支援を活用し、自分で“わかる”環境を作る。/研修③支援の活用を学ぶ

手話通訳の活用

本企画では、手話通訳の利用を体験し、それをどのように自分がもっともわかる通訳に変えていくかを体験した。参加者は2つの異なる特徴を持った手話通訳映像を見て、一口に手話通訳と言っても様々な特徴を持った手話通訳があることを知り、自らが求める通訳像を考えた。さらに、講義の通訳場面を擬似的に設定し、実際に目の前の手話通訳者に対してニーズを伝えることを通し、自分が望む情報保障環境を整えるための練習を行った。

手話通訳の活用の様子
参加学生の声

「映像の通訳と生の通訳の違いはあるものの、模擬講義の手話通訳は理解しやすかった」「ニーズをはっきりと伝えたことで、モデル手話通訳1とモデル手話通訳2の良い所取りをした通訳になった」
「こんなにも通訳者が要望に応えてくれるものだとは思わなかった」
「自分のニーズは遠慮せずに全て伝えてよいものだと初めて知った」

支援技術

学生は2人1組になり、普段自分が受けているパソコンノートテイクを自らが入力者になって体験した。これにより、文字情報保障のしくみを知り、有効に活用するための知識を得ることができた。またモバイル型携帯端末を用いた最先端の支援機器を体験し、自分の生活や学習・研究への活用可能性を考えることができた。

支援活用の様子
参加学生の声

「連係入力はついていくのが大変。間違えて変な文字も出してしまった。『逆探知』と入力したはずが『逆山地』になっていることに、あとから気づいて驚いた」
「入力している様子を見ながら、これは、あうんの呼吸が必要な作業だと思った」
「自分たちは目で見て入力したが、耳で聞きながら入力する場合は正しく漢字変換するという作業も加わり、もっと大変なはずだ」

連携入力の様子

補聴システム

補聴器を中心とする補聴システムに関する自らの理解度を「補聴器マイスターチェック」の質問に答える形で確認し、専門家から基本的な知識と情報を学んだ。また、他者が補聴器をどのように感じているか、活用しているかの意見交換を行った。自分が生活する地域の中で福祉制度を利用したり、相談できる専門家・専門店を見つけたり、また制度変更等の最新情報を自分で収集していかなければならない中で、補聴器や補聴システムについての知識・情報を整理したり、他の聴覚障害者と情報交換したりすることは、非常に重要なエンパワメントの機会になった。

補聴システムの様子

支援の依頼

この研修では、大学の授業場面で、字幕のないビデオ教材をもとに試験を実施するという場面を設定し、どのように教員との相談・交渉を進めればよいか、ロールプレイを通して考えた。このことで、状況に応じて必要なサポート方法を判断し、相手に伝わるように質問・説明交渉する方法を学び、また、相手や場面に応じた適切なコミュニケーション方法の選び方や、円滑な話の進め方について学ぶことができた。

ロールプレイの様子
参加学生の声

「理解のある方ばかりの環境にいる中で失いかけていたものを見出せた気がする」
「支援を依頼するだけではなく相手にどう伝えるべきかという困難を感じた。自分の大学は恵まれていたんだなと感じた」
「ロールプレイに参加し、心が非常に折れましたがその分自分の「甘いなー」というところがハッキリ見えて、大学で参考にしたいと思いました」
「ロールプレイの担当の先生が役者で怖く、緊張感のある学習ができた」

ロールプレイの様子
グループディスカッションの様子

疑似体験を通して、就職に備えることの具体的なイメージを作る。/研修④就職に備える

模擬面接

事前課題として、自分が希望する会社に就職することを想定したエントリーシートを提出し、これをもとに一人一人模擬面接を行った。面接場面では、自分のやりたいことが不明確なことや、自分がそこに就職したらどのように貢献できるのかといった視点に欠けている等の指摘がなされていた。面接が初めての学生も多く、的確に答えられずあたふたする様子も見られたが、それぞれが自らの今後の課題を発見することができ、良い練習の機会となった。

模擬面接の様子
参加学生の声

「どういう風に伝えるべきか、自分の伝えたいことをあらかじめまとめておく必要があると感じた」
「心が折れたが、「自分」を考える良い機会になった。自分に足りないところ、甘いところを指摘して頂けたのがとても良かった」
「面接では鋭い質問を受けて返答に口ごもってしまった。しかしこの体験を今回したことによって将来どんな仕事に就きたいか改めて考えさせられた」
「エントリーシートを執筆する際、自己分析はすんだ気になっていたが、まだまだ、自分のことを分っていない。また、説得力も弱いと言うことを思い知らされた。その意味で良いショック療法になった」

模擬面接の様子

職場での困難

一般企業で働く新人の聴覚障害者が、自分の担当した仕事について電話で問い合わせを受ける場面を設定し、どのように対応すべきかをロールプレイを行った。この体験により、職場で困難場面に遭遇した時に取るべき行動や必要なこと、状況に応じて必要なサポート方法を判断し、相手に伝わるように説明したり交渉したりする方法、相手や場面に応じた適切なコミュニケーション方法の選び方や円滑な話の進め方について、経験的に学ぶことができた。

ロールプレイの様子
参加学生の声

「相手にすぐ返事をしなければいけないのが難しかった」
「同僚は通訳者ではないということ、迅速な応対の重要さを学んだ」

グループディスカッションの様子

メール報告

特にコミュニケーション面、電話や会議などの場面で何らかの配慮が必要となる聴覚障害者にとって、視覚的にやり取りできる「メール」は仕事をする上で重要なツールになる。

本研修では「講演をしていただいた講師にお礼を述べ、事務手続きに必要な書類を送っていただくよう依頼する」という内容でメールを書く体験をし、ビジネスメールの基礎を学んだ。

メールを作成する参加者
参加学生の声

「ビジネスメールに限らず、事務的な連絡などのメールの書き方を教わる機会が今までなかったので、学生のうちに学べて良かった」
「ビジネスメールを作成するにはそれなりの文章力が求められるので、今回、こういう機会を設けていただいたことは文章力向上のチャンスになったと思うし、もっとメールの構成や表現について考えるよい機会になった」
「実際の仕事上、耳が聞こえないのでメールはとても重要になる。私のメールの作り方の問題点をあぶりだしてくれたので良かった」

メール報告の様子
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