その6 安全確保のための情報保障と緊急時の連絡手段
情報保障とは授業内容を伝えるだけでなく、授業中の安全確保(実験を伴う授業・体育等)に伴う情報保障や災害時の緊急連絡も含まれると考えます。とりわけ緊急時は、情報が入ってこなかったがために命が危険に曝される可能性もあります。
このページでは、危険が伴う授業において安全確保を行っている事例と、災害時の緊急連絡の方法及び聴覚障害学生も交えた避難訓練の方法をご紹介します。
災害はいつ起こるか分かりません。聴覚障害学生・支援学生のことも考慮した対策についてぜひ検討してみてください。
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- 視覚による情報伝達
- 文字による警報システムの活用
- 学内緊急通報システムの活用
- 聴覚障害学生も交えての避難訓練
- 自治体が行っている聴覚障害者災害等緊急時情報発信システムの活用
危険が伴う授業における安全確保
実験など、危険が伴う授業の場合、事前に対応策を聴覚障害学生と確認しておきましょう。
【事例】視覚による情報伝達
本学には、実験実習の頻度が高い理工学部があります。化学の研究室には、有機ガスが漏れ、その値が危険値に達した場合、音がなる装置をつけていましたが、聴覚障害学生がいたので、音とともにランプが光るシステムを導入しました。
災害時の緊急連絡
災害などの緊急時、音だけの警報では、聴覚障害学生に情報が伝わらない心配があります。
きちんと対応策をとり、それを周知しておくことが大切です。
【事例】 文字による警報システムの活用
- 学内CATV及び学内広報システム
本学の天久保キャンパス(聴覚系)で学ぶ学生は全員聴覚障害者です。
アナログ放送の場合には、文字デコーダを予め通した字幕付きの映像を、寄宿舎や学内の実験室等に配信しています。また、2011年から完全移行する地上波デジタル放送(標準で字幕表示可能)も学内配信しています。
各放送映像のみならず、学内広報も配信しています。この学内広報システムは寄宿舎だけでなく、キャンパス全域に約80台のモニタを配置し、各種の情報を配信しています。表示される情報は、教職員が各自のパソコンから入力出来ます。 - 文字による警報システム及びお知らせランプ)
火災警報に連動して作動する「文字による警報システム」の表示用端末が、天久保キャンパスの寄宿舎を中心に約60台設置されています。火災警報の発報と同時に、避難を促すメッセージを自動的に表示します。また、このメッセージには「火災の発生場所」の情報が付加されており、危険な場所を避けられるように配慮してあります。これらの機器に加えて、講義の開始・終了や火災発生を知らせる3色のお知らせランプも、天久保キャンパス各所に設置されています。
【事例】学内緊急通報システムの活用
本学では、地震や火事その他緊急事態が発生した場合は、本学設置の緊急通報システムで避難等の連絡を行ないますが、その際、予め登録されている聴覚障がい学生の携帯にも自動的に文字情報(携帯メール)で通報が行くようになっています。
【事例】聴覚障害学生も交えての避難訓練
年に一度、災害を想定した総合防災訓練を行っています。その時には障害のある学生も参加し、緊急時の避難体制について全学的な取り組みを行っています。
校内放送で緊急を知らせるアナウンスがあった場合には支援学生が聴覚障害学生の携帯メールにアナウンスの内容をメールする、という取り組みを行っています。
全学避難訓練の際に、この方法を試みたところ、校内でも「携帯電話が通じない」エリアがあったり、アナウンスが聞こえない場所があることが発見されました。
【事例】自治体が行っている聴覚障害者災害等緊急時情報発信システムの活用
最近では、聴覚障害者災害等緊急時情報発信システムを導入している自治体も増えてきています。1995年に阪神淡路大震災という未曾有の大災害を経験した兵庫県では、兵庫県立聴覚障害者情報センターと連携を図りながら「聴覚障害者災害緊急時情報発信システム」を運用しています。「ひょうご防災ネット」に登録すれば、住んでいる地域で起こっている災害等の情報をメールで受信することが可能です。
また、都道府県や市町村が作成しているハザードマップ(防災情報)の活用も有効です。
まずは、これらの情報を聴覚障害者に伝え、居住地の情報を把握しておくなど、活用を促すことが重要だと思います。
- 編集: PEPNet-Japanコーディネーター連携事業メンバー
大椿裕子(関西学院大学)
星かおり(関西学院大学) - 協力:関西学院大学キャンパス自立支援課、筑波技術大学、札幌学院大学、宮城教育大学しょうがい学生支援室
- 掲載日:2009年11月27日
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