第1回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム

2005年10月8日筑波技術大学に於いて、第1回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウムを開催いたしました。当日はアメリカロチェスター工科大学副学長T. Alan Hurwitz氏、同じくロチェスター工科大学NTID内PEN-International(聴覚障害者のための国際大学連合)代表James J. DeCaro氏らを含め、聴覚障害学生支援に携わる大学教職員、聴覚障害学生、情報保障者など総勢約160名の方々にご参加いただき、大変盛況な会となりました。


シンポジウムは午前と午後の2部構成で実施しました。午前中は「聴覚障害学生」「大学教職員」「情報保障者」の3つの分科会において、聴覚障害学生のニーズに基づく情報保障のあり方に関する活発な議論を行いました。続く午後の全体会では、PEPNet-Japan事務局の白澤より、PEPNet-Japan設立趣旨説明を行った後、James J. DeCaro氏による、ロチェスター工科大学における聴覚障害学生支援についての講演を行いました。ここでは高等教育機関において聴覚障害学生が彼らのもつ力を最大限発揮するために、より質の高い専門的支援サービスの提供が不可欠であることが強調されていました。引き続き実施したパネルディスカッションでは、「次世代型情報保障を求めて―利用者から発信する情報保障のあり方―」というテーマに基づき、今後の情報保障のあり方について討議を行い、情報保障における量と質の確保はもちろん、今後は聴覚障害学生自身が情報保障ユーザーとして支援サービスを使いこなしていくため、彼らに対するエンパワメントを視野に入れた支援体制構築の必要性について問題提起をすることができました。


当日は手話通訳・パソコン要約筆記といった従来の情報保障に加え、開会式では分科会会場間を結んだ遠隔地情報保障システムも利用し、活発な議論とあいまって今後の情報保障のあり方について様々な角度から掘り下げるシンポジウムとなったのではないかと思います。当ネットワークでは昨年10月の設立以来、多くの方々のご支援ご協力をいただきながら活動を続けて参りました。このようなシンポジウムが開催できたのも、そうした方々1人1人のお力添えによるものと感謝しております。当日ご参加いただいた皆様をはじめ、これまで我々の活動を支えてくださったすべての方々に改めてお礼を申し上げるとともに、シンポジウムにて得られた成果をここに報告させていただきます。


2005年10月吉日
日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)事務局
白澤 麻弓

シンポジウムの様子1
シンポジウムの様子2
シンポジウムの様子3
シンポジウムの様子4

開催要項

期 日: 2005年10月8日

会 場: 筑波技術大学 天久保キャンパス

内 容:
 第1部 分科会
 第2部 PEPNet-Japan設立主旨説明、講演会、パネルディスカッション

主 催:
 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)
 国立大学法人 筑波技術大学

実行委員:
 筑波技術大学教職員・連携大学教職員他(25名)
根本匡文・小林正幸・石原保志・三好茂樹・中瀬浩一・河野純大・白澤麻弓(筑波技術大学)、  松崎丈 (宮城県・仙台市情報保障支援センター)、倉谷慶子・吉川あゆみ・中島亜紀子・清水里奈(関東聴覚障害学生サポートセンター)、広瀬洋子・大倉孝昭(メディア教育開発センター)、  金澤貴之(群馬大学)、伊藤聡知(東京大学)、太田晴康(静岡福祉大学)、都築繁幸(愛知教育大学)、岩田吉生(愛知教育大学)、大泉溥(日本福祉大学)、土橋恵美子(同志社大学)、田中芳則(広島大学)、高橋信雄・原田美藤(愛媛大学)、太田富雄(福岡教育大学)
事務局補佐員/高山亨太、有海順子

この事業は日本財団の助成によるPEN-International(本部:ロチェスター工科大学 NTID内)の一部です。

当日の様子

【第1部】 10:00~11:45

【開会式】司会:根本匡文(筑波技術大学)

挨拶 筑波技術大学長 大沼直紀

祝辞 アメリカロチェスター工科大学副学長・国立聾工科大学(NTID)学部長T. Alan Hurwitz氏

開会式の様子1
開会式の様子2
開会式の様子3

開会式の様子。筑波技術大学コミュニケーション支援研究グループ(代表:内藤一郎教授)の開発による遠隔地情報保障システムを用い、分科会が行われている3会場と手話通訳スタジオを結んで開会式を実施。

【分科会】

聴覚障害学生分科会 司会:松崎丈氏(宮城県・仙台市聴覚障害学生情報保障支援センター)
「聴覚障害学生のエンパワメント ―被通訳者からユーザーへの転換―」

討論の柱

  1. 現行の高等教育支援における聴覚障害学生の実態
  2. 聴覚障害学生から情報保障の質をどう高めていくのか?
    「情報保障ユーザーとしてのニーズをいかに示すか?」
    話題提供者 菊池真里氏 (群馬大学)
    「聴覚障害学生集団と情報保障」
    話題提供者 廣瀬浩幸氏 (関東聴覚障害学生懇談会)
  3. 今後の情報保障に向けて聴覚障害学生がやれることは?

情報保障者分科会  司会:中島亜紀子氏(関東聴覚障害学生サポートセンター)
「大学における情報保障の専門性 ―手話通訳・ノートテイク・PC通訳―」

 討論の柱

  1. 聴覚障害学生の増加、多様化の中で変化してきた情報保障ニーズ
  2. 現場での実践から
    「聴覚障害学生のニーズに応じた通訳養成の取り組み」
    話題提供者 前田有紀氏 (愛媛大学)
    「講義における情報保障者養成の試み」 
    話題提供者 田中芳則氏 (広島大学)
  3. ニーズの多様化に応じるために
    ・情報保障の技術向上に向けて、必要な技術とは、研修の持ち方
    ・学生、教職員、情報保障者の連携体制、チームとして情報保障にあたる体制
    ・情報保障におけるルールの共有(個別への対応と一般化された基準の遵守)
聴覚障害学生分科会の様子
大学教職員分科会の様子
情報保障者分科会の様子

各分科会会場の様子。左から聴覚障害学生分科会、大学教職員分科会、情報保障者分科会。いずれも「聴覚障害学生のニーズに立脚した支援」を柱に現在行っている支援からもう一段階踏み込んだ支援へと発展させるための方法について討議を行った。

【第2部】 13:00~17:00

【全体会】 司会:根本匡文(筑波技術大学)

13:00~13:30

  • PEPNet-Japan設立趣旨説明
  • 白澤麻弓(筑波技術大学・日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan))

13:30~14:45

  • 講演会 「ロチェスター工科大学における聴覚障害学生支援」
  • James J. DeCaro氏(国立聾工科大学(NTID) PEN-International)

15:00~17:00

  • パネルディスカッション
     「次世代型情報保障を求めて―利用者から発信する情報保障のあり方―」
  • 司会:河野純大(筑波技術大学)
  • パネラー:
    下島恭子氏(群馬大学大学院)
    太田晴康氏(静岡福祉大学)
    土橋恵美子氏(同志社大学学生支援センター)
    松崎丈氏(宮城県・仙台市聴覚障害学生情報保障支援センター)
  • 指定討論:吉川あゆみ氏(関東聴覚障害学生サポートセンター)

PEPNet-Japan設立主旨説明の様子
James J. DeCaro氏講演会の様子
パネルディスカッションの様子

全体会の様子。左からPEPNet-Japan設立主旨説明、James J. DeCaro氏講演会、パネルディスカッション。講堂を埋め尽くす160名以上の参加者とともに、今後わが国において目指すべき聴覚障害学生支援のあり方について討議が行われた。

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