ドキドキ!「アマゾン川を渡ろう」
聴覚障害のある学生の多くは、集団で協力しながらひとつの目的に向かって活動するという経験を持ちづらい環境にあります。本活動では、こうした集団活動のひとつとして、仲間と知恵を出し合ってものごとを達成するとともに、グループ内でひとつの意見を作り上げ、それを他者に対して発表する体験を重ねることを目的にしています。
ゲームのルールにそって活動を進めるうちに、身振り・手振りでのコミュニケーションから、テーマに基づくグループディスカッションに発展し、さらには審査員を前にしたプレゼンテーションを行うなど、活動の内容が徐々に高度になっていくのもポイントです。複数の活動を組み合わせているため、ルールが少し複雑ですが、参加者が力を合わせて達成できるようサポートできるとよいでしょう。
◎ねらい
- 本研修がグループ活動を基本にすることを理解する。
- グループ内でテーマに基づきディスカッションを行うことで、参加者同士のコミュニケーション方法を確認するとともに、ひとりひとりが確実にコミュニケーションを取ることの重要性を学ぶ。
- 異なる意見を持つ人々と十分に対話し、この中から一つの意見にまとめていくためのプロセスを学習する。
◎時間
60分
◎役割及び人数
役割 | 人数 | 留意点 |
---|---|---|
講師 | 1名 | グループ活動の内容を把握しており、時間調整に慣れていることが望ましい。 |
アシスタント | 4名 | 各グループについて、必要に応じたアドバイスを行う。 |
参加者 | 20名程度 | 4・5名ずつグループに分かれる。 |
審査員 | 5名 | 各グループの発表を見て採点を行う。 |
◎方法
詳細は指導計画を参照
<ルール>
- 各グループともに、アマゾン川に浮かぶ課題カードを1枚ずつ取得し、そこに記載されているテーマに基づきディスカッションを行った後、その結果を神殿エリアにて発表、採点してもらう。
- アマゾン川ではA3用紙2枚を浮き石として利用することができる。
- 紙の使用方法は、各グループで自由に検討してかまわない(二つに切るなどしてもOK)。
- ただし、紙からはみ出た学生は、ピラニアに食べられてしまう(ピラニアワッペンを胸に貼る)。
- 課題カードには、「おにぎりは丸と三角のどちらがよいか?」などの2者択一式のテーマが書かれている。
- 各グループは、課題カードに書かれたテーマに基づきディスカッションを行い、その結果をホワイトボードにまとめる。
- 神殿エリアでは、このホワイトボードを効果的に活用しながら、5分間のプレゼンテーションを行い、5名の審査員(酋長)による採点を受ける。
- 採点は20点満点とし、10点の減点ごとにひとりがピラニアワッペンをつけられる。
- 2回課題をクリアしたあと、ピラニアワッペンをつけられていない学生のみがアマゾン川を渡ることができる。
- 最終的に渡り終えた速さと学生の人数、プレゼンテーションの点数を合わせ、順位を決定する。
<進め方>
- あらかじめ体育館などの広いスペースに、アマゾン川と集落エリア、神殿エリアを作成しておく。アマゾン川の中央には課題カードを並べる。
- 全体が集まったら進行方法を説明する。講師は、スライドを用いて参加者全体にルールを伝え、これから何を行うのかを周知する。
- ゲームが始まったら、まず各グループはアマゾン川の周辺に集まり、与えられたA3用紙2枚をどのように活用するか話し合い、工夫を凝らして課題カードを1枚取る。
- この際、紙からはみ出した学生がいたら、アシスタントがピラニアワッペンを胸に貼る。(ワッペンを貼られた学生も継続して活動に参加できるが、最後にアマゾン川を渡るときには、岸で待機となる。)
- 課題カードを取れたら、集落エリアに移動し、与えられたテーマに基づきディスカッションを行う。この際、ホワイトボードを効果的に活用するよう助言する。
