NTIDの場所

NTIDの場所

ニューヨーク:600km
ナイアガラ:100km
ニューヨークよりもカナダに近い大学の大部分が草原や森の自然!
1967年開設
それ以前はロチェスター市内にキャンパスがあった。

RITとNTID

  • NTID:National Technical Institute for the Deaf(国立ろう工科大学)
  • RIT:Rochester Institute of Technology(ロチェスター工科大学)
アメリカ視察の様子

NTIDはRITにある8つの学部の一つで、手話通訳者養成コースをのぞくすべての学部で聴覚障害学生のみを対象とした教育を行っている。ロチェスター工科大学の学生数は全学部あわせて15000人。このうち聴覚障害学生は1011人で、約半数がNTIDに在籍、残りの半数がRITにて聴学生とともに教育を受けている。これらの学生のサポートは主にNTIDが担当。ただし、あくまでもRITに所属している学生なので、教育責任はRITにある。

現在の在籍状況は以下の通り
(1)NTID:542人
聴覚障害学生のみを対象とした準学士プログラム。ここでは、教員は学生と直接的なコミュニケーションをとる能力が求められる(手話の利用など)。就職を意識した通常の準学士プログラム(Associate Degree取得)と、RITに編入するための基礎学力を養う編入プログラム(Transfer Degree取得)の二つに分かれている。

(2)学士前コース(PreBacalaureateStudies):15人
3ヶ月程度の短いプログラムで、RITの学士コースに入る前の準備を行う。

(3)rit:454人
学士・修士プログラム。NTIDによる手話通訳等の支援を受けながら、聞こえる学生と同じ環境で学習している。

NTID=直接的教育モデル
RIT=サポートサービスモデル
今回は、RITに在籍している学生を中心に視察。ここでは、アクセスサービスとアカデミックサポート(就学支援)を提供している。

入学・卒業の過程

RITに入学してくる聴覚障害学生には、以下の様々なルートが用意されている。

入学・卒業の過程の図

(1)NTIDの準学士コース(Associate Degree)
技術系の様々なプログラムが用意されている。卒業後は企業に就職する学生が多い。
(2)NTIDの編入コース(Transfer Degree)→RITへの編入
NTIDの準学士プログラムだが、RIT内の他学部に編入するのに必要な準備をする用に作られており、3年程度の学習の後、RITへ編入する。
※(1)は、就職を意識した学部。(2)は、他学部への編入目的。
(3)学士前コース(PreBacalaureateStudies)→RITへの入学
3ヶ月程度の準備コースにおいて基礎学力を強化した後、RITに入学する。
(4)RITへの直接入学
はじめからRITに入学し、聴学生とともに教育を受ける。

現在はろう学生の半数がNTIDに在籍、残りがRITに在籍しているが、RITにいる学生のうち半分はまずTransfer Degreeを取得してRITに入っている。また、準学士コースにいる学生は、通常卒業して社会に出るが、中には在籍中に力をつけてRITに編入する学生もいる。また、力はあるが直接インテグレーションするには至らない学生の場合、Transfer Degreeを取得後(2~3年)、RITに編入(3年)する。この他に、直接RITに入学する学生もいる。学士前コースに来る学生は、3・6ヶ月の学習を経てRIT学士コースに入る。
いずれにしても、NTIDはより多くの聴覚障害学生に高いレベルの教育を提供するため、様々な形でRITに入学するための「はしご」をかけてあげている。より高い可能性を追求するためのシステム!そのため、NTIDは単独で存在するのではなく、RITプログラムに組み込まれていて、ろう学生が自分の能力を最大限に生かせるようになっている。

RITにおける教育

RITにおける教育の特徴的な面として、Co-opプログラム(学習と就職準備を交互に行うプログラム)を持っていることがあげられる。

Co-opプログラム

  • はじめの2年間:基礎学習
  • 残りの3年間:4学期(秋・冬・春・夏)を、学習→実習→学習→実習と交互に繰り返す。就職を意識することでより有意義な学習を促すため。

