聴覚障害学生のニーズを活かした支援体制作り 3.各段階に応じた支援-(2)受動的依頼段階での支援-

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時おり、先ほどの消極的反応段階を素通りしてスムーズに支援に入っていける聴覚障害学生がいます。理由を尋ねると「友達もやっているから」という例が目立ちます。親の会やろう学校、聴覚障害学生組織で知り合った先輩や他大学の同級生が通訳をつけているから、自分も、というパターンは心理的に抵抗が少ないようです。大学に入るまでにこうした同じ聴覚障害の仲間との出会う機会が大切なことを再認識するときです。

支援例 3

数多くの聴覚障害学生が在籍するc大学。学内に聴覚障害学生のセルフヘルプグループがあり、毎週毎月ミーティングが持たれています。通訳について話し合う企画では手厳しい意見も飛び出しますが、さまざまな意見が交わされる中でそれが個人的な問題なのか、聴覚障害に共通した問題なのかが、整理されていく様子です。大学としても、定期的にセルフヘルプグループと話し合う場を持ち、支援に反映させるようにしています。

支援例 4

学内ボランティアセンターが中心となって聴覚障害学生支援に着手したd大学では、ノートテイクやパソコン通訳をつけてのサポートを進めています。外部から講師を招いての話し合いの席で、聴覚障害学生に近況を聞いたところ、「来年度からゼミが始まるんだ、どうしようかと思って・・・」とため息を漏らしています。「手話通訳は考えていない?」と水を向けたところ、「エッ、手話通訳つけられるの?!」と驚いています。結局、地域サポートセンターから手話通訳者を紹介してもらって、新たな支援が進んでいます。

学外のサポート団体の研修会に参加したり、逆に学外から講師を招いて勉強会を開いたりすると、異なる角度からの視点を得られることがあります。支援例4はその結果、聴覚障害学生の何気ないサインをキャッチして、より効果的なサポートができた例です。この段階では、聴覚障害学生から「○○してほしい」という声があがっていないから大丈夫、と安心しがちな時期ですが、通訳者から「この通訳で本当にいいのかどうか、本人の意見を聞きたい」という声も寄せられているのではないでしょうか。通訳者と本人とを交えて話し合う場を用意すると同時に、通訳者を交えずに話し合う、養成講座の中で実際のノートや通訳を見ながら「この方法はどう?」と具体的に聞くなど、聴覚障害学生の本音を引き出せるような工夫が随所に求められます。

また、支援例3のように、聴覚障害学生同士でサポートに関する意見交換する場が持てる大切さも強調しておきたいところです。大学生ならば、「全日本ろう学生懇談会」「関東聴覚障害学生懇談会」「宮城県聴覚障害学生の会」「日本福祉大学聴覚障害学生有志団体」「Wings(四国学院大学)」などの各団体で、ディスカッション、講演会、スキー、キャンプなどの企画が行なわれていますので、折をみて「こういう企画があるみたいよ」と伝えてもよいでしょう。

全国ろう学生懇談会とは?

全国のろう学生が集まって、交流や学生生活での問題についての話し合い等を行い、学生生活の向上を図っている団体で、関東と東海に支部があります。毎年開催される「全国ろう学生のつどい」では、学生生活についての情報交換や交流会が行われています。

全日本ろう学生懇談会のサイト

関東聴覚障害学生懇談会とは?

関東を中心とした聴覚障害学生の団体です。講義保障合宿や関東聴覚障害学生の集いなどのイベントを行っています。

関東聴覚障害学生懇談会のサイト

宮城県聴覚障害学生の会とは?

宮城県初の聴覚障害学生主体の市民活動団体です。高校・専門学校・短期大学・大学・大学院等の高等教育機関に在籍している聴覚障害学生等が集まって、交流会・夏合宿・研修セミナー等の企画を主催しています。

宮城県聴覚障害学生の会のサイト

講師:関東聴覚障害学生サポートセンター 吉川あゆみ氏(所属・肩書きは2006年度時点)

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