■教育実習先の選定についてのよくあるご相談
教職課程を履修している聴覚障害学生やその支援に関わる教職員の方から、「小中高等学校の普通免許状(いわゆる基礎免許)のための教育実習を、聴覚特別支援学校(ろう学校)で行ないたいという希望があるが可能でしょうか」という相談を受けることがあります。
大学によって、近隣地域の学校や附属学校から選択する慣行がある場合は、実習先との事前相談や実習中の合理的配慮を十分に行なった上で実施する方向もありますが、教育職員免許法の規程上は、特別支援学校を選択することが可能です。また、出身校で実習を行なうよう推奨されている場合、地域の学校で育ってきた聴覚障害学生はろう学校で実習ができないのかと悩まれるケースも聞かれますが、この場合も出身校にかかわらず、規程上、ろう学校(聴覚特別支援学校)で実習を行なうことが可能です。
■小中高等学校の普通免許状(いわゆる基礎免許)の教育実習先として特別支援学校が含まれていることの根拠資料
「教育職員免許法施行規則」(文部科学省のウェブサイトへ)
https://elaws.egov.go.jp/document?lawid=329M50000080026_20221001_504M60000080034
■解説
条文の文章だけでは読み解きづらいところがあるので、中学校教諭の普通免許状の例で補足説明をします。第四条 備考七の内容は、
「教育実習は、中学校、小学校及び高等学校(中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部及び海外に在留する邦人の子女のための在外教育施設で、文部科学大臣が高等学校の課程と同等の課程を有するものとして認定したものを含む。次条第一項の表備考第三号において同じ。)の教育を中心とするものとする。」
となっています。中学校の免許を取るための教育実習先には「中学校」「小学校」「高等学校」が含まれると書いてあります。
このうち「高等学校」の中には特別支援学校の高等部が含まれる、と( )内に明記されています。
では「中学校」についてはどうかというと、第三条 備考五(小学校免許状について書かれている条文)のところに
「中学校(・・・特別支援学校の中学部・・・を含む)」とすでに書かれていて、「表備考第七号・・・において同じ」とあるので、中学校の教員免許状の場合も、特別支援学校の中学部が含まれることがわかります。
これと同じように、「小学校」については第二条 備考六に
「小学校(・・・特別支援学校の小学部・・・を含む)」とあって「・・・表備考第七号において同じ。」とあるため、中学校の教員免許状の場合も、特別支援学校の小学部が含まれることがわかります。
つまり、中学校の普通免許状の教育実習先には、特別支援学校の小学部、中学部、高等部が含まれているということになります。
このように、教員免許状に関わる法律の中では、基礎免許を取得する場合の実習先として特別支援学校を含むことが明記されています。
大学として、実習先の選定基準を定めている場合でも、聴覚障害学生が希望する場合や、当該学生の実習先として適切と判断される場合には、合理的配慮として実習先決定の慣行を柔軟に変更・調整し、聴覚特別支援学校を選択肢の一つとして検討することが求められます。
■参考:該当する条文
各条に表での説明がついており、その表内にある「備考」の記載が、根拠となる条文になります。
条文全体は、上記のリンクからご確認ください。
以下に、該当する条文と、各条文の表内にある「備考」の文章のみを抜粋して掲載します。
(特に関連する部分を太字で示しています)
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■幼稚園教諭の普通免許状
第二条 免許法別表第一に規定する幼稚園教諭の普通免許状の授与を受ける場合の教科及び教職に関する科目の単位の修得方法は、次の表の定めるところによる。(表省略)
備考六
教育実習は、幼稚園(特別支援学校の幼稚部を含む。次条第一項の表備考第五号において同じ。)、小学校(義務教育学校の前期課程、特別支援学校の小学部及び海外に在留する邦人の子女のための在外教育施設で、文部科学大臣が小学校の課程と同等の課程を有するものとして認定したものを含む。次条第一項の表備考第五号及び第四条第一項の表備考第七号において同じ。)及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園(以下「幼保連携型認定こども園」という。)の教育を中心とするものとする。
■小学校教諭の普通免許状
第三条 免許法別表第一に規定する小学校教諭の普通免許状の授与を受ける場合の教科及び教職に関する科目の単位の修得方法は、次の表の定めるところによる。(表省略)
備考五
教育実習は、小学校、幼稚園、中学校(義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程、特別支援学校の中学部及び海外に在留する邦人の子女のための在外教育施設で、文部科学大臣が中学校の課程と同等の課程を有するものとして認定したものを含む。次条第一項の表備考第七号及び第五条第一項の表備考第三号において同じ。)及び幼保連携型認定こども園の教育を中心とするものとする。
■中学校教諭の普通免許状
第四条
免許法別表第一に規定する中学校教諭の普通免許状の授与を受ける場合の教科及び教職に関する科目の単位の修得方法は、次の表の定めるところによる。(表省略)
備考七
教育実習は、中学校、小学校及び高等学校(中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部及び海外に在留する邦人の子女のための在外教育施設で、文部科学大臣が高等学校の課程と同等の課程を有するものとして認定したものを含む。次条第一項の表備考第三号において同じ。)の教育を中心とするものとする。
■高等学校教諭の普通免許状
第五条
免許法別表第一に規定する高等学校教諭の普通免許状の授与を受ける場合の教科及び教職に関する科目の単位の修得方法は、次の表の定めるところによる。
備考三
教育実習は、高等学校及び中学校の教育を中心とするものとする。