お役立ち情報検索

2025.05.29

5.軽度・中等度難聴学生の困りごとの背景に寄り添う:解説編①

1~2の事例では、志磨村さんと学生の対話の中で出てきた内容を中心に見ていきました。
ここでは、よくご相談をいただく困難場面や困りごとから、支援担当教職員にはどのような対応が求められるかを、PEPNet-Japan事務局から志磨村さんにお伺いした内容をもとに構成しています。
軽度・中等度難聴学生の「困りごとの背景」について、理解を深めていきたいと思います。


なお、このページは日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)オンラインミニ企画「難聴学生の困り感に寄り添う・理解する」(2023年12月8日実施)で実施した内容をもとに構成しています。

【事例1】補聴器装用学生の困りごと

困っている学生のアイコン

補聴器を使って授業に参加しているが、先生の声以外の発話が聞き取れなくて困っています。(80dB、学部1年生)

志磨村/80dBぐらいの聴力の学生だと、頑張って聞いちゃうんですよね。一番前の席に座って、支援を使わずに先生の話をすごく頑張って聞いちゃう。
でも、教室が大きくなれば聞こえにくくなるし、周りの学生達の発言も分からないという困りごとがあるはずです。
私が担当者なら、まず「なんで支援を使わないのかな?」と思いますね。もし支援を使うことに抵抗があるんだったら、そこを丁寧に聞き出して、寄り添わなきゃいけないなと思います。

私が接していた中にも、同じくらい(80dB)の聴力で「支援を使うのは嫌だ」と言っていた学生がいました。よく話を聞いてみると、「隣に支援者が座るのが嫌なんだ」という理由を引き出すことができたんです。
今は遠隔でのパソコンノートテイクもできるようになってきていますので、「支援者が横にいなくても文字通訳は使えるよ」と伝えたら、「じゃあ試しに使ってみよう」ということになり、遠隔でパソコンノートテイクの文字を届けました。
その支援を体験した後、「授業がとても良く分かりました!」という感想が届きました。
その学生はその時点で学部4年生だったんです。それまでの3年間、諦めたこともたくさんあったんだろうと思います。
でも、もし支援を使いたくないという背景に寄り添えなかったら、その学生は何も分からないまま大学を卒業してしまっただろうと思うんですよね。なので、最後の1年間だけでも、「こんな方法があるよ」と提示できてよかったと思います。

やはり先生の話だけなら何とか聞こえているとなると、支援を使うという方向には行かずに、自分の力で頑張ってしまいがちです。支援者を入れること・支援を使うことに前向きではない学生には、背景を丁寧に聞きとったり、その学生が無理なく使える方法はないか考えるなど、一番時間をかけて向き合っていく必要があると考えています。

事務局/今のところで1つ教えてください。
試しに支援者を入れてみたけれど「あんまり良くなかったな」とか、「やっぱり支援を使うのは嫌だな」という感想が聞かれた場合、「わかった。じゃあ支援を入れるのはやめようね」という関わりで良いのでしょうか?
そうではなく、あの手この手を使って支援に繋がるように働きかけたほうがいいのでしょうか?

志磨村/私なら「嫌だな」と思っている理由をまず聞きますね。
例えば、「思ったほど文字情報がなかった」というなら、極力センスがよくて上手な支援者に入ってもらいます。良い支援を知らない状態で「ああ、こんなものか」と思われてしまったら、その学生には”良い支援”を経験する機会がなくなってしまう。1回は良い支援を使ってみてもらいたい。隣に支援者がいるのが嫌なら遠隔支援にするとかを提案しながら、とことん向き合って「嫌だな」を掘り下げますね。そうでないとずっと授業が分からないまま過ごしてしまうから。

「分からない状況で授業を受け続けるはしんどいな…」ということは学生たち自身も分かっているんです。さまざまな気持ちのせめぎ合いの中で「支援を使うのはやめておこう」となってしまうなら、やっぱりその”しんどさ”にとことん付き合って、一緒に考えられる存在でありたいです。
でもすぐに解決できるものではないんですよね。大学1年から4年まで付き合って、最後の最後に変わるということもありますので、「支援はいらないです」と言われても、グイグイはいやだけど、ほどよく距離を保ちながら、その学生との関係を持ち続けてもらえたらと思っています。

