①ノートテイカー養成の基礎

  • 講師 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター 白澤麻弓

全国大学・短大の33.0%に聴覚障害学生が在籍しており、そのうち約半数でノートテイクによる支援が実施されている。これに対して、パソコン要約筆記の実施割合は、聴覚障害学生が在籍している大学の13.6%、手話通訳は18.8%。そのほか本講座でも利用している遠隔情報保障なども今後広がってゆくかもしれない。
また、最近では支援体制の組織化が進んでおり、6~10%の大学・短大で障害学生支援委員会が設置されている。さらに、ノートテイカーの養成については、大学の授業内での養成(例:広島大学など)や、年間を通した計画的な養成を図る(例:同志社大学など)などの工夫が行われており、今後ますます増加していくことが望まれる。

②情報保障の意義と聴覚障害理解

-聴覚障害学生への理解と情報保障について-

  • 講師 関東聴覚障害学生サポートセンター 吉川あゆみ

聴覚障害と言っても失聴の時期や聴力などによってコミュニケーション手段や求めるサポート内容が異なるため、状況に応じて必要なサポートが変化し、かつ複数の多様なサポートが求めれる。また、個人の中でもサポートに対する受けとめ方が変化していくものであり、その段階に応じたサポートが必要である。一人ひとりの聴覚障害学生に合わせたサポートを提供していくことで、聴覚障害学生は自分にあった生き方というものを選択できるようになるのではないだろうか。

-ノートテイクの利用体験-

  • 講師 関東聴覚障害学生サポートセンター 中島亜紀子

利用体験の目的は「文字を通して授業を受ける体験をノートテイクに活かすため」であり、「聞こえないことの疑似体験」ではない。進め方にはいくつかの方法がある(今回はノートテイクを見ながら授業を受ける体験を実施)が、いずれにしても終了後に体験を整理することが重要である。体験をどうノートテイクに活かすかを受講生に投げかけ、考えてもらう時間をとりながら進めてほしい。

③ノートテイクの基本

  • 講師 関東聴覚障害学生サポートセンター 中島亜紀子

ノートテイクの学習では、まずノートテイクの通訳としてのプロセスを理解する必要がある。そのプロセスの中でどの部分につまずきがあるのかがわかれば、その部分に焦点を当てた練習もできる。そしてノートテイクの書き方のコツを説明し、ノートテイクの具体的なイメージを持ってもらうという流れで進めるとよい。
実際に書く練習では、段階を踏んで徐々にと実際の授業に近い内容にしていくのがよい。練習の後には自己評価や受講生同士での評価、利用学生からの評価を行い、複数の視点からノートテイクのポイントを押さえながら進めていくことが効果的である。講座の中でノートテイクについて意見を交わした経験が、現場での利用学生とのコミュニケーションにつながっていく。

④ノートテイクの実践

  • 講師 関東聴覚障害学生サポートセンター 中島亜紀子

実際にノートテイク支援にあたる際には、書く技術のみならず、教員や周囲の学生の理解と協力を求めたりしながら通訳環境を改善することや、利用学生と信頼関係を築いてよりニーズに沿う支援方法を検討していくことが求められる。時には、ノートテイク以外の通訳手段を提案することも必要になる。
ノートテイカーには、周囲への働きかけ方や様々な授業での支援方法について、1つでも多くの引き出しを持って活動にあたってほしい。

⑤ノートテイクのルールとマナー

  • 講師 関東聴覚障害学生サポートセンター 田中啓行

ノートテイクは、同じ大学で学ぶ大学生が担うケースが多くなっているが、通訳者-利用者という関係をしっかりと捉え、通訳者としてのマナーに叶った判断と行動で、ノートテイク支援を進めてほしい。この際、活動がしやすいようにあらかじめルールを定めておくことは大変有効だが、その一方で、ノートテイク現場で起こる様々なことに、臨機応変な対応を求められることも少なくない。支援者として最善の判断ができるよう、利用学生とのコミュニケーションを十分に取ってその状況やニーズを知り、通訳者の役割を心得た上で、現場に臨んでほしい。

⑥ノートテイカー養成の実際(ノートテイクの評価項目、講座の開催方法)

-講座をきっかけに-

  • 講師 同朋大学学務課障害学生支援室 瀬戸今日子

聴覚障害学生の支援体制にとって、養成は非常に重要だが、ただ講座を開いくだけにとどまっている例も少なくない。ぜひ、「養成講座を軸に支援体制を組み立てる」という視点をもってほしい。
ここでは、養成したノートテイカーが活動する中で、コーディネーターがどんな関わりをしてどんな対応をしていくことで、現場での支援を円滑にし、ノートテイカーのスキルアップにつなげ、利用学生により快適な支援を提供できるか、取り組みの例を交えながら話をする。特に利用学生やノートテイカーひとりひとり、また講義ひとつひとつについて「カルテ」を作成し、日々の情報を書き留めてゆくことは、個々の成長をうながす上で非常に重要である。

-ノートテイクの評価-

  • 講師 静岡福祉大学情報福祉学科 太田晴康

ノートテイクの評価は、ノートテイカー養成講座を、支援者の量的・質的な確保につなげていくために必要な要素といえる。評価基準をもち、個別の養成課題を明らかにすることで、ノートテイカーのモチベーションも向上する。ここでは、「実用情報単位」「大意と展開」といった視点から、ノートテイク評価の事例を挙げて説明する。
また、効果的な支援のためには、その授業の教育目標に沿った支援方法を導入することも欠かせない。聴覚障害学生が授業を履修するとき、その学生にとっての教育目標を達成するためにはどんな支援が適切なのか、教員側にも意識を持って共に考えてほしい。

当日配布資料は、当日資料のページからダウンロードできます。

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