ニーズを伝えよう!「パソコンノートテイク」 実践例

本報告は、2013年にPEPNet-Japanが実施した「聴覚障害学生のエンパワメントモデル研修会」を元に作成しています。参考事例としてご覧ください。

◎役割及び人数

人数背景
司会・講師1名聴覚障害学生支援について精通し、パソコンノートテイクの知識と経験がある者が担当した。
支援学生2名協力大学で日常的にパソコンノートテイクによる支援を行っている学生2名に依頼した。
受講生8名程度3・4名で構成されたグループ、計2グループが同時に受講した。

自分のニーズを知ろう!

はじめに、自分のニーズを知るため、特徴の異なるパソコンノートテイク映像をそれぞれ2分30秒ずつ視聴した。一般教養科目の哲学の講義を入力している映像で、同じ内容を聞いて、それぞれ別々のペアが入力した様子が収められている。1本目は、先生の話を可能な限り要約せず、原文に近い状態で表示しているもの、2本目は、言い淀みなどをある程度整文した状態で表示した内容となっていた。

これらを視聴した学生たちは、各グループに分かれ、それぞれの映像の特徴や映像を見て気付いたこと、見ての感想などを述べあった。

ニーズを伝えよう!

次に、模擬講義として、映像と同じ題材をその場で支援学生2名に打ってもらった。受講生はこの様子を観察し、これをもとに、グループで気付いた点やニーズについて話し合った。話し合う際には、「お互いの意見を否定しない」というルールをあらかじめ説明し、それぞれのニーズが異なるということにも気付いてもらう機会とした。

そして、このニーズを支援学生に伝えた。ニーズとしては、どのくらいのペースで改行を入れるかや、突発的な音情報の挿入(講義中に鳴った携帯電話の着信音など)、板書と先生の発言内容の書き分けなどがあった。

支援学生は、このニーズを受けてもう一度同じ題材で入力し、受講生はどのように変わったかを確認した。

支援学生とのやりとり

まとめ

講師は、自分にとって最も良い情報保障環境は、自らの手で作ることが大切だと話し、そのために自分が持つニーズは遠慮なく伝えて構わないということをまとめとして述べた。

支援学生は、「自分たちで改善した方が良いと予想していたところと、聴覚障害学生からニーズとして出されたところが違っていることもあり、ニーズを伝えてもらって良かったと感じた」と感想を述べた。聴覚障害学生からは「支援学生と聴覚障害学生で考えが違うこともあることに気付くことができて良いきっかけになった。さらに、支援学生に一言『ありがとう』と伝えてから改善してほしい点を伝えるなど、コミュニケーションの面でも参考になった」「今のままの頼み方でいいのかなと深く考えさせられた企画だった」等の声が聞かれた。今回の研修が、自らの情報保障に対する向き合い方を見直し、より主体的に関わるきっかけを提供でき、さらに支援学生とのより良好な関係を築くための学びにもつながったと考えられる。

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