事務局/ありがとうございます。そうですね、親のように毎日毎日「今日、どうなの?」「困っていることない?」と尋ねるのではなく、折に触れて「最近どう?」と声をかけ続けられる関係を続け、何かある時には引き出せる、何か出た時はこぼさず拾えるような関係を築いておくことですかね。

志磨村/けっこう支援者(ノートテイカー)からの情報も有効なんですよ。本人ではなくて、支援者から見てどうなのか。支援担当教職員も全部の授業には入れないので、支援者や授業担当教員などいろんな方面からの情報を得て、状況を把握しようとする姿勢は大事だと思います。

アイコン 支援担当教職員の方
アイコン 学生のみなさん

【事例2】難聴学生への支援

困っている教職員アイコン

聞こえているから大丈夫!何も支援はいりません!と言う学生(学部1年生)。
面談室での会話では確かに聞こえているように感じられるような学生の場合、支援室として必要な関わり方は?(支援担当教職員からの相談)

志磨村/いるいる、こういう子います。あるあるです。
1~2年生だと授業形態も一方的な座学の形式が多く、授業中も騒がしい音も入ってこないので、「大丈夫・いける!」と本人も思っている。だけれど、確実に困る瞬間が出てきます。

こういう学生の場合「困った」と言ってくるまで待ちます。
支援担当教職員が全てを先回りして整えるのではなく、「困った、聞こえない、どうしよう?!」という瞬間を学生自身に感じてもらうことも、意図的にやらなければけないと思っています。
3年生頃からゼミが始まり、「ディスカッションが分からない!」とか、就職活動が始まったらしんどかった、ということを、ぼそぼそ言ってくるんですね。それを言い出せる関係性を保っておく必要があるんですよ。確実に「分からない、困った!」という状況を本人が体験する・気がつくまで、こちらは待つということも時には必要だと思います。歯痒いけれどね。
「困った」と言ってきたときに適切にアドバイスできるよう、状況を把握したり、提供できる支援の選択肢を持っていないといけない。「聞こえるから大丈夫」とは絶対に言えないような、絶対に”困る瞬間”が来るまで様子を見ながら待つ、というのも選択肢の1つだと思います。

事務局/そうですよね、自分で困った経験や困っている実感がないと、覚悟を持って、納得して支援を使うというところに至らないだろうと思います。
ただ、支援担当教職員の中には、「本人から支援を求めてこないので特に何も支援をしなくてもいいのだ」と受け止めている現場もあるのでは?と思っているのですが。

志磨村/学生がそもそも知らないんですよね。意思表明したいとか、したくないとかの前に、自分は何をしてもらえるのか、そもそもどういう支援があるのかを知らない学生もたくさんいます。
高校までどう過ごしてきたのか、支援を使った経験があるのかなど、大学に入る前の過程も丁寧にヒアリングしないといけないと思います。
高校までは支援を使ったことがない学生も結構多いので、そういう子たちは意思表明できないのが当たり前なんです。「こういう文字で伝える支援があるんだよ、どうかな?」と提案しても、高校までロジャーや補聴器で頑張って聞いてきた学生は「うーん、必要ないかな…」という反応が返ってくるかもしれません。だけれども、文字での支援は必要ないのなら、と関係を絶っては欲しくないです。無理なくその学生が使えるところから始めるのが1つ。学生の状況を丁寧に、深く見ていかないと、意思表明をしないのか、できないのか、そもそも分からないのか、見立てられないと思います。

事務局/すごく大事なところだと思います。自分が受けられる・利用できる選択肢も分からない状態で大学に入っていたとしたら、今までの授業の受け方で何の問題もないと思ってしまいますよね。
志磨村さんのご経験のように大学入学をきっかけに「そういう支援があるんだ」、「必要かどうかは分からないけれども、どんなものか試しに使ってみよう」、というような入り口を準備できるかどうかも大事なのかなと思いました。

アイコン 支援担当教職員の方
アイコン 学生のみなさん

【事例3】周囲に聞こえにくさを開示することへの抵抗

困っている教職員アイコン

聞こえに困難があり、サポートが必要であると本人(45dBの軽度難聴学生)も感じている。
でも「聞こえにくいことを周囲に開示したくない」、と言っている。
支援室としてどう対応したら良い?(支援担当教職員からの相談)

