決められたテーマにそってより深くディスカッションをすることで、確実なコミュニケーションの重要性とグループで意見を一つにまとめていく際の方策について学びます。

これまでの活動よりも、内容がより複雑になるため、参加者ひとりひとりがディスカッションに参加し、確実に情報を取るとともに、皆にわかるように自分の意見を発表することが求められます。また、グループでのディスカッションをリードしたり、話し合った内容をホワイトボードにまとめるなど、積極的に議論を整理する姿勢も必要です

聴覚障害のある学生は、こうしたグループでの本格的な議論をとりまとめる経験が不足していることも多いので、バランスのとれたディスカッションができるよう互いにサポートしあえることを目指しています。

◎ねらい

  • グループでより複雑な内容について議論を行うことで、ひとりひとりが確実にコミュニケーションを取ることの重要性を学ぶ。
  • 自分の意見を積極的に述べるとともに、他の参加者の意見を聞き、グループでの話し合いに自分がどのように貢献できるかを考える。
  • ディスカッションを通して、異なる意見を持つ人々と対話し、一つの方向性を見いだしていくための議論の取りまとめ方を学習する。

◎時間

70分

◎役割及び人数

役割人数留意点
講師1名グループ活動の内容を把握しており、時間調整に慣れていることが望ましい。
アシスタント4名各グループについて、必要に応じたアドバイスを行う。
参加者20名程度4~5名ずつグループに分かれる。

◎方法

詳細は指導計画を参照

<ルール>

  1. 大嵐で豪華客船が沈没したという設定で、残った10人が最終的に全員生き残るための方法をグループごとに考え、発表する。場面設定は以下の通り。
     ・ 大海原で豪華客船が沈没した。
     ・ 生き残ったのは全部で10名で、2隻の救命ボートに分かれて乗っている。
     ・ 救命ボートはいずれも定員5名で2隻しかなく、1隻はエンジンが壊れていて走行できない。
     ・ エンジンの力は弱く、二つのボートをつなげてひっぱることはできない。
     ・ そのため10名のうち5名がエンジン付のボートを使って陸を探し、助けを求めに行く。
     ・ 生き残った10名のプロフィールは使用教材の通り。
     ・ 全員が生き残るためには、誰がエンジン付のボートに乗るとよいか?
  2. グループでの話し合い時間は40分。ワークシートやホワイトボート等を用いて、全員が話し合いに参加できるよう工夫する。
  3. 発表は各5分。複数名で協力しながら行い、参加者全員がわかるように伝える。

<進め方>

  1. 体育館などの広いスペースに集まり、進行方法を確認する。この際、場面設定が十分イメージできるよう、講師がサインマイム※などを用いて状況を伝えるとよい。
  2. 各グループでは、与えられた場面設定に基づき、誰がエンジン付のボートに乗るか?誰がエンジンの壊れたボートに乗って助けを待つか?を話し合う。
  3. 話し合いには必ず全員が参加するものとし、それぞれホワイトボードを使いながら話し合った内容をまとめる。
  4. 終了後、グループごとに話し合いの結果とそのように考えた理由を発表する。
  5. 講師・アシスタントは発表内容を聞き、最後にどのグループの内容が最も説得力があったかを評価する。

※サインマイム:手話とパントマイムを組み合わせた表現。手話を利用する「ろう者」の芸術として親しまれており、「ろう文化」の代表的な例でもある。

◎留意事項

  • 場所は、体育館ないし50名以上入れる教室・講堂(床が平面)で実施するのが望ましい。
  • ホワイトボードは、それぞれ向かい合うように配置し、グループでの話し合い時には背面側を使用することで、互いに他グループの内容を気にせず、話し合いに集中できるよう留意する。
  • 発表時には、ホワイトボードを内側に向け、全員が内容を見られるように工夫する。
  • ホワイトボード用マーカーは黒だけでなく、赤色、緑色、青色などいくつかの色を用意しておきたい。
  • 講師・アシスタントはコミュニケーション面で取り残される学生がいないかどうかを注意深く見守り、その場に参加できていない学生がいる場合には、どうしたらよいかグループで考えさせるよう支援する。

