聴覚障害者に限らず、現在の職場では業務を遂行する上でメールでのやり取りは必須です。しかし、コミュニケーション面で何らかの配慮が必要となる聴覚障害者にとって、視覚的にやり取りできる「メール」は仕事をする上で特に重要なツールとなります。しかし、携帯電話上のメールのやりとりしかあまり体験したことのない聴覚障害学生にとって、ビジネスメールでのやりとりは、練習を必要とするものでしょう。
そこで本研修では、ビジネスで必要とされるメールのやりとりにおける基礎を、実践的な練習を通して学ぶことを目的にしています。

◎ ねらい

  • 業務を遂行する上で欠かすことのできないビジネスメールの基礎を、実践練習を通して学ぶ。
  • メールを書く上で必要とされる基本的なルールや敬語の使い方、的確な用件の伝え方のポイントを学習する。
  • 文字を使ったコミュニケーションが聴覚障害学生にとって有効な武器となることを理解し、これを使いこなせるよう意識づける。

◎ 時間

40分

役割人数留意点
司会1名聴覚障害学生に伝わるように企画趣旨を確実に説明すること。学生同士のディスカッションをうまく促せる人が望ましい。
講師1名聴覚障害者の日本語の特徴、指導に精通している人がよい。
受講者受講生の人数に応じて4・5名のグループに分ける。

◎方法

詳細は指導計画を参照

<進め方>

  1. 講師はスライド等を用い、参加者全員に対してこれから何を行うのかを伝える。
  2. まず、ビジネスメールと通常のメールの違いについて簡単に説明を行い、聴覚障害者のにとってのメールの重要性について話をする。
  3. 次に、これから作成するメールの内容について説明する。今回は、「今日の研修にきてくれた講師に対してお礼のメールを書く」という設定で、メールの文面を作成する。文中で講師に対するお礼を伝えるとともに、帰りの飛行機の半券を事務局に送っていただくよう伝える。
  4. 説明を受けて、各自パソコンを用い実際にメールの文面を作成・印刷する。
  5. グループ全員でお互いに文面を見て、意見交換を行う。あわせて講師からも数例文面を取り上げ、コメントを伝える。
  6. 模範例を提示し、このメールで伝えるべきポイントについて確認する。
  7. 終了後、参加者が作成したメールの文面を回収し、添削の上、学生に返却する。

◎留意点

  • 本活動はパソコンを用いて実施するため、情報処理室等の人数分のパソコンが用意できる部屋を利用したい。
  • パソコンのトラブルなどで時間がとられることのないよう、機材の設定等は十分に事前確認を行い、すぐに文章作成に取りかかれるようパソコンを立ち上げた状態で活動を始める。
  • 学生の多くは、携帯電話を用いた友達同士のフランクなメールのやりとりしか体験したことがないため、これとビジネス上のメールのやりとりが異なることを十分理解させるよう工夫する。
  • 作成した文面を互いに評価することは、自分がこれまでに気づかなかった視点を得る良いきっかけになるため、学生同士のやりとりを十分引き出せるよう工夫し、できるだけ具体的な指摘が出るよう働きかけを行う。

指導計画

実際の研修会で利用できる指導計画案を掲載しています。ご自身の大学の状況に合わせて、適宜アレンジしてご利用下さい。

→PDFファイルのダウンロード

教室配置

教室配置図。内容は留意事項を参照のこと。

留意事項

説明時は講師に向かって講義形式で着席する。パソコン作業を行う時には、壁側に並べられたパソコンに向かう形で着席し、説明と作業を明確に分けるよう工夫する。

情報保障

手話を用いる講師の場合は、参加者全員がわかるような方法で進行する。

  • 趣旨説明・方法はスライドで提示し、該当箇所を指し示しながら、手話を使って説明を行う。スライドの内容は資料としても配付する。
  • また、手話のわからない学生のために、口を大きく開けて明瞭な発音で発生する。
  • わからない部分があれば、学生の方から確認するというスタンスを徹底する。