志磨村/まず、どうして開示したくないか、そこは無視しちゃいけないですよね。どの範囲までだったら言っていいとか、誰までなら言っていいなど、もしかしたら本人の中で線引きがあるかもしれません。
まずは「なぜ開示したくないのか」、「どこまでだったら開示してもいいのか」は、丁寧に聞いてあげる必要があると思います。
もちろん、支援を使う以上は、ある程度自分の障害状況などを開示しないと、必要な支援は受けられませんので、ゆくゆくは本人にもそれを分かってもらう必要はあります。最初から「同じクラスや、一緒に授業を受けるみんなに開示しなきゃね」とグイグイいくと絶対に嫌がられるので、まずは周囲に開示しなくても無理なく使える方法がないかを考えます。
例えば、支援者が一緒にいることで、周りの学生から「あ、聞こえない学生なのかな?」と見られるのが嫌だと思っているのであれば、遠隔で使える支援方法を提案してみる。ただ、遠隔で支援を行う場合にも授業担当教員にはあらかじめ説明が必要になるので、「この授業の先生には支援室から説明していいかな?」など、本人に丁寧に確認を取りながら進めて欲しいですね。
「もう嫌だ!」とシャッターを下ろされてしまったら終わりなので、本人の気持ちに寄り添いつつ、でも筋を通さなければいけないところはきちんと伝えます。

実際には、周りの協力を仰がずに文字支援をしてもうまくいきません。私の体験ですが、授業に支援者が2人付いて参加していた時のことです。グループワークが始まった時に「文字の支援があるから大丈夫だろう」と思っていて、私からグループの学生には何も説明をしませんでした。
同じグループの学生も「変な3人組だな」と思ったでしょうが、いつも通りの音声だけでのディスカッションをしちゃうわけですよ。
結局支援者があたふたして、うまくノートテイクができないまま終わってしまった、ということがあります。支援を上手に使うためには周りの協力も欠かせません。「支援があるから大丈夫」ではないし、一緒になったグループの学生に、「私はちょっと聞こえにくいからパソコン通訳を使ってるんだ。いっぺんに話されると困るから一人ずつ話してね。」とか、最低限開示しなくてはいけない場面はあります。
そういうことも、ゆくゆくは学生自身に分かってもらわないといけないことだと思います。

でも開示したくない気持ちはよく分かるので、まずはそこを丁寧に聞いてもらいたいなと思います。

事務局/そうですよね。志磨村さんの経験で、「聞こえにくいんです」とあえて開示しなかったことでデメリットがあったことと、開示したことでメリットがあったこと、どちらのほうが多いですか?

志磨村/それは後者の開示してメリットがあったほうですね。
たぶん開示したくない状況っていうのは、基本的に学生本人がとてもしんどい状況にいるんだと思うんです。「言ったらマイナスの評価をみんなにされてしまうんじゃないか」と思っていたり。そう考えてしまうってあまりいい状況ではないですよね。

私も高校を卒業するまでは同級生に難聴のことを言わないで過ごしてきたので、開示しないで過ごすのはどれだけしんどいか、とてもよく分かります。
でも周りに伝えたことで理解してもらって、コミュニケーションを楽しくとることができるようになりました。その意味では、誰に対しても100%の開示をするべきってことではなくて、「こういう時にはこれくらい伝えておかなきゃいけないんだな」、という差し引きを自分の中でしながら、適切な開示をして、適切な配慮を使うほうが、生きやすくなりました。

事務局/おそらく3~4年生になって、就職活動を始めた頃に社会に出て働くことに直面して、またこうした課題にぶつかるのかなと思います。

アイコン 支援担当教職員の方
アイコン 学生のみなさん

【事例4】 補聴援助システムをうまく使えない

困っている教職員アイコン

・補聴援助システムを使うと逆にうるさい、と学生から相談された。
・雑音のほうが大きく入ってしまい、聞きたい音が拾えないと相談された。
→補聴援助システムを使うと明瞭に聞き取れるんじゃないの?(支援担当教職員からの相談)

事務局/補聴援助機器の中で、教育機関で多く使われている「ロジャー」の仕組みについて、説明してもらえますか?