- ディスカッションがまとまったら、ホワイトボードをもって神殿エリアに移動し、審査員に対して話し合いの結果を発表する。
- 審査員は、2者択一式の回答のうち、両方のメリット・デメリットがきちんとあげられているか?説明は論理的で結果に説得力があるか?など、論理性の観点から採点を行い、即座に集計する。
- 採点を終えたら、そのグループに対して点数を発表し、得点に応じてピラニアワッペンを貼る。(ピラニアワッペンはひとり一つまでとし、既にワッペンを貼られている学生には、重複して貼らない)
- 上記の要領で2回課題をこなしたら、ピラニアワッペンを貼られていない学生の数を確認し、これらの学生が全員で協力してアマゾン川を渡る。この際も利用できる浮き石は最初に渡したA3用紙2枚のみとし、紙からはみ出した学生にはピラニアワッペンを貼る。
- 最終的に渡り終えた順番によって、1位のグループは1人20点、2位のグループはひとり18点・・・と点数をつけていき、(渡り終えた人数×点数)+(プレゼンテーションの獲得点数)で総合順位を決定する。
- すべてが終了したら、審査員は最もすばらしいプレゼンテーションを行ったグループを発表し、これらのグループにもう一度全員の前で内容を発表してもらう。
◎留意事項
- 場所は、体育館ないし50名以上入れる教室・講堂(床が平面)で実施するのが望ましい。
- アマゾン川の幅は5メートル前後とし、マスキングテープなどで床に両岸を示すラインを引いておく。
- 課題はできるだけ多様な意見を出せるような内容とし、簡単に答えが出せないテーマを検討する。
- ホワイトボード用マーカーは黒だけでなく、赤色、緑色、青色などいくつかの色を用意しておきたい。
- 講師・アシスタントはコミュニケーション面で取り残される学生がいないかどうかを注意深く見守り、その場に参加できていない学生がいる場合には、どうしたらよいかグループで考えさせるよう支援する。
指導計画
実際の研修会で利用できる指導計画案を掲載しています。ご自身の大学の状況に合わせて、適宜アレンジしてご利用下さい。
教室配置
留意事項
<アマゾン川エリア>
5メートル前後の幅で、床にマスキングテープなどを用いてラインを引く。中央には課題カードを並べる。
<集落エリア>
各グループで使用したホワイトボードをそれぞれ内側に向けて並べ、参加者達は中央に座る。発表時には、それぞれホワイトボートを見ながら話を聞けるよう、体の向きを変えていく。
<神殿エリア>
審査員用の椅子を並べ、各グループがホワイトボードを持ってきて発表できるよう、スペースを確保する。
準備する教材・設備等
- アマゾン川エリア
岸のラインを示すためのマスキングテープ
A3用紙2枚×グループ数
課題カード×10種類
ピラニアワッペン5個×グループ数
「増水中」表示版×1枚 - 集落エリア
ホワイトボード1枚×グループ数
ホワイトボード用マジック(黒・赤・青・緑)×グループ数 - 神殿エリア
椅子5脚(審査員用)
ブギーボード5個
情報保障
講師が直接手話や文字を用いて参加者に情報を伝える。グループ内のディスカッションでは、互いのコミュニケーション状況に配慮し、全員が参加できる方法で話し合いを進めるよう伝える。
ルール
- 各グループともに、アマゾン川に浮かぶ課題カードを1枚ずつ取得し、そこに記載されているテーマに基づきディスカッションを行った後、その結果を神殿エリアにて発表、採点してもらう。
- アマゾン川ではA3用紙2枚を浮き石として利用することができる。
- 紙の使用方法は、各グループで自由に検討してかまわない(二つに切るなどしてもOK)。
- ただし、紙からはみ出た学生は、ピラニアに食べられてしまう(ピラニアワッペンを胸に貼る)。
- 課題カードには、「おにぎりは丸と三角のどちらがよいか?」などの2者択一式のテーマが書かれている。
- 各グループは、課題カードに書かれたテーマに基づきディスカッションを行い、その結果をホワイトボードにまとめる。
