Q.大学教員
貴重な報告ありがとうございました。
吉川さんの報告の中で、ノートテイカーが難聴学生のそばに座っていないということがありましたが私は不思議でなりません。理由がありますか。

A.吉川(関東聴覚障害学生サポートセンター)
アメリカのノートテイクは、基本的には手話通訳がいるということが大前提です。その場では、学生は手話通訳を見て情報を得ています。 手話通訳を見ながらノートを取ることができないので、記録として、聞こえない学生の代わりに書く、記録という意味でのノートテイクをしています。
日本のように、情報保障として通訳としてのノートテイカーを付けるのとは大きく違っています。

Q.大学教員
では、そういうアメリカ型のやり方と、手話通訳がいなくてノートテイクで情報保障をするという日本のやり方、どちらが優れていると思われますか?
A.吉川(関東聴覚障害学生サポートセンター)
あくまでも私個人の考えですが、日本の場合、パソコン通訳の普及や活用がまだ十分ではないという状況の中で、手書きのノートテイクが発展してきたのではないか、と思っています。
しかし、最近ではパソコン通訳の広がりが見られています。パソコン通訳、手話通訳が日本で広がっていくにしたがって、今のアメリカのような記録型のノートテイクに対するニーズが、日本でも出てくる可能性が高いと思っています。

Q.社会人(聴覚障害者)
私はRITを卒業しましたので、私の体験を話します。
日本のノートテイクのスタイルは分かりませんが、アメリカの場合、手話通訳を通して、何がおこっているのか全部情報を得られます。ですから学生が冗談を言って、みんなが笑う、それが分かって初めて講義に参加する意味があります。
そういうすべての状況がわかって、講義に参加する意義があり、また、その講義に出ようという意欲も湧いてきます。ですから、アメリカのノートテイクはその場の状況を書くのではなく、先生の話をまとめて、記録として書くだけという分担になっています。
日本のものとアメリカのものを比較すると、詳しくわかると思います。
A.土橋(同志社大学)
コーディネーターを仕事にしています。
同志社大学では、ノートテイク、手話通訳、パソコン通訳、この3種類を使っています。
手話通訳とノートテイク、パソコンとノートテイクなどのいろいろな組み合わせをしています。
その理由は、手話通訳をしているとノートが取れないので、横でノートを取る。 パソコン通訳をしているが、先生がわりとテキストを読むなど、そういう場合場合により、情報保障の形態を本人のニーズに合わせています。

a.]A.
青野先生の質問に関連して。情報保障を実施するに当たって、発言するチャンスを保障できるかが重要になると思います。
群馬大では、4年生の卒論ゼミで、2人のテイカーがパソコンで連携入力して情報保障を行っています。表示用パソコンは3・4台用意し、机の真ん中を囲むように置いて、回りの学生たちも今どういう情報が流れているかわかるようにしている。こうすると、一人だけ遅れていく状況を作らず、誰でも発言できます。
ノートテイクといっても、ディスカッションであればこのような状況作りも大事かと思います。

もう1つ。手話通訳を利用する際に、記録のためのノートテイクが必要かどうか。 これは議論の余地があるだろうと思います。
例えば学会に手話通訳がついているとき、自分でノートが書けないからノートテイクがほしいと、聴覚障害のある学会参加者は言いますか?手話通訳がある場合、ノートテイクはあくまで補助手段となります。 その補助手段はなければいけないのか、議論の余地が今後もあると思います。

A. 大学教員
]A.、3年前に金沢大学でも難聴学生のゼミをしました。
無線LANではなく、パソコンノートテイクにより、画面をプロジェクタで映しました。 たどだとしいパソコン入力をしていましたが、学生の発言内容も映しました。
次に聴覚障害学生が入学したら、無線LANでやってみたいと思います。

Q.元大学教員(聴覚障害者)
講義の内容によって、適している情報保障手段があるのでは。 例えば、歴史の授業などでは、本の名前や古い言葉などが出てきます。 その場合文字通訳が向いていると感じます。
逆に、話が中心の場合は手話通訳のほうが合っている感じがする。 場合によってあるいは学生の好みによって使い分けられるのが理想ではないかという気がしています。また、スウェーデンなど欧米では文字通訳があまり普及していないように見えます。
2点目に、大学での情報保障は、あくまで大学の負担で行ってきたという話がありましたが、それはなぜか。アメリカの場合、高等学校までは教育省が補助金を出して支援していますが。
A.金澤(群馬大学)
なぜ大学がお金を負担するのかという理由はわかりません。
その前の、欧米で文字通訳が広まらない理由です。
ここで言う文字通訳というのは、C-print[などパソコンを使った文字通訳をさしています。 一概には言えませんが、1つには、すでに手話通訳によるサービスが早い時期に始まり普及している状況があるので、文字通訳はそれを利用できない人のためのサービスだという捉え方があるのではないでしょうか。
また、全て文字化するCARTは、非常に高額です。C-print[も、謝金は高いです。
一方、日本の場合、IPtalkというすばらしいソフトがあり、これは、もちろん専門の入力者が行うのがベストですが、学生でも、2人での連係入力によって情報量を増やすことができます。連携入力は日本独自の方法です。
アメリカは1人で入力を行うので、高い専門性が必要とされます。日本のように、学生が担うという発想はおそらくないのではないかと思います。

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