進行・展開

○ 自己紹介・主旨説明(5分)
  • 講師より本研修のねらいと流れを説明する。ここでは、ビジネスメールと友達に宛てたメールでは性格が異なること、聴覚障害者にとってメールは非常に重要なコミュニケーションツールとなることを強調する。
  • 本研修では、以下のテーマに基づきメールを作成してもらうことを伝える。

<テーマ>お礼と依頼
講演会の主催者である「あなた」から、今日講演会の講師として来ていただいた先生に対して、お礼とお願いのメールを作成する。ここでは、今日実施いただいた講演に対するお礼を述べるとともに、事前にお伝えしていたとおり、往復航空券の半券を送っていただくようお願いする。

留意事項

参加者が内容をイメージしやすくするため、”教えて!先輩「ロールモデルに学ぶ」”で来ていただいた講師に対するお礼とするなど、具体例を挙げて記載させてもよい。

自分講演会の主催者
宛先○○△△氏
沖縄在住(仮)
今回は往復航空機を利用した。
内容以下の2点を伝えるメールを作成する。
・講演に対するお礼
・往復に使った飛行機の半券を事務局に送ってほしい
(ただし、事務局の住所は先日お伝え済み)。
送信日本日
制限時間15分(完成した人から印刷する。印刷の方法はあらかじめ講師から説明する)
○ メール作成(15分)
  • 実際にパソコン(メモ帳)を用いてメールの文面を作成する。
  • 完成後、保存・印刷する。
○ フィードバック(15分)
  • グループ全員でお互いに作成したメールを見て意見交換(5分)
  • 講師より学生のメールを数例取り上げ、フィードバック、解説する(5分)
  • 講師の模範例を提示する(5分)
○ 印刷したメールを回収する
  • グループ名、名前が記載されているか確認すること

===終了===

○ 回収したメールの添削

学生のメールを添削し、研修会終了後、学生に返却する。 (一字一句を添削するというより、文章全体についてコメントする形とし、模範例ともに返却する。なお、参加者がこうしたビジネスシーンについて十分イメージ出てきていないと思われる場合には、そうした背景情報に関する補足資料を作成し、送付するのもよい。)
主な添削のポイントは以下の3点とする。

  • ビジネスメールで必要とされるポイントが記載されているか?(模範例参照)
  • 相手との仕事上の関係(仕事を依頼する、される等)を把握した上でメールを作成できているか?(添削コメント参照)
  • 日本語として正しい文章になっているか?(尊敬語、謙譲語等)

<留意点>

  • ビジネスメールと友達とのフランクなメールのやり取りの違いについて最初にはっきり説明しておく。
  • 就職後、仕事でやりとりするメールの文章が他者にどのような印象を与え、どう評価されるのかについて学生に意識付けできるような説明をする。
  • 本企画は情報保障をつけないで進行するが、学生が「わからない時は自分から必ず確認すること」を徹底し、その考え方をスタッフ間でも共有すること。わからないときは学生は進行を止めて質問をしてよい。(社会に出てからは本人が何もアクションを起こさずに、自動的に本人が望む配慮のある環境になることは考えにくい。本人が自ら周囲に働きかける姿勢が重要になるため。)
  • 本企画での学生同士での意見交換は、「他者の意見を知る」「知らなかったことに気づく」という意味で非常に重要な機会として位置付けている。様子を見て、必要があれば、司会が学生同士のコミュニケーションをうまく促す役割を担うこと。特に、抽象的な意見交換にとどまってしまう場合には、具体的な意見交換につながるように声かけをする。

指導教材資料

  • 説明用スライド
  • 講師の模範例
  • 学生の作成したメールの添削コメント例

指導教材

実際の研修会などで使用可能な教材を掲載しています。ダウンロードの上ご使用ください。

講師模範例

課題の模範例。添削したメールとともに終了後配布。

スライドサムネイル画像

※本教材の著作権はPEPNet-Japanに帰属しています。研修会等で編集の上ご利用いただくことは可能ですが、クレジット表記などは変更しないようお願いします。
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