- 神殿エリアでは、このホワイトボードを効果的に活用しながら、5分間のプレゼンテーションを行い、5名の審査員(酋長)による採点を受ける。
- 採点は20点満点とし、10点の減点ごとにひとりがピラニアワッペンをつけられる。
- 2回課題をクリアしたあと、ピラニアワッペンをつけられていない学生のみがアマゾン川を渡ることができる。
- 最終的に渡り終えた速さと学生の人数、プレゼンテーションの点数を合わせ、順位を決定する。
進行・展開
主旨説明(10分)
講師はスライド等を用い、進め方の説明を行う。
「アマゾン川を渡ろう」(40分)
- A3判用紙2枚を使って「因幡の白うさぎ」のイメージで各グループがアマゾン川にある課題カードを取ってくる。
- カードを取ったグループから集落エリアに移動し、それぞれ課題にしたがって議論を行う。話し合った結果は、ホワイトボードにわかりやすくまとめる。
- 議論がまとまったら、神殿エリアにホワイトボードを持っていき、審査員に対して5分間のプレゼンテーションを行う。
- 審査員はプレゼンテーションの内容を見て20点満点で評価を行い、この点数を平均して総合点とする。点数はその場で学生に伝えるとともに、10点の減点毎に一人にピラニアワッペンをつける。
- 議論がまとまったら、神殿エリアにホワイトボードを持っていき、審査員に対して5分間のプレゼンテーションを行う。
- 1・5の要領で課題を2回繰り返した後に、ピラニアワッペンをつけられていない学生だけが、アマゾン川の向こう岸に渡る。この際もA3用紙2枚の浮き石からはみ出ないように工夫するよう伝え、紙からはみ出した学生にはピラニアワッペンをつける。
(この際、競争的要素を出すため、二組が競い合って渡れるよう時間を調整する。待ち時間には、アマゾン川エリアに「増水中」の表示を出すなどしてもよい) - 全体の制限時間は40分とし、最終的に渡り終えた順番によって、1位のグループは1人20点、2位のグループはひとり18点・・・と点数をつけていき、(渡り終えた人数×点数)+(プレゼンテーションの獲得点数)で総合順位を決定する。
まとめ(10分)
すべてが終了したら、審査員は最もすばらしいプレゼンテーションを行ったグループを発表し、このグループにもう一度全員の前で発表をしてもらう。
課題カードの例
- おにぎりは丸い形と三角形でどちらが良いか
- 犬と猫ではどちらがすばらしいか
- 学校は私服と制服のどちらが良いか
- 好きなものは先に食べるか、最後に食べるか
- お金と愛、どちらが大切か
- 年賀状は必要か、不要か
- 見苦しい歩道橋はなくすべきか
- 洋画は字幕が良いか、吹き替えが良いか
- 風呂で頭から洗うか、足から洗うか
- 原子力発電を廃止すべきか
留意事項
アシスタントは紙からはみ出す学生がいないかよく見て、もしいたらピラニアワッペンを貼る。
議論はディベート形式で行うよう伝え、アシスタントが各グループの指導を行う。
審査員には、2者択一式の回答のうち、両方のメリット・デメリットがきちんとあげられているか?説明は論理的で説得力があるか?など論理性の面から採点を行ってもらうよう伝える。
指導教材資料
課題カード
ピラニアワッペン
指導教材
実際の研修会などで使用可能な教材を掲載しています。ダウンロードの上ご使用ください。
プレゼンテーション資料
説明時に講師が用いたスライドの例
ピラニアワッペン画像
ゲーム中で減点対象になったときに貼るワッペン。印刷の上、厚紙に貼り付け、裏に安全ピンをつける。グループ数×5個程度準備。
教材作成:大杉豊氏(筑波技術大学 障害学生高等教育研究支援センター)
※本教材の著作権はPEPNet-Japanに帰属しています。研修会等で編集の上ご利用いただくことは可能ですが、クレジット表記などは変更しないようお願いします。
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