Q聞こえのしくみはどのようになっていますか?

聞こえのしくみ

図 音の伝達と難聴の関係

(1)外耳

わたしたちが通常「耳」と呼んでいるのは「耳介」のことで、耳の機構のほんの一部にすぎません。耳介をよく見てみると、なぜこんなに 不思議な形をしているのかと思いますが、音楽をイヤホンで聞くときや、補聴器を装用するときに耳介がないとたいへんです。耳介には集 音作用や音の方向の判断をしやすくする作用があります。
耳の穴と呼ばれる外耳道の奥行きは、おとなで約3センチメートルあり、まっすぐではなく少しS字型に曲がっています。外耳道の奥は鼓 膜に突き当たります。子どもの鼓膜は薄くて弾力があり、少しぐらい穴が開いても自然にふさがりますが、大人になるにつれて厚くて固い ものとなり、穴が自然にふさがるようなことはなくなります。
空気中を伝わってきた音の振動は、鼓膜に集められて「音響エネルギー」に変換されます。
ここに述べた耳介から鼓膜までを、外耳と呼びます。鼓膜は外耳と、その奥の中耳とを分ける境界線となります。

(2)中耳

中耳には人体の中でもっとも小さいといわれる、耳小骨という3つの骨があります。ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨と呼ばれるこの3つの骨は 連鎖して、鼓膜から内耳との境である正円窓につながっています。そして、テコの作用をして圧力を高め、鼓膜のわずかな振動を中耳へと 伝えるわけです。また、この耳小骨は、突然強い音が耳に入ったときに、そのショックで奥にある大事な内耳が破壊されないよう、弱音器 の働きをして、安全弁の役割も果たしています。
鼓膜までやってきた「音響エネルギー」は耳小骨で「機械エネルギー」に変換されます。

(3)内耳・聴神経

耳小骨以降を内耳と言います。耳小骨に伝わった「機械エネルギー」は正円窓に伝わり、内耳のリンパ液に波動を生じさせます。ここで「 水力エネルギー」に変換するわけです。
また、内耳には蝸牛があります。カタツムリのように約3回転の螺旋型をした蝸牛の中にはリンパ液が満たされていて、中耳に集められた 音によって波動を生じます。蝸牛の内側には有毛細胞があり、波動を感知して「電気エネルギー」に変換します。
有毛細胞の先には4万本もの聴神経がつながれていて、音の情報を脳に伝えます。音を受けとった脳は、それらを認識できるように処理し 、意味ある言葉や音楽などとして理解するのです。

TipSheet「聴覚障害」大沼直紀より(2007/11/30)

参考になる資料

聞こえのしくみについては、以下のTipSheetに概要がまとめられています。

TipSheet「聴覚障害 ⑥」大沼直紀(筑波技術大学)
聞こえのしくみと難聴
「聴覚障害」ダウンロード

チップシート「聴覚障害」1
チップシート「聴覚障害」2

この他に参考になる書籍には以下のようなものがあります。

「聴こえの障がいと補聴器・人工内耳入門 基礎からわかるQ&A」
黒田生子 編著・森尚彫 著(2022)学苑社

Q&A形式で、補聴器や人工内耳、聴覚障害者への支援の基本的な知識が得られます。

「よくわかる補聴器選び」八重洲出版

毎年発行されており、最新の補聴器情報に加え、耳の構造から難聴の種類、補聴器の知識・購入・維持管理などについてわかりやすく解説されています。

「耳と補聴器のひみつ 漫画でよくわかるシリーズ121」学研

聞こえのしくみや補聴器について、マンガのストーリーを通して知ることができます。(本書は学校図書向けの非売品。閲覧はウェブサイトから可能)

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