その2 語学の授業における情報保障

語学の授業における情報保障は支援する側にとっては対応が難しいことが多くあります。

ここでは、語学の授業における情報保障について、様々な工夫を掲載していますので参考にしてください。
ちょっとした工夫で、状況が改善されるかもしれません。

挿絵:先生

教員との連携

  • 教員との事前打ち合わせ
  • 教員からの配慮
  • 授業(担当教員)の変更
  • 英文の配慮依頼文書

支援者の募集・派遣に関する工夫

  • 支援学生の履修経験を確認
  • 国際系学部の学生に呼びかけ
  • 「英語の授業」をアピールした募集
  • 留学生の多い大学にPR

教員との連携

特に語学の授業において必要な連携のあり方について、工夫事例をご紹介します。

教員との事前打ち合わせ

語学の授業と言っても、文法やライティングを主としたもの、コミュニケーション重視のもの・・・とその方法は様々です。授業の進め方によって、支援の方法が違いますので、担当教員に事前に確認が必要です。
また、情報保障の手段や、発音練習がある場合どうするか、などについて、聴覚障害学生の希望を聞くことも大切です。それによっても支援の仕方が変わってきます。
ですから、事前に教員と聴覚障害学生、そして支援担当職員で打ち合わせをしておく必要があります。
打ち合わせでは、以下の内容について話し合っておきましょう。

  • 授業の進め方の確認
  • 教員の配慮としてどんなことが必要かを検討
  • 情報保障に工夫が必要となる場面・状況を把握
    →状況に適した情報保障手段、支援方法の検討

事前に決めた方法が有効かどうかは、始まってみないとわからないものです。授業が始まってからも、打ち合わせの機会を設けるようにしましょう。

<TipSheet「学期初めのコーディネート」より一部引用>

教員の役割

どの授業でも言えることですが、支援者の努力だけでは十分に情報保障を行うことはできません。うまく情報保障ができない時、教員と支援者で役割を分担することによって、スムーズに行なえることがあります。

教員との事前打ち合わせでも記述しましたが、必要な配慮は授業方法によって様々です。いくつかの例を以下に挙げますので参考にしてください。
(あくまで例ですので、「この対応が必ず必要」というわけではありません)

イラスト:英語の授業

例:音声教材を使用する場合
→ 視覚的な教材を用意する(文字起こしなど)
→ 補聴システム(例:FM補聴器、磁気ループ)や聞き取りやすい環境を整える
(補聴システムが有効な聴覚障害学生の場合)補聴援助システムについてはTipSheet「補聴援助システム」をご参照ください。

例:プリントの解説が中心の場合
→ 支援者に必ずプリントを渡す(書き込んで使用するため)
→ プリントをOHCやプロジェクターでホワイトボードに投影し、教員が読み上げる箇所を示したり、説明をホワイトボードに記入していくと、プリントの該当箇所がよくわかり、聞こえない学生だけでなく全ての学生にとってわかりやすくなります

例:外国語と日本語の説明が入り混じる場合
→ 外国語での発話は教員ができるだけ板書するか、あらかじめ文字資料を用意しておきます。日本語での説明は支援者が通訳します。
→ その外国語が得意な支援者が外国語部分を担当、もう1人の支援者が日本語の部分を担当する方法もあります。特に留学生が支援者である場合に有効な方法です。

教員からの授業における配慮については、TipSheet「授業における教育的配慮」にも記載されていますのでご覧ください。

<TipSheet「授業における教育的配慮」より一部引用>


【事例】授業(担当教員)の変更

それまで、英語の授業は専攻ごとに受講するものが決まっていたのですが、聴覚障害学生が受講することになる授業が、リスニングが多い等、ノートテイクなどをつけても難しいということになり、別の授業に変更してもらいました。


【事例】 英文の配慮依頼文書

すべての教員に配慮依頼文書を配布していますが、英語を母語とする(ネイティブスピーカー)教員に対しては、英語で書かれた配慮依頼文書を用意しました。
日本語が得意ではない教員にとっては理解しやすく、スムーズに協力を得ることができました。
(画像をクリックするとPDFが開きます)
注:日本語翻訳文は参考用です

英語の配慮依頼文日本語翻訳文
英語の配慮依頼文


支援者の募集・派遣に関する工夫

支援者の募集や派遣に関する工夫事例をご紹介します。


【事例】支援学生の履修経験を確認

支援者として登録してもらう際に、必ず語学の履修経験を尋ねるようにしています。
履修経験があるだけでも、まったくない支援者に比べれば事前知識が違いますので、ぜひ確認しておくことをお勧めします。

語学だけでなく、他の授業の履修状況も確認するようにしています。


【事例】国際系学部の学生に呼びかけ

国際教養学部という、国際系の学部があるのですが、この学部は英語の堪能な学生が多いので、英語の授業での協力を依頼しています。

「英語の授業での支援者を探しています」というようにピンポイントで募集することで、必要としている人材を集めやすい面があります。


【事例】「英語の授業」をアピールした募集

ネイティブの先生がコミュニケーションを目的として行う授業では、英語でのやり取りを中心に講義が進められます。これは、英語を母国語としない支援者には大きな負担であるとともに、持ち備えている知識によって情報保障の質が大きく左右されます。

そこで英語の授業に特化した支援者の募集を、英語が堪能な学生(英語関連のコース)へ向けて行い、最終的には多くの学生から積極的な協力を得ることができました。
おかげでこれまでカタカナ表記で対応していたものがアルファベット表記となり、情報保障の質が大きく向上すると共に、後輩へノートテイクの活動の周知を行ってくれるなど、専門領域での支援者確保のパイプを築くことができました。
(画像をクリックするとPDFが開きます)

宮城教育大学英語関連コースに向けた支援者募集チラシ

【事例】留学生の多い大学にPR

ネイティブの先生が英語のみで進める授業でのことです。
英語が堪能な学生で対応できると考えていたのですが、英語ができても、「ネイティブの話す英語を英語で書き取る(入力する)」ことに困難な面がありました。

そこで、支援者募集のチラシを学内だけでなく留学生の多い大学でも掲示して募集を行ないました。
最終的には帰国子女の学生、ネイティブの留学生、留学生別科の学生などから協力を得ることができました。

イラスト:留学生のノートテイカー

  • 編集グループ: PEPNet-Japanコーディネーター連携事業メンバー
    前原明日香(宮城教育大学しょうがい学生支援室)
    及川麻衣子(宮城教育大学しょうがい学生支援室)
    立田真由子(宮城教育大学しょうがい学生支援室)
    PEPNet-Japan事務局
  • 協力:関西学院大学キャンパス自立支援課、早稲田大学障がい学生支援室、同志社大学障がい学生支援室、宮城教育大学しょうがい学生支援室、原田美藤(愛媛大学アカデミックアドバイザー)
  • 掲載日:2009年11月27日

掲載中の事例について詳しくお知りになりたい方は、事務局までお問い合わせください

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