志磨村/まず、補聴援助システムがどういう時に効果を発揮するかを説明しますね。
その人の聞こえの活用度合いによるのが前提条件ですが、話者との距離が遠くなった時に、話者の声をより大きくクリアに入れることが出来るというのがメリットです。もう1つは、周りが騒がしかったり、ざわざわしている環境の中でも、マイクを持っている人の話している声をピンポイントでクリアに拾って届けるというのが補聴援助システムの役割です。もちろん、それも音を大きくして伝えるだけで、言葉を明瞭にするという機能はありません。その限界も分かった上で使う、それが大前提かなと思います。

事務局/ありがとうございます。マイクを持った人の声を明瞭に聞き取って補聴器に大きな音で届ける、けれども、その人がどう受け取るか、どう聞き取っているのか、という部分で聞こえにくさを感じていない人の聞こえ方とは違う部分があることが大前提のシステムということですね。
ロジャーなどの補聴援助システムを環境整備として導入している大学も増えていますし、高校までに利用したことのある支援として補聴援助を使っていましたという話もよく聞かれると思います。その補聴援助が、大学の授業ではうまく使えないというご相談もいただきます。活用のポイントを教えてください。

志磨村/まず何事も環境調整です。質問にある「うるさい」というのは、話者と学生との距離が近すぎるのではと推測します。ロジャーは機種によってはボリューム調整ができるはずなので、ボリュームを絞ったらどうなるか試して欲しいですね。
でも「うるさい」ということなら、少なくともこの場面では補聴援助のメリットを感じていないですよね。なんでうるさいんだろう、ということも気になるけれど、ぜひメリットを感じる使い方を教えてあげたいですね。
話者との距離が近すぎるのなら、ちょっとだけ後ろの席に座ってみない?と勧めてみると思います。また、特徴を伝える意味でも「先生の声だけが良く聞こえるんじゃない?」と伝えてみますね。
補聴器だけで聞き取るのが難しいシチュエーションで聴援助システムを使ったら、「あ、聞こえるぞ!」と感じられるような使い方を教えてあげたいというのが1つ目に対する回答ですね。

2つ目の聞きたい音が拾えないのは、確かに大教室でグループディスカッションをやるとなったら、まぁうるさいです。まわりのグループの話し声・雑音も拾ってしまいます。
例えば机に置くタイプのものと、手に持って使うタイプなら、手に持って使うほうが話者の声がわりとクリアに入ります。今はマイクの機能に指向性(補足:特定の方向の音を優先的に拾う機能)もついているので、ディスカッションの時には発言の交通整理をする進行役を置きつつ、話す人にマイクを持ってもらうと良いと思います。
それでもうるさくて発言が聞き取れないのなら、ディスカッションをする時に場所を変えることを考えたいですね。雑音を全部カットすることはできないので、「ディスカッションの時だけ静かな所に移っていいですか?」と先生に相談するのも1つですし、効果的に使うために環境をどう整えるかは、もう少し考える余地があるかなと思います。

私自身も屋外でロジャーを使ってみたことがあるのですが、すごく風の強い日で、風の音しか聞こえなくて全然声を拾えなかったことがありました。補聴援助システムを使ってもしんどい場面を自分の中で蓄積していくと、より良い使い方の選択肢が自分の中で生まれてくるんじゃないかなと思います。

事務局/マイクを使ってる人の話し方だけでなく、どういう環境の音が入ってくるのかという「マイクの周りにある音環境」までは、学生さんも気がついていないと思います。「なるほど、こういう時は使えないんだな」という事例も自分の中で増やしておかないと、こういう時は使える・使えないの選択もできないですよね。
他には、ざわざわするとか、ガサガサ音がするとか、声以外の音もけっこう入るシステムなんですか?

志磨村/入ります。ピンマイクのタイプだと、先生が手持ちぶさたで何となくマイクをイジイジしてたら、ガサガサ音がずっと入ります。
マイクで拾っている音が聞いている私以外にはフィードバックされないので、無音だと思ってイジイジしたり、マイクの上にバサッと資料を置かれて、急にうるさいっ!となることもあります。
そのこともマイクを使っている人にフィードバックする必要があります。「先生、こうやると結構ざわざわと音が聞こえます」とか、「空調を強くしたから風の音が入って邪魔になるな」というのを、私は今でも周りの人にフィードバックしてます。じゃないと分からないままになりますから。

事務局/使う人も含めての環境調整ですね。重要なことだと思います。
ちなみに、補聴援助を使うと逆にうるさいと学生さんからご相談があった時に、「ボリューム調整ができるけどやってる?」と聞いたら、「面倒だから調整してません!」と言っていて。それではダメですよね。与えられたからそのまま機器を使っていくだけじゃなくて、自分が使いこなすためのスキルを、聞こえない学生さん自身にも身に付けてもらわないといけないですね。

アイコン 支援担当教職員の方
アイコン 学生のみなさん

【事例5】 補聴援助用マイクの組み合わせ

困っている学生のアイコン

補聴援助システムを複数台組み合わせてディスカッションに参加しているが、どうしても聞こえない場所があって困っている。
また、マイクがうまく繋がらない時がある。(50dB、大学院生)

事務局/補聴援助用マイクを1台だけ使っている場合には、そのマイクを持っている人の音声しか聞こえません。教室後方の発言や、ゼミなどで複数人のディスカッションをする時に全員の声が拾えるように、補聴援助用のマイクを複数台組み合わせているんですね。それでも、どうしても聞こえない場所がある、またはマイクがうまく繋がらない、という場合には、どう問題点を整理して考えたらいいですか?