このシステムを持っていることが、ロチェスター工科大学がNTIDのホスト校に選ばれた大きな理由(ろう学生の社会参加を促すことができるため)。こういうシステムがあるので、rITは通常の4年ではなく、5年制のプログラムになっている。(Transfer Degreeを持っている学生の場合は、3年次以降の実習を組み合わせたプログラムの部分に入る)

支援サービス

ritで学習する聴覚障害学生のためには、以下のようなサポートサービスが提供されている

アクセスサービス

  • 手話通訳
  • ノートテイク
  • 技術を使った支援
  • カウンセリング

技術による支援

  • 補聴サービス(補聴器、補聴援助システム、人工内耳)
  • 文字による支援(C-print[、リアルタイム字幕)
  • 字幕付き教材(授業でビデオを使用する際に字幕挿入の支援)

カウンセリング

  • 個人カウンセリング(個人の生活に関する相談)
  • 学業カウンセリング(就学上の相談)

アカデミックサポート(就学支援)

  • サポート教員による授業
  • チュータリング(学生への個人指導、グループ指導)
  • 学生への学業相談
  • メンタリング
  • 学部内の他教員への指導

質問

Q:RITにはいるか、NTIDにはいるかはどうやって決めるのか?

A:RITの適性試験(高校での試験とアメリカで実施している学力テストの結果(act,setなど))があり、他学生と同程度の力があると判定された場合にRITに入ることができる。
力があってもNTIDに行きたいと言う学生には、カウンセリングを行ってどっちがいいか決めてもらう。その他、専攻を決めたり、進路を決めたりする際にもカウンセリングを提供。

Q:Co-opの実習の内容は?

A:インターンのように給与をもらって働く。ただし、一部の職場では、無給で働くことも。

Q:こういうシステムを可能にするための法律や資源ができあがってきた経緯は?

A:NTID&RITの教育は教育省の支援の元に行われているが、他大学での支援は大学独自の支援を実施しなければいけない。

<NTIDができた経緯>
1960年以前:ろう児の教育に関する調査
この中に、NTIDのような職業教育を行う教育機関の必要性が盛り込まれていた。その教育機関は、既存の大学と統合する形で聞こえる学生と一緒に学習する環境を持っていなければならないと考えられた。(仕事をする上で聴者との関わりが必要になるため)
これを実現するための大学として、ロチェスター工科大学が選ばれた。(ロチェスター工科大学は1829年設立で、工学系の大学で地元の企業と密接に関わっており、Co-opプログラムを持っていることがこの理由)
NTIDはここで教育活動を行うのみでなく、他の大学における聴覚障害教育について指導する役割も担っている。PEN-Internationalができたのもそのため。

Q:ろうの先生の数は?

A:教職員が500人(教員は200人)、このうち1/4がろう者

  • サポート教員の数は40・50人
  • 手話通訳者は110人
  • ノートテイカーは400・450人
  • 文字通訳キャプショニストは50・55人
  • 学生の中には残存聴力を活用する学生も。

Q:ろうの教員に対する支援は?

A:ろうの教員に個々の通訳者をつけることはしていない。ただし、必要に応じて常に通訳支援を提供。
例)会議に出る場合には、その会議の主催側がきちんと通訳を用意するように連絡。もし、難しい場合にはNTIDが通訳者を確保する支援を行う。現地で見つけるorNTIDから連れて行くなど。

Q:ろう教員の会議その他での通訳者派遣はどうしているのか?ろう教員を採用することによって生じる学部への負荷をどう考えているのか?(通訳をつけなければいけないから面倒とか・・)

A:会議その他にろう教員が参加する際にはすべて手話通訳がつく。ADA法があるが、この法律は予算的措置を義務づけるものではない。しかし、Reasonable Acommodationを提供する必要があるとの義務を課している。

例)ろう者がフルタイムの通訳者を雇用することを要求しても、それがReasonableでないと考えられる場合には断ることができる。

NTIDには多数のろう教員がいるが、NTID内での会議はすべて教員が自ら手話を用いることを義務づけられている。RIT内で働いているろう教員(二人)には、フルタイムの通訳者がついており、必要なサポートを行っている。
少なくともRITではろう教員だからと言って採用しないと言うことは起こらないと信じている。きちんと彼らの持つ能力によって採用を決定。

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