30歳の自分は?「キャリアデザインワーク」
5年後、10年後の自分を思い描き、それを達成するための道筋を明確にすることは、これから取り組むべき課題を発見する上で非常に重要です。
本研修では、「30歳の自分」の姿をイメージし、自分がどんな仕事をしているか?どんなことを成し遂げているのかを想像することで、そこにたどり着くために必要なステップを考えます。この過程では、自分のビジョンをかなえるために必要な目標を、「一般的な目標」と「聴覚障害がある故に必要な目標」に分けて整理するとともに、こうした目標を達成するために必要なアクションと、このうち今日から取り組むことのできる具体的なアクションを発見します。
◎ ねらい
- 将来の自分の姿をより具体的にイメージし、自分自身のキャリアパスを自ら描いていく手法について学ぶ。
- 自分のビジョンを達成するために必要な目標を設定するとともに、この目標に向かって取り組むべきアクションを整理する。
- 自分自身の目標を他者に対して説明することで、より自信を持って目標に取り組むきっかけを得る。
- 他者のビジョンとそれに向けたアクションプランを見ることで、自分に取り入れるべき内容を発見する。
◎ 時間
180分
◎ 役割及び人数
役割 | 人数 | 留意点 |
ファシリテーター | 2名 | 各グループそれぞれ1名のファシリテーターを置く。タイムキーパーも兼ねる。 |
アシスタント | 2-3名 | ワーク時、受講生をサポートするブラザー・シスターの役割を兼ねる。 |
受講者 | 人数に応じて10名程度のグループに分かれる。 |
◎方法
詳細は指導計画を参照
<進め方>
1.ファシリテーターはスライド等を用いて参加者全員に対しこれから何を行うのかを説明する。
2.書画カメラを用いてビジョン達成シートの記入例を提示し、それぞれの項目に対する記入方法を説明する。具体的な内容は以下の通り。
〔30歳のわたし(ビジョン)〕
30歳の自分を想定し、「その頃の自分はどんな仕事に就いているか?」「どんな仕事を任されているか?」「それまでに解決した問題は何か?」「今取り組んでいる問題は何か?」など、できるだけ具体的に将来像を記入する。自分の現在の年齢から換算して、「社会人何年目にあたる年なのか?」「ロールモデルとして話を聞いた先輩と比較して何歳差になるのか?」など、具体的なイメージを与えることで、より鮮明に将来像が見えてくる場合も多い。
〔ビジョンに向けてのゴール〕
先に挙げたビジョンにたどり着くために、達成しておくべき目標をあげ、シートに記載する。ここでは、必要な「知識・経験・資格・スキル」とこれらを得るために活用できるリソースとして、頼りになる「人・組織・機関」を、それぞれ一般的なものと聴覚障害がある故に必要なものに分けて記載する。
〔ゴールに向けたアクション〕
先に掲げたゴールを達成するために、取り得るアクションをそれぞれ1つずつ全部で4つ記載する。
〔今日から実行できるアクション〕
先に挙げた4つのアクションの実行に向けて、今日から取り組むことのできる内容をそれぞれ1つずつ記載する。
3.参加者の様子を見ながら、適宜ファシリテーターやアシスタントが質問を投げかけ、学生の思いを引き出し、それを記載するよう手助けする。
4.記載が終わったら、清書用紙に内容を書き写し、1人ずつこの内容を発表する。発表後、学生同士による質疑応答やフィードバックをうながし、参加者全員の発表を聞く。
◎留意点
- ビジョンはできるだけ具体的に想い描くことができるよう、「その時の自分はどんな職場で働いている?」「会社には何人ぐらいの人がいる?」「同僚はどんな人?」「あなたがしている服装は?」など、さまざまな質問を投げかけ、イメージの構成を手助けする。
- 講師・アシスタントは、指導教材の中のキャリアデザインワーク発問シートに記載された発問内容を頭に入れ、参加者の想いを引き出せるよう随時質問を行う。
- 発表時には、学生の記入したシートを書画カメラを用いてスクリーンに投影し、全員がわかるような方法で発言するよう伝える。
- 発表後のフィードバックでは、学生の自発的な発言をうながすとともに、発表に対して一切批判を行わないことをルールとする。
- 最後に、「この日集まった学生達ひとりひとりの生き方が、これからの聴覚障害者のモデルになる」ことを伝え、自信と自覚をもって取り組んでもらえるよう励ましたい。