志磨村/私自身も複数台マイクを組み合わせて使うことはあります。1台のマイクを回して使ってもらうのは、渡す手間を考えると申し訳ないなと思うし、参加している人もついマイクの存在を忘れちゃうんですよね。
マイクを持っていないなって気づいたときに「すいません、マイク持って下さい」と伝えるのも、利用しているほうも気持ち的にすり減るものがあります。そのため、2人の間に1台ずつパスアラウンドマイクを置いてみたこともあります。この方法でも、そこそこ音声を拾えるんだなということも、試行錯誤して分かったことです。
話す人にもなるべく負担にならないように、持たなくても快適に使うためにはどうしたらいいか、と考えると、やっぱり複数台置いて使いたくなります。ただし、複雑な仕組みになればなるほど、事前にうまくできるかの確認は必要だと思います。特にロジャーと音声認識アプリの併用なども、「えいっ」といきなり本番で使うのではなく、事前に何回も練習して、うまくいくかを確認してから使うのが1つ大事なことですね。
練習をしてうまくできることが確認できていると、参加する時の安心材料になります。

あとは、全部1人でやらなきゃと思うと非常にしんどいので、仲間を増やすというのは大事だと思っています。話す人がマイクを持っていないことに気づいたら、「持って下さい」と言ってくれる人が自分以外に1人でも増えると、気持ちが楽になります。
そういう意味でも仲間になってくれそうな人、協力してくれそうな人を増やして欲しいです。みんなで「たくさん繋げてみたらうまくいくかな?」と試すのも大事だと思うし、うまくいかなかったら「こうしたらどうだろう?」と一緒に考えてくれる人がいたら、もっと心強いと思っています。何でもかんでも全部1人でやろうとするとしんどいよ…というのは、当事者目線のお話ですね。

事務局/自分が使うものだから自分だけで何とかしなきゃいけない、と思いがちな学生さんは多いですよね。それよりも、みんなの力を借りて、助けてもらいながらやろうよ、という発想になるといいなと思います。
相談のあった事例では、20~30人が参加するゼミのディスカッション場面で、近距離対応型のマイクを7~8台接続して使っていたんですね。
この近距離対応型マイクも、縦状態だったら音を拾えるけれど、マイクを横に寝かせてしまうと、横になった1台だけが音を拾うことになります。
微妙な操作の違いによる集音の異なりがあることも、事前にテストをして把握しておかないと、どう使いこなせば良いのかが分からないままだと思います。
うまくいかない場合にはどうしたらいいのかも確認をした上で本番の運用を迎える、というプロセスを経て使っていく必要があるなと思っています。
うまく機材を構成できれば非常にスムーズに使えますが、参加しているメンバーで集音ができなくなった時の原因を一緒に探しながら、協力してうまく使える形を構成できるといいですね。あと、「マイク持ってないよ」と一緒に言ってくれる人も大切ですね。

志磨村/補聴援助システムを使っている時には、本人にどう音が入っているのかは周りの人たちは分からないんです。使っている側からフィードバックをしないと、上手く使えているのかどうかが伝わらない。つい「自分しか分からないから我慢しよう」とか、「自分だけで解決しよう」と思ってしまうけれど、それではダメで。当事者として周りにきちんとフィードバックをしないといけないし、支援担当教職員も「特に何も言ってこないから大丈夫だろう」と思うのではなく、様子を丁寧に聞いてあげると良いのかなと思いました。

事務局/周りの人には音のフィードバックがない、そうですよね。教室のスピーカーのように聞こえてはこないから、周りの人たちには分かりにくい。一緒に参加しているメンバーからも声をかけて様子を確認しながら使うなど、フィードバックを伝えやすい環境にしていくことも大事ですね。

アイコン 支援担当教職員の方
アイコン 学生のみなさん