緊張の時!「模擬面接」
大学卒業後、社会に出るにあたって、避けて通れないのが就職活動での面接試験です。聞こえる学生の場合、就職指導室の先生からさまざまなアドバイスを得たり、先輩の話やさまざまな情報から、面接等の場面でどのように振る舞えば良いかの情報を得ることができます。しかし、聴覚障害学生の場合、障害に関連した質問や自分にはできないことに関して問われたときに、どのように振る舞えばよいのかわからず、適切なアドバイスも受けづらいのが現状です。
また、面接時のコミュニケーションそのものにもハンディがあるため、そもそも面接をどのように行えば良いかわからなかったり、情報保障を介した受け答えの練習ができる場がないなど、その壁は大きいものです。学生の中には、こうした問題から、自分の将来に対していたずらに不安を抱えたまま就職活動本番を迎えてしまう様子も見受けられます。
そこで本研修では、就職活動の入り口となる面接試験を模擬的に体験することにより、自らの将来に対して自覚的になるとともに、今後クリアしていくべき課題に気付くことで、卒業後を見据えた有意義な学生生活が送れるようにすることを目的にしています。
◎ねらい
- 学生生活のゴールでもある就職を早めに意識し、その対策を考えるきっかけとする。
- 早めに「失敗」を経験することで、実際にそうした場面に直面したときに、どのように対処すれば良いのか考える。
- 他者の模擬面接場面を見ることで、良い部分は真似、悪い部分は反省材料とする。
◎ 時間
75分
◎ 役割及び人数
役割 | 人数 | 留意点 |
---|---|---|
司会 | 1名 | タイムキーパーを兼ねる。 |
面接官 | 3名 | 就職活動における面接に精通している人が良い。 |
アドバイザー | 1名 | 就職活動における面接に精通している人が良い。グループ全員の面接を受けて、面接試験で持つべき視点や今後の課題を整理する。 |
受講者 | 10名 | 5名×2グループに分かれる。 |
◎方法
詳細は指導計画を参照
- あらかじめ事前課題としてエントリーシートへの記入を求め、期日までに提出してもらう。面接官役の方には、この内容を見て質問内容を考えてきてもらう。
- 当日、参加者が集まったら、講師は、スライドを用いてこれから何を行うのかを伝える。
- 参加者全体を2グループに分け、まず片方のグループが面接官の前に着席する。もう一つのグループは、面接の様子を観察し、留意点を考える。
- 面接は1人5分程度とし、端に座った学生から順番に面接を行っていく。面接官は、始めに想定していた質問を尋ね、時間にあわせて追加質問を行う。
- グループの最後まで面接を終えたら、面接官ならびにアドバイサーから助言を行い、グループを入れ替えて同様の活動を行う。
◎留意事項
- 面接場面では、本番さながらの真剣さを醸しだし、緊張感のある中で模擬体験ができるよう工夫する。
- 面接官役には、就職指導担当の先生など、現場の様子をよく知っている方にお願いをしたい。
- 面接官からの質問にうまく応えることをねらいとするのではなく、うまく応えられなかった経験を今後の学生生活や本番の就職活動に生かすことを目指す。
- 場合によっては、企業の人事担当者など、企業側の方に来ていただいて、求められる人材や面接でのポイントについて話をしてもらうなどの取り組みも可能。
- 学生の多くが、ここで「失敗」の体験をすると思われるため、最終的なアドバイスでは失敗を元に落ち込むのではなく、これを本番につなげるよう励まして終了する。
指導計画
実際の研修会で利用できる指導計画案を掲載しています。ご自身の大学の状況に合わせて、適宜アレンジしてご利用下さい。
教室配置
留意事項
教室の前に面接官が3名座り、これと向かい合う形で模擬面接に参加する学生が着席する。
残りの学生は、横からこの様子を見て、全体を把握する。
情報保障
- 実際の面接には情報保障がつかないことも多いが、今回はコミュニケーション上の困難性を取り除いた状態で、面接におけるやりとりの内容を重視するため、手話通訳およびパソコンノートテイクの両方の情報保障を配置する。
<手話通訳>
- 面接官の後ろに立ち、模擬面接に参加している学生と待機している学生の両方に向けて手話通訳を行う。手話から日本語への読み取り通訳を行うかどうかについては、基本的に各学生の希望に沿う形とするが、学生の発音が不明瞭でパソコンノートテイカーが入力困難な場合には読み取り通訳を介する形とする。
<パソコンノートテイク>
- 面接官と学生双方のやりとりを文字化し、モニターに映し出す。
- 面接官や観察している学生にもやりとりの内容を確実に伝えるため、パソコンノートテイク用モニターは2箇所に設置し、すべての位置から内容を見られるよう配置を調整する。
進行・展開
<事前準備>
- 学生:あらかじめ事前課題としてエントリーシートへの記入を求め、期日までに提出してもらう。
- 面接官:事前課題を読み各学生への質問を考える。ただし、エントリーシートに書いてある内容を当日改めて聞くのではなく、記述してある内容をもとにより詳細な内容を聞くこととする。例)「あなたは○○○と書いていますが、具体的には?」
- どの面接官が、どの学生に対して主に質問を行うか、分担を決定する。
<活動内容>
趣旨説明(5分)
○模擬面接 1グループ(25分/5分×5人)
はじめのグループが模擬面接を行う。最初に面接を受けるグループの学生が面接官の正面に着席し、面接官は各学生に対してあらかじめ想定していた質問を尋ねる。
回答の内容に合わせてさらに詳細な質問を行い、時間が余った場合には、他の面接官からも質問を行う。
残りの学生は、待機席で他の学生が面接している様子を観察し、どのような点に注意すべきか考える。
司会者や面接官は、本番同様の緊張感を学生に与えるよう工夫する。
○面接官・アドバイザーからのアドバイス(10分)
面接を通して気付いたこと、改善点を具体的にアドバイスする。可能なら、学生ひとりひとりにコメントができると良い。
○模擬面接 2グループ(25分/5分×5人)
グループを入れ替え、同様に模擬面接を行う。
○面接官・アドバイザーからのアドバイス(10分)
2グループ目の学生に対しても、面接官・アドバイザーがそれぞれ気づいた点についてコメントする。
○まとめ(5分)
留意事項
学生にとっては、エントリーシートに記入することもエンパワメントの一環である。
企画全体の時間に余裕がある場合は、1人あたりの面接時間を5分以上にすると、より突っ込んだやりとりが可能になる。
アドバイスが時間内に収まらない場合は、休憩時間等を使ってアドバイスする。
指導教材資料
事前課題(エントリーシート)
指導教材
実際の研修会などで使用可能な教材を掲載しています。ダウンロードの上ご使用ください。
事前課題
※本教材の著作権はPEPNet-Japanに帰属しています。研修会等で編集の上ご利用いただくことは可能ですが、クレジット表記などは変更しないようお願いします。
※教材を使用される場合には、必ずこちらの「教材の使用方法」をお読みの上、注意に従ってご利用ください。