2021年9月20日公開
2024年5月20日更新
聴覚障害学生がオンライン授業に参加する際の困難として、主に以下のような事柄が挙げられています。
・見なければならない情報が多すぎて(スライド資料、先生の映像、他の学生の映像、教科書、質疑等のチャット、情報保障の画面など)、授業についていけなくなってしまう。 ・90分ずっと画面上の情報を追い続けるため、目の疲れがひどい。 ・パソコンを通してきこえてくる音声は、声がこもっていたり、ノイズが多いことがあり、対面授業の時よりも聞き取りづらくなってしまう。 ・ちょっとしたことを先生や周りの学生に聞いて確認したいと思っても、対面授業と違って周囲の様子がわからず、タイミングも取りづらいので質問するのが難しい。 |
このように、目で見てわかる情報を増やしていただく配慮は大きな助けになる一方で、限られた時間内にすべての情報を追う困難さも生じます。また、チャットやメールなどのコミュニケーションツールを効果的に使いこなすためには、使いやすい環境づくりや周囲の人との関係性づくりが欠かせません。
こうした困難をできるだけ解消し、参加しやすいオンライン授業をつくるポイントとして、次のようなことが挙げられます。
1.音声が聞きとりやすくなる工夫
授業時はヘッドセットやピンマイクなどを使いできるだけ明瞭に話すことで、補聴機器を活用している学生は授業内容が聞き取りやすくなります。また文字通訳を行ったり音声認識ツールを活用する場合も、明瞭な音声が届くことで支援の質が大きく向上します。
参考:よりわかりやすいオンデマンド授業の収録・オンライン授業の工夫(音声編)
2.視覚的な情報が見やすくなる工夫
視線の移動ができるだけ少なく情報が得られるよう資料提示の方法を工夫したり、今どこを見ればよいか、どこの説明をしているのか明示しながら授業を進めることが、授業理解の助けになります。
参考:Zoomのバーチャル背景にプレゼンテーションを提示
3.障害学生支援担当部署と教員との連携
聴覚障害学生への支援のノウハウに関する情報は、多くの場合、障害学生支援室など学内の支援担当部署に集約されています。音声取得のためのマイクを各教員に貸し出したり、授業映像への字幕挿入を協力して行うなど、支援担当部署が中心となって授業担当教職員へのサポートを展開している例もあります。このように、支援担当部署に相談し、連携しながら対応することで、それぞれの聴覚障害学生のニーズにあった支援を提供することができます。
聴覚障害学生は、授業時に困ったことがあったり、わかりにくいと感じることがあっても、その状況を的確に表現して支援を求めることがなかなか難しい場合も少なくありません。誰に相談すればよいかわからず抱えてしまうこともしばしばあります。オンライン授業で、物理的に離れた場所にいる場合は、なおさら助けを求めにくくなりますので、教職員のほうからこまめに声をかけ、困りごとがないかを意識的に引き出したり、何かの配慮を実施した後には学生に様子を尋ねてフィードバックを得たりするなど、丁寧なコミュニケーションを取ることが重要です。
執筆:筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 中島亜紀子