周知したい内容
授業を担当する教員への配慮依頼の内容としては、「パソコンノートテイカーを配置していること」「補聴援助システムを利用するため専用のマイクを使ってほしいこと」「連絡事項などは板書してほしい」など提供する合理的配慮の内容が中心になりますが、聴覚障害学生が受講しやすい授業進行となるために必要な具体的な配慮はさまざまです。ディスカッションや発表が行われる場合にはどのように参加するか、周囲の学生にどのような配慮を周知するかと言ったことも、授業形態に合わせて教員に理解を得ておくことが大切です。なおノートテイクや手話通訳などの情報保障支援を行う場合には、支援者に対する事前資料の提供が情報保障の質向上につながるため、資料の事前提供や、投影用の資料を支援者用に配布するといった事柄も予め依頼しておくことが有効です。
また、授業開始時には想定していなかった困難が出てきたり、当初に依頼した内容に変更が生じる場合もあります。授業途中でも配慮の依頼や相談がしやすい体制づくりが大切です。
周知の方法
配慮依頼文書は、各大学の合理的配慮の決定プロセスに則り、各部局や支援組織から定型的な文面で出される体制の大学もあります。一方で、必要な配慮は授業ごとに異なる場合もあり、教員に直接配慮内容を伝えることは聴覚障害学生が支援にコミットし支援利用者として成長する機会であると捉える観点から、各授業に応じた依頼文書を学生本人と相談しながら作成したり、個々の教員に対して学生が直接渡したり、説明する機会を設けたりしている例もあります。初めて受講する先生にのみこうした個別の依頼を行ったり、初回の授業時、あるいは授業開始前に支援担当教職員も同行して、学生と一緒に依頼内容を説明するなど、状況に応じた柔軟な対応を取っている事例もあります。
授業担当教員に配慮の依頼をすることは、単に支援上の手続きではなく、教員が聴覚障害学生が必要とする配慮について理解し、学生の授業参加を保障するためのコミュニケーションの一つと言えます。