障害学生支援教職員研修会
実施概要
2013年2月22日、同志社大学今出川校地にて「障害学生支援教職員研修会」を開催した。
PEPNet-Japanでは、全国の大学に点在する聴覚障害学生への支援体制を整備していくために、連携大学・機関を中心とした複数の大学が共同して地域のニーズに応じた研修会を企画・開催することを通し、大学間ネットワークの活性化を図ることを目的として、地域ネットワーク形成事業に取り組んできた。
2012年度は、同志社大学を主催校として、大阪大学、大阪教育大学、関西大学、関西学院大学、立命館大学の障害学生支援組織の担当者が実行委員として集い、この研修会を企画した。
研修会のプログラムは、「障害学生支援コーディネーター養成研修カリキュラム(試行版)」(2011年度コーディネーター連携事業にて作成)をもとに計画に着手し、最終的にはコーディネーターに限らず障害学生支援に携わる教員、職員を幅広く受け入れる研修プログラムが完成した。
研修プログラム作成の背景として、2012年度は文部科学省内に障害学生支援に関わる検討会が設けられ、2012年末に「障がいのある学生の修学に関する検討会報告(第一次まとめ)」が出され、多くの大学関係者ができるだけ早くこの内容を学ぶ機会を設ける必要が生じた。
そしてこの報告で打ち出されている合理的配慮の考え方をはじめ障害学生支援に求められる知識や技術を、コーディネーターにとどまらず大学内で支援に携わる様々な立場の方に学んでいただくことで、支援体制の充実につながることが期待される、という点も実行委員会として十分考慮した。この2点は今回の研修会の大きな特徴となった。
開催要項
- 日時 2013年2月22日(金) 10:00~18:00
- 会場 同志社大学今出川校地 寒梅館ハーディーホール他
<プログラム>
《第1部》10:00~12:00 基調講演(一般公開)
「障害学生支援に関する文部科学省の政策動向について」
- 講師:松尾泰樹氏(文部科学省高等教育局学生・留学生課 課長)
「これからの障害学生支援のあり方-合理的配慮の考え方に基づいて-」
- 講師:高橋知音氏(信州大学教育学部 教授)
《第2部》13:00~17:00 分科会(3コースから1つ選択して参加)
入門コース(障害学生の4年間)
聴覚障害学生と支援担当者のそれぞれの立場から、聴覚障害学生が入学から卒業までにたどる大学生活及びその支援について語るパネルディスカッションを行う。4年間の障害学生支援を追体験することで、各局面での支援の在り方やポイントを学ぶ。
- 司会:太田晴康氏(静岡福祉大学社会福祉学部長 教授)
- 話題提供者:
藤原隆宏氏(関西大学学事局授業支援グループ 修学支援コーディネーター)
松原 崇氏(大阪大学学生支援ステーション障害学生支援ユニット 助教)
聴覚障害学生(学部生・大学院生)
実践Ⅰコース(事例検討)
前半は、講義を通し「聴覚障害とは何か」について理解するとともに、それを他者に伝えるための方法を学ぶ。後半は講義の内容を踏まえつつ、「(1)対応に苦慮した事例」「(2)学内連携が特に必要となった事例」についてグループに分かれディスカッションを行い、多様な解決策について学ぶ。
- 講師(講義):松岡克尚氏(関西学院大学人間福祉学部 教授)
- 助言者(事例検討):
松岡克尚氏
井坂行男氏(大阪教育大学教育学部 教授)
中村 健氏(プール学院大学学生支援センター長 教授)
徳田真二氏(関西学院大学総合支援センター 事務長)
実践Ⅱコース(モデルプラン構築)
「コーディネーターに期待すること」「評価・合理的配慮・授業改善」「キャリア形成・就職活動支援」のテーマごとにグループに分かれ、基調講演の内容を踏まえて現状の課題を整理し、今後大学で取り組むためのモデルプランを作成する。
- 助言者:高橋知音氏
- ファシリテーター:
真銅正宏氏(同志社大学学生支援センター所長 教授)