- 終了後は、それぞれの目標の進展具合を確認できるようSNSサイトやMLでの情報共有をうながしたい。
指導計画
実際の研修会で利用できる指導計画案を掲載しています。ご自身の大学の状況に合わせて、適宜アレンジしてご利用下さい。
教室配置
留意事項
参加者は 参加者は 、互いに顔が見えやすいよう馬蹄形に並んで着席する。 ホワイトボードとスクリーン、書画カメラを準備し、参加者全体から見やすい位置に配置する。
情報保障
概要説明のみ手話通訳及びパソコンノートテイクを配置する。グループワークでは、手話や筆談など、直接コミュニケーションが取れる手段を用い、互いにやりとりするよう心がける。また、発表時にも全員にわかるコミュニケーション手段を用いるよう徹底し、記入したワークシートを指さしながら、丁寧に説明するよう指示する。
進行・展開
○グループワーク及びワークシートの概要説明(15分)
- ワークシートの記入例をスクリーンに投影し、キャリアデザインの目的、進め方、記入方法を説明する。
- この際、参考となる項目リストを配布し、この研修で学んだことを振り返るとともに、社会人になったときに求められる力について説明し、これらを参考にシートに記入していくことを伝える。
○ワークシート作成作業(100分)
- 自分の夢に向かってどんなアクションを取れるか考えていくため、まず一番上の「30歳のわたし(ビジョン)」をできるだけ具体的に記入させる。この際、講師は下記のような発問を投げかけ、参加者が具体的にイメージできるよう援助する。
<発問の例>
- 30歳といえば、就職して何年でしょうか?
- そのときあなたはどんな仕事をしていたいですか?
- 会社での立場はどうなっていますか?
- 同じ部署には何人の上司、同僚、後輩がいますか?
- 上司にはどんな仕事を任されていると思いますか?
- その仕事をしている時、どんな気分ですか?
- 周囲の人にはどんな風に思われているでしょうか?
- 毎日の生活はどんな感じですか?
- 何時に起きて、何時に出社しますか?帰宅は?
ビジョンの記入が終わったら、下記の通り、上から下に1段ずつ記入をうながす。
- 「ビジョンに向けてのゴール」の記入
- ビジョンの達成に向けて、必要な知識や経験、資格、スキル等を左枠に、これらを達成するためにサポートしてくれそうな人や組織、機関等の情報を右枠に記載する。「ろう・難聴であるゆえに必要なゴール」の記入
- 同様に、ろう・難聴であるがゆえに必要な知識や経験・スキル、これらを身につけるためにサポートしてくれそうな人や組織・機関等の情報を記入する。「ゴールに向けたアクション」の記入
- ゴールで記載した4つの枠の中から、それぞれ一つずつ課題を取り上げ、これを達成するためにやりたいアクションを記載する。「今日から実行できるアクション」の記入3.で記載した各アクションに取り組んでいくため、今日から実行することのできる具体的な行動を記入する。この欄はできる限り具体的に想像させ、実際に実行可能なレベルにまで落とし込めるよう援助する。
記入に行き詰まっている学生がいる場合には、ファシリテーターやアシスタントが声をかけ、さまざまな発問を投げかけながら学生の考えを引き出し、記入をうながす。
ワークシートは下書きと清書の二枚を用意する。まずは下書き用紙に記入させ、全体が完成した時点で清書に記入する。清書は発表時にスクリーンに投影するため、黒色のサインペンではっきり書くよう伝える。
○発表&フィードバック(60分)
- 書画カメラを用いてワークシートをスクリーンに投影し、1人ずつ全員の前で内容を発表する
- 発表後、学生同士による質疑応答を行う。この際、発問シートの最後にあるようなルールを設け、学生の主体的な質問・コメントを引き出す。
指導教材資料
- ビジョン達成シート
- 「ビジョンに向けてのゴール」の記入に参考となる項目リスト
- キャリアデザインワーク発問リスト
指導教材
実際の研修会などで使用可能な教材を掲載しています。ダウンロードの上ご使用ください。
発問リスト
参加者の想いを引き出すための発問リスト。講師用参考資料。
※本教材の著作権はPEPNet-Japanに帰属しています。研修会等で編集の上ご利用いただくことは可能ですが、クレジット表記などは変更しないようお願いします。
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