2025年1月8日公開
1.はじめに
補聴援助機器として多く利用されているロジャータッチスクリーンマイク(以下、タッチスクリーンマイク)を、大学で所有し必要な学生に貸し出している大学もあると思います。
中には、以下のような場面でタッチクリーンマイクを組み合わせて同時に利用したいというニーズがあるようです。
- グループワークのある授業で、先生の説明と近い席の学生とのディスカッションのどちらも明瞭に音声を聞きたいが、1台のマイクを回していると時間がかかるし、受け渡しを忘れてしまう心配がある。できれば先生と学生、それぞれ別のマイクを使って欲しい。
- ゼミの際に、先生の説明と他のメンバーの発表や意見、どちらも明瞭に聞きたいが、1台のマイクではすべての音声が拾えない。発表中は1台だけで集音し、コメントの時間だけ複数台を利用したい。
このような場面でタッチスクリーンマイクを有効に活用できる方法を2つ紹介します。1つ目はマイクモードの設定を変更する方法、2つ目はSubNetという機能を使用する方法です。
2.接続・利用の流れ
今回の説明では、いずれも以下の機材を使用します。
- ロジャー タッチスクリーンマイク 2台
- ロジャー パスアラウンドマイク 1本(タッチスクリーンマイク専用の子機です。単体では利用できません。)
- ロジャー ネックループ(受信機。補聴器・人工内耳のTモード・テレコイル機能を利用する場合にはネックループを利用します。補聴器に受信機機能が付いている場合にはネックループは利用しませんが、タッチスクリーンマイクと補聴器の受信機機能との接続操作は必要です。)
接続の流れ
- 親マイク1台を決めます。
- 親マイクの「機器の接続ボタン」を操作して、もう1台のタッチスクリーンマイク(子マイク)、パスアラウンドマイク、ネックループ(受信機)を接続します。接続する際は、親マイクと10cm以内に近づけて操作をします。
- 接続の順番は問いませんが、「親マイク1台を操作して」接続する流れは変えないで下さい。(途中で子マイクにしたタッチスクリーンマイクから受信機を接続することがないように注意して下さい)
これで4台の機種が同じマイク接続ネットワークに入りました。
ここではマイクAを親マイク、マイクBを子マイクとして説明します。

3.マイクモードを設定して活用する方法
タッチスクリーンマイクの「マイクモード」は、基本設定では「自動モード」になっています。利用する場面に応じて、最適なモードに自動的に切り替わり集音します。
これを親マイクの設定を「首掛けモード」に変更することで、接続しているマイクが全て「首掛けモード」で利用できるようになります。

マイクモードの切替方法
①液晶画面をスワイプし、「マイクモード」の設定画面を開きます。
②基本設定は「自動モード」なので、「首掛けモード」を選択します。
③左上のホームボタンを押して設定を完了します。

「首掛けモード」では、マイクの指向性が上方向のみで固定されるため、マイクを平置きにした場合でも「小グループモード」に切り替わることなく利用が可能です。
自動モードで「小グループモード」に切り替わった場合、平置きされたマイク以外からは集音状態に切り替える操作ができないため、手元のマイクを使いたい場合に不便です。


また、「首掛けモード」であれば「マイクミュート」がそれぞれのマイクで設定できますので、全体説明の間は先生以外のマイクをミュートに、グループワークの際には先生のマイクをミュートにすることで、聞きたい声だけを拾うことができます。

利用時の注意点
- マイクモードの切替設定は保存されません。使用するごとに忘れずに設定をしましょう。
- マイクミュートのまま話を始めてしまうと、ロジャーに音が入りません。聴覚障害学生には音が届いていませんので、話し始めたことにも気がつくことができません。周囲の学生さんにも、先生のマイクがミュートになっている場合には声を掛けてもらえると良いですね。
4.SubNet機能を活用する方法
タッチスクリーンマイクの「SubNet」機能を活用することで、複数のマイクを1つのネットワークに接続しながら、一時的に「特定のタッチスクリーンマイクだけ」をそのネットワークから外して集音をしない、という方法での利用ができます。
具体的には、「グループワークの時間は親マイク1台をSubNetに移動させ、全体説明に戻る時には親マイクをネットワークに戻す」という方法を使うことで、大学の授業で想定される以下の操作をスムーズに行うことが可能になります。
- 2台のタッチスクリーンマイクを同時に接続した状態で授業を開始する。
- グループワークが始まった時に、1台のマイクをSubNetにして、もう1台のマイク(グループワーク側)だけを集音できる状況にする。
- グループワークから全体説明に戻る時には、再度両方のマイクから、または1台のマイクから音が入るようにする。
このための操作の流れを次から説明します。
①授業中の利用方法
利用時のポイント
親マイクにしたタッチスクリーンマイクは先生が首に掛けて使います。
- 子マイクにしたタッチスクリーンマイク・パスアラウンドマイク・受信機は、聴覚障害学生の近くに置いて使います。
- 子マイクにしたタッチスクリーンマイクは、電源を入れたまま「液晶画面を下向きにした状態で」机の上に置いてご利用ください。
【補足】タッチスクリーンマイクの集音範囲の切り替わりについて
タッチスクリーンマイクを複数台利用している場合、どれか1台を平置きにすると、「平置きにしたタッチスクリーンマイク」だけが機能して集音し、受信機に音声を届けます。
他のマイクは「接続待機状態」となり、音を拾うことができなくなります。
たとえば、先生がタッチスクリーンマイクを首から下げている時に、もう1台のマイクを平置きにしてしまうと、「平置きにしたタッチスクリーンマイク」のみからの集音に切り替わってしまいます。