指導計画

実際の研修会で利用できる指導計画案を掲載しています。ご自身の大学の状況に合わせて、適宜アレンジしてご利用下さい。

PDFファイルのダウンロード

教室配置

教室配置図。内容は留意事項を参照のこと。

留意事項

<グループディスカッション時>
ホワイトボード4台をそれぞれ向かい合うように配置し、それぞれ背面側に各グループが集まる形とする。これにより、他のグループの目を気にせずに話し合いに集中できる。

<発表時>
ホワイトボードの記入面を内側に向け、全員が輪の中に入る。このとき、全員がホワイトボードの内容と発表者の様子を見られるよう配置を工夫する。

準備する教材・設備等

  • ホワイトボード(グループ数分)
  • ワークシート(人数分)
  • 筆記用具(人数分)
  • 筆談機器(必要な数)

情報保障

講師が直接手話や文字を用いて参加者に情報を伝える。グループ内のディスカッションでは、互いのコミュニケーション状況に配慮し、全員が参加できる方法で話し合いを進めるよう伝える。

ルール

  1. 大嵐で豪華客船が沈没したという設定で、残った10人が最終的に全員生き残るための方法をグループごとに考え、発表する。場面設定は以下の通り。
    ・大海原で豪華客船が沈没した。
    ・生き残ったのは全部で10名で、2隻の救命ボートに分かれて乗っている。
    ・救命ボートはいずれも定員5名で2隻しかなく、1隻はエンジンが壊れていて走行できない。
    ・エンジンの力は弱く、二つのボートをつなげてひっぱることはできない。
    ・そのため10名のうち5名がエンジン付のボートを使って陸を探し、助けを求めに行く。
    ・生き残った10名のプロフィールは資料の通り。
    ・全員が生き残るためには、誰がエンジン付のボートに乗るとよいか?
  2. グループでの話し合い時間は40分。ワークシートやホワイトボート等を用いて、全員が話し合いに参加できるよう工夫する。
  3. 発表は各5分。複数名で協力しながら行い、参加者全員がわかるように伝える。

進行・展開

  1. 主旨説明(5分)
    講師は、スライド資料を提示して全体の流れを説明する。(サインマイム提示)
  2. グループディスカッション(40分)
    グループごとに分かれ、ワークシートを用いて情報共有を行うとともに、グループとしての意見をまとめて、ホワイトボードに記入する。この際、ホワイトボードを筆談に活用してもよい。話し合いがまとまったら、全体発表時の発表方法を考える。
  3. 発表・まとめ(25分)
    グループごとに発表を行う。それぞれの持ち時間は5分。講師とアシスタントは発表を見て、どこが説得力があったかを評価する。

<留意事項>

講師・アシスタントはコミュニケーション面で取り残される学生がいないかどうかを注意深く見守り、その場に参加できていない学生がいる場合には、どうしたらよいかグループで考えさせるよう支援する。

指導教材資料

  • スライド資料
  • 生き残った人リスト情報収集シート(ワークシート)
  • ワークシート

指導教材

実際の研修会などで使用可能な教材を掲載しています。ダウンロードの上ご使用ください。

プレゼンテーション資料

説明時に講師が用いたスライドの例

スライドサムネイル画像

情報収集シート

ディスカッションのもとになる生存者リスト。人数分用意して全員に配布。

資料サムネイル画像

ワークシート

話し合いの結果をまとめるシート。グループに一枚配布。

資料サムネイル画像

教材作成:大杉豊氏(筑波技術大学 障害学生高等教育研究支援センター)

※本教材の著作権はPEPNet-Japanに帰属しています。研修会等で編集の上ご利用いただくことは可能ですが、クレジット表記などは変更しないようお願いします。
※教材を使用される場合には、必ずこちらの「教材の使用方法」をお読みの上、注意に従ってご利用ください。

→ サバイバル!「救命ボート」/実践例へ

ページ上部へ