米山 裕氏(立命館大学障害学生支援室長 教授)
田鍋耕三氏(同志社大学障がい学生支援室 課長)
武藤千也氏(立命館大学障害学生支援室 課長)
土橋恵美子氏(同志社大学障がい学生支援室 コーディネータ)
二宮絵美氏(立命館大学障害学生支援室 職員)
《第3部》17:00~18:00 分科会報告
<対象>
大学・短期大学・高等専門学校に在学する障害学生への支援業務を担当する教職員およびそれに準ずる方
障害学生支援の組織運営に関わる教職員の方
大学院生等で、今後この業務を職業として希望している方
参加者 132名
参加費 無料
主催
- 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)
- 同志社大学
共催
- 大阪大学学生支援ステーション障害学生支援ユニット
- 大阪教育大学障がい学生修学支援ルーム
- 関西大学学事局授業支援グループ
- 関西学院大学総合支援センター
- 立命館大学障害学生支援室
後援 公益財団法人 大学コンソーシアム京都
参加者の声(アンケート結果)
【参加者の地域別状況】
以下は、全日程参加者の皆様から頂戴したアンケートの結果です。
(回答者 102名、回収率 77.2%)
【アンケート回答者属性】
【各企画の評価】
【自由記述(一部抜粋)】
<基調講演>
- 合理的配慮について理解を深めることが出来る良い機会となりました。
- 高橋先生のお話が大変わかりやすく勉強になりました。機会があればぜひまたお話を聴きたい。
- 文科省の第一次報告の内容理解に大変役立つもので、基本的な考え方や大学の役割などとてもわかりやすくありがたかったです。
<入門コース>
- 障害学生のパネルディスカッションは非常に刺激になりました。「大学に入ってよかった」という言葉が響きました。
- 聴覚障害学生に直接思っていること等話を聞けて貴重な時間となりました。
- 当事者の方からお話が聞けたこと、支援の進んでいる大学からのお話など大変勉強になりました。また情報保障の実際を拝見することができ、大変参考になりました。グループワークも有意義でした。
- 聴覚に障害のある学生の方が頑張ってきたこと、苦労してきたことを色々聞くことが出来て、大変感銘を受けました。障害学生支援担当として直接障がいのある学生と話す機会(雑談等はしばしばありますが・・・)がまだ少なく、知識量もまだまだですので、これからさらに勉強していこうという自分自身のモチベーションにもつながりました。
<実践Ⅰコース>
- 分科会は多くの事例が報告され、一つ一つに具体的なコメントがあり、とてもよかった。もう少し、時間をかけ、ゆっくりと意見交換、コメント、助言をもらえるとよかった。
- 事例を伺えて大変良かったです。情報共有という意味で、またぜひ今後の動きも合わせて、こうした研修会をやっていただけると嬉しいです。
- 分科会でより活発な情報交換が出来ればとも思いますが、新たな人脈を増やすことも出来参加してよかったです。
<実践Ⅱコース>
- 今回助言者、ファシリテーター、オブザーバーならびに班員の方々と積極的に討論して、大変有意義な時間を得ることができました。ありがとうございました。
- 授業改善、評価の分科会に参加し、まだまだこれから各大学で積み上げていく課題だということをしみじみ感じました。
- 学生のキャリア形成支援について、障害学生向けと健常者向けがある訳ではない。ただ、キャリア形成のプロセスの段階でクリアすべき課題が出てくる。それを学生の立場に立ったサポートがどうあるべきか、個別実践としくみ作りと検討が要るのでは。
- キャリア担当者と障害学生支援担当者が一緒に話すこのような場は今まであまりなかったので、フリーディスカッションのほうが良かったかもしれない。しかし全体として、合理的配慮の理解、組織として対応すべきことがわかり良かった。