聴覚障害学生支援の流れ 4.支援体制の構築

聴覚障害学生への支援を進めていく上で最も重要なのが、支援に必要な体制を構築し、実際に運営をしていくことです。特に聴覚障害学生支援の中心を担う授業における情報保障は人員や予算が必要で、学内の関係部署の合意なしには進めることは困難です。たまたま担当となった職員1人がすべてを抱え込んでしまわないためにも、ある程度の組織体制構築を視野に入れて、支援を進めていくことが重要です。

聴覚障害学生支援のための組織の体制については、さまざまな例が存在しますが、ごく一般的には下の図ように示されます。担当部署の例としては、学生課・教務課の他に、ボランティアセンターや全学の学生生活支援センターなどで担当したり、新たに障害学生支援センター等の専門組織を立ち上げる大学も増加してきています。また、手話通訳や要約筆記等の資格を有する専任スタッフを学内に配置する取り組みも徐々に広がりつつあり、毎年数校ずつではありますが、確実にその数は増えてきているようです。

学内支援体制の例

学内支援体制の例

担当者に求められる業務内容

<コーディネート業務>

  • 聴覚障害学生との相談
  • 情報保障者の確保・養成
  • 教員への依頼・支援

<管理業務>

  • 運営組織体制の構築
  • 予算の確保
  • 学内連絡調整

このような支援体制は、本来障害学生の在籍の有無にかかわらず、どの大学でも備えておくべきものではありますが、実際には支援の必要な障害学生の入学がきっかけに徐々に整えられていくケースの方が多いようです。最近では、聴覚障害学生が入学した当時はまったく支援の体制がなかったけれど、4年間で徐々に体制を整え、卒業時には周囲の大学にもアドバイスができるほどの充実した体制が構築されたという大学の事例も頻繁に耳にするようになりました。

新しい制度を立ち上げ、運用していくまでにはたくさんの苦労もともなうものです。しかし、そうして作り上げた制度があることで、きっと今在籍している1人の学生のみでなく、今後何人もの聴覚障害学生が、貴大学を選んで入学し、充実した大学生活を送ってゆくことでしょう。さらに、これらの聴覚障害学生の周りには、たくさんの学生達が支援者としての技術を獲得して、もった学生を輩出していけることは、大学にとっても大きな魅力になるはずです。ぜひ、大学の財産として障害学生支援をとらえ、少しずつでも状況を改善していければと考えています。

講師:筑波技術大学障害者高等教育教育研究支援センター准教授 白澤麻弓氏

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