話講座を通して自身の知識を深めたり、スキルを高めたりすることへの意欲が高いことが推察される。そのため、学生が気軽にアクセスできるよう、初めて支援ルームに関わる学生に向けた環境づくりが求められる。今年度は新歓行事として、「学生プロジェクト支援の輪を広げたいわ!」において、4月に「手話入門」「白杖体験」「支援・障がいとは何 か」のテーマでそれぞれ勉強会を行い、5名の1年生の参加があった。ほかにも、「お試し体験会」や、活動に参加している学生の声を紹介すること等で心理的障壁を下げることができると考える。今後の展望として、これまで行ってきた「学生プロジェクト支援の輪を広げたいわ!」や「PCテイク研修」等の活動を広く広報していくとともに、だれもが参加しやすい環境を整えることが必要となる。そして、より多くの学生が関心を持ち、支援ルームや支援活動の認識を高めていくために、さらなる内容の発展を図っていきたい。 謝辞 本調査を行うにあたり、アンケートに参加して下さったみなさまにこの場をお借りしてお礼申し上げます。 ■技術の伝承について PCテイク研修 授業および卒業式等で合理的配慮として行っている「PCテイク」。現役学生テイカーが講師となり、共通の研修計画に沿って少人数で行われる全6回の必修研修を行っている。今年度は講師や支援ルームからのニーズをもとに、講師となる学生がスライド資料を大幅改訂した。今年度(前期)は聴覚障がい学生の在籍がなく、PCテイクのニーズはない。しかし研修は例年通り実施し、学部生から院生までの13人が受講した。 (4人の学生が研修を受けている様子の写真) ■雰囲気の伝承について 学生プロジェクト 支援の輪を広げたいわ! 毎月1回程度、学生同士の交流会と障がいや支援に関する勉強会を行っている。「しゃべりたいわ!」という交流会は、昼食 を持ち寄って楽しくおしゃべりができる場である。「まなびたいわ!」という勉強会では、各々が調べてきたことをまとめ て発表している。過去には「聴覚障がいについて〜手話入門〜」「災害時の支援」等のテーマで発表を行った。だれもが安 心して参加できる温かい居場所づくりを目指している。 (1人の学生が発表をし、7人の学生がきいている様子の写真) 以上