語学の授業でどのような支援が必要かを考える際にはさまざまな要素が関わりますが、ここでは、日本語も使用しながら授業が行われるのか、外国語のみで行われるのかなど、授業で使用される言語が何かということを軸に、支援方法の例や留意点を整理して紹介します。
外国語と日本語の両方が話される授業
このような授業でノートテイクなど文字による情報保障を行う場合、入力(筆記)している途中で言語を切り替えなければならず、授業に追いつくのが難しくなって支援者の負担が大きくなったり、外国語の部分をカタカナで表記せざるを得なくなり、十分に授業の情報を伝達することが難しくなります。
一方、音声認識による字幕を活用しようとすると、「言語設定(選択)」の問題が出てきます。複数の言語に対応している音声認識ツールは、予め認識させる言語を設定しておくことができますが、日本語と外国語の両方を使用する授業では、その都度「言語の選択」を切り替えなければならず、現実的には対応することが非常に難しくなります。また、自動切り替え機能があるツールの場合にも、一定の間(ま)が空いてから切り替わる場合もあり、必ずしもスムーズに2つの言語が認識できるとは限りません。その結果、どちらかの言語が文字化されないなど、提供される文字情報が不十分な状態になってしまうおそれがあります。このような点を考慮し、支援方法や支援者の配置を工夫している支援の事例を以下に挙げます。
情報保障の例
- 日本語の部分の入力(筆記)担当と外国語の部分の入力(筆記)担当に分けて対応する。語学が堪能なノートテイカーを2名確保できない場合や、語学は得意だがノートテイクに慣れていないという学生が支援する場合も、こうした組合わせであればお互いの長所を活かして支援できる。
- 外国語(特に英語以外)については、パソコン入力より手書きのほうがスムーズに伝達できる場合には外国語を手書き、日本語をパソコン入力など、担当ごとに支援手段をそれぞれ選択する
- 外国語の入力担当には、その言語の聞き取りやタイピングに慣れている人(英語が得意な人、留学経験のある人、留学生、第二外国語の場合は既習者、など)が支援を担当するように支援者配置を調整する
なお、上記のようなノートテイクに加え、音声認識による字幕も併用して情報の漏れや遅れを補う、日本語、英語どちらか一報の文字化に音声認識を活用するといったれいもあります。ただし、音声認識を情報保障に活用する場合には、スムーズに文字化されるための環境整備が不可欠です。語学授業での活用を検討する場合には、まず「音声認識を情報保障支援に取り入れる前に」をご覧いただき、留意点や必要な準備についてご確認ください。
また、補聴援助システムなどを活用して音声を聞いて授業に参加する学生の場合、同じ補聴環境であっても、日本語の聴取と、慣れていない外国語の聴取とでは聞きやすさに違いがあることもあります。特に、高音の聞き取りが困難があるというきこえの特性がある学生の場合、子音のs、t、sh、などを含む単語の聞き取りが難しく、補聴援助だけでは十分な情報を得て授業について行くのが難しい場合もあります。板書や配布資料、ノートテイクなど、必要に応じて文字を示して伝える配慮が必要となります。
日本語での説明が多い/テキストや資料を使った文法解説が多い授業
教科書の英文を読みながら文法や単語の解説したり、問題を解きながらその解説をするようなタイプの授業など、語学授業でも大半が日本語で進められる場合があります。外国語の内容は教科書や配布資料など視覚的な教材にすべて載っているというケースです。こうした授業で文字による支援を行う場合は、一般的な授業と同様に日本語を聞きながら文字化することに加え、外国語テキストの参照すべき部分と、先生の説明内容との対応関係が明確に示せるよう、支援方法を工夫することが重要になります。以下に例を挙げます。
情報保障の例
- 支援用の配布プリントや教科書のコピーを用意し、書き込み担当と書き込み担当の支援者は、文法や単語の解説、設問の答えやその解説などを手書きで書き込んだり、読み上げている箇所を指し示したりする。入力担当の支援者は、話されている内容を入力していく。
- 授業担当教員の協力が得られる場合、支援用の配布資料は余白を多くとったレイアウトにしたり、英文を一行空きで印刷したものを提供いただけると、書き込みがしやすい。
- (遠隔支援が可能なパソコンノートテイクのシステムを使用している場合でも)ノートテイカーが聴覚障害学生のとなりに座って支援し、指さしなどの視線誘導も行なえるようにする。
- 聴覚障害学生が一緒に受講している友人からテキストの読み上げ箇所や板書への視線誘導などのサポートが受けられる場合、ノートテイカーは遠隔支援システムを使って文字入力し、後列の席など聴覚障害学生の両隣以外の席で支援を行えるようにする。
外国語のみが話される授業
外国語のみが話される授業の場合は、日本語が併用されるケースのように言語を切り替えて対応する必要がなくなる一方、その外国語にきちんと対応できる支援者や支援ツールの活用が必要になります。たとえば、ノートテイク支援の場合は、その外国語を聞き取り文字化できるスキルを持ったノートテイカーを配置すること、音声認識を活用する場合には、言語に合ったツールを選択し、きちんと音声取得をした上で、リアルタイムに誤認識をチェックし修正できるサポーターを配置すること、等です。
また、補聴援助システムを活用して音声を聞いて受講している学生の場合、日本語の聞き取りと同じように外国語も聞き取れるとは限らないことに留意してください。聞き慣れていない言語の場合、文脈や背景知識をもとにした推測が働かせにくくなったり、子音の聞き分けが難しいことで単語の区別がしづらくなる、といった状況も生じます。他の授業と同じく補聴援助があればよいと安易に判断せず、学生に授業中の様子をよく聞き取り、必要に応じて補聴援助以外の支援方法を組み合わせることも検討してください。
以下に、文字による情報保障の工夫例を挙げます。
情報保障の例
- 外国語の入力担当には、その言語の聞き取りやタイピングに慣れている人(英語が得意な人、留学経験のある人、留学生、第二外国語の場合は既習者、など)が支援を担当するように支援者配置を調整する
※支援者の確保の方法については「語学授業の支援③:支援者の配置、募集や配置のノウハウ」のページを参照してください。 - 留学生からノートテイカーを募り、連係入力の方法を指導してパソコンノートテイクを行ってもらう
- ネイティブスピーカーの先生が英語のみで行う授業では、googleやmicrosoftの音声認識ツールを使って英文を表示し情報の即時性と大まかな正確性を確保。ただしこれらのツールはリアルタイムで誤認識の修正ができないため、googleドキュメントの音声入力機能で表示させた英文をノートテイカーが修正し、情報の正確さを補填したものとして提供。学生はリアルタイムの字幕を中心に利用し、修正済みの文字情報も確認しながら授業に参加。
※この事例の詳細は「英語で行われるオンライン授業における音声認識技術を活用した支援」のページを参照してください。
語学授業の支援 コンテンツ一覧
- 語学授業の支援① 支援の検討の流れとポイント(メインページ)
- 語学授業の支援② 授業で使用される言語(日本語/外国語)に応じた支援方法の例
- 語学授業の支援③ 支援者の募集や配置のノウハウ
- 語学授業の支援④ 映像や音声を使用する場合
- 語学授業の支援⑤ 授業担当教員による配慮