右の画像はタッチスクリーンマイク2台を接続し、2台とも液晶画面を上向きに平置きに置いています。
左のマイクA(親マイク)は360度集音の小グループモードに、右のマイクB(子マイク)は首掛けモード(指向性方向が上方向)に切り替わっていることがアイコンの違いで分かります。
さらに、右のマイクB(子マイク)はミュートボタン部分が青色に光り、「接続待ち」(集音不可)の状態を示しています。

一方、2台のマイクから同時に集音する必要がない場合があると思います。
この場合、「音声を取得する必要がない間は、マイクB(子マイク)は電源を入れたまま液晶画面を下向きにして平置きする」ことがポイントです。
前述した通り、液晶画面を上向きにタッチスクリーンマイクを置くと「小グループモード」に切り替わり、他のマイクからの集音ができない状態になってしまいます。この時、アイコンは「接続待ち」を示す青色ランプが光っています。
液晶画面を下向きにして置いている間は、電源ボタンは緑色で点滅を続け、集音可能状態を示しています。


②子マイクから集音する場合
子マイク側を使って集音をする場合、「親マイクのタッチスクリーンマイクをSubNetに切り替えて」一時的にマイク接続ネットワークの外にして使います。
そうすると、「親マイク以外の接続は維持された状態で」利用することができます。
操作方法
・親マイク(マイクA)のトップ画面を開きます。
・「ネットワーク」アイコン隣にある「SubNet」のボタンをタップします。
これで親マイク(マイクA)の「SubNet」アイコンの周りが緑色になっていると思います。
「SubNet」に切り替えた親マイク(マイクA)の音は、受信機に届かなくなります。

右:SubNet切替中
接続状態のイメージ図です。
マイク接続ネットワークから、「親マイク」だけが一度抜けました。
約3秒間切替のために無音状態となりますが、同じネットワークにいる子マイク(マイクBおよびパスアラウンドマイク)と受信機は接続状態が維持されます。

③SubNetに移動したマイクを元のネットワークに戻す
親マイクからの集音を再開したい場合には、「親マイクのタッチスクリーンマイクをSubNetからネットワークに切り替えて」接続ネットワークに戻します。
SubNetに移動させる前と同様に、接続状態が維持されます。「音声を取得しない子マイクは、電源を入れたまま液晶画面を下向きに置く」ことを忘れないようにしましょう。

【参考1】どのマイクをSubNetに移動させるのか
ここまでの説明で、「グループワークで使用するマイクをSubNetに移動させる方が操作が簡単なのでは?」と思う方もいると思います。
ですが、SubNetに移動させて使う場合には以下のタイミングでタッチスクリーンマイクと受信機の「機器の接続(ペアリング)」の操作をしなければなりません。
1:全てのマイクネットワークを接続する時
2:「SubNetに切り替えた時」の子マイクと受信機の間
3:「ネットワークに戻った時」の親マイクと受信機の間
これでは授業中に切り替えて使いたい場合に、何度もマイク操作をしなければならない煩雑さが生じます。
そのため、「音を拾いたくないマイクだけをネットワークから一時的に出す」使い方のほうが操作は簡便です。
先生に操作をしていただく手間が生じることや、正しくSubNetとの切替ができるかを確認しながら使う必要がありますが、理解を得て使用できると良いでしょう。操作方法の説明資料などを準備しておけると良いですね。
タッチスクリーンマイクに関するFAQ
タッチスクリーンマイクの操作に関して、事務局には以下のようなご相談を頂くことがあります。
- 1台のタッチスクリーンマイクを使っているが、途中で音が届かなくなる
- 接続したはずなのに、使おうと思った時に音が届かない
- 繋がる時と繋がらない時がある
首から下げる時や接続をする時に、ホーム画面のアイコンに触れてしまい「SubNetのアイコンが押されている」場合があるようです。スクリーンセーバーの作動時間を短くするなど、うっかり画面に触れない工夫をすると良いでしょう。
また、一度接続した端末同士は、切断操作をするまでは接続状態が維持されますので、次の授業で使用する際にも電源を入れれば同じネットワークで利用ができます。
受信機を別の機種のマイクと接続する場合には、マイクと受信機の間のネットワークの切断をしてから、別の機種のマイクと接続をしてください。
また、うまく繋がらない場合には、一度タッチスクリーンマイクの操作で全ての接続をリセットして(電源ボタンとミュートボタンを同時に8秒以上長押し)、再度接続をしてみると良いでしょう。
【参考2】本来的なSubNetの利用方法について
ロジャータッチスクリーンマイク(製造販売:ソノヴァ・ジャパン株式会社)の説明書では、SubNetの活用場面として、教室の中で、補聴援助を利用している生徒が複数人いる時に使える方法が紹介されています。
(引用)SubNet(サブネット) ネットワークに参加している本製品(子機)と、特定の受信機との間に一時的なネットワークを組む機能です。接続するグループの他の生徒に聞かれることなく、1人または複数の生徒とそれぞれ通話することが可能です。
このような使い方をする際の操作の流れを説明します。
・親マイクの1台から全ての端末(生徒の受信機、2台目のタッチスクリーンマイク)を接続し、「同じネットワーク」を構築します。
・「一時的に別のネットワークを構築して」1台のタッチスクリーンマイクからの音声を1人の生徒の受信機だけに届けられるようにします(授業中の補足など)。
・一時的なネットワークを終了して元のネットワークに戻すには、親マイクと受信機を再度接続します。
【参考】フォナック補聴器「接続も簡単!ロジャー タッチスクリーン マイクを2つ使う」
https://youtu.be/Bx4rFVnmDDk?si=KqMkV5dFh6FJbqDn
