第5回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム
2009年11月3日に、学術総合研究センターにて日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウムを開催いたしました。このシンポジウムは、PEPNet-Japanが毎年1回開催しているもので、我々の活動の成果をより多くの大学・機関に向けて発信するとともに、全国の高等教育機関における支援実践について情報交換をするものです。
第5回目となった今回は、聴覚障害学生支援に携わる大学教職員や聴覚障害当事者を中心に、総勢290名近い方々にご参加頂きました。今回は、午前中に昨年度よりも一つ多い4つの分科会を行い、午後の全体会では、「聴覚障害学生の主体性を引き出す環境づくり-社会生活・就労を見据えたエンパワメント-」というテーマで、パネルディスカッションを行いました。ここでは、聴覚障害学生が卒業までに培うべき力とはどのようなものか、またそれらを引き出すために大学としてどのような取り組みが必要であるかについて聴覚障害当事者、教員、キャリアサポートの専門家など様々な視点から検証しました。
毎年盛況を重ねるこのシンポジウム開催にあたり、実行委員や講師等でご協力いただきました皆様、そしてご参加頂いたすべての皆様にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
2009年12月吉日
日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)事務局
開催要項
- 期日 2009年11月3日(火・祝) 10:00~17:00
- 会場 学術総合センター
プログラム
10:00~12:00 分科会
■分科会1「基礎講座 1からわかる聴覚障害学生支援入門」
- 司会:山本篤氏(関東聴覚障害学生サポートセンター)
- 講師:太田琢磨氏(愛媛大学バリアフリー推進室)
後藤吉彦氏(フェリス女学院大学バリアフリー推進室)
及川麻衣子氏(宮城教育大学しょうがい学生支援室) - アドバイザー:新國三千代氏(札幌学院大学)
藤井克美氏(日本福祉大学)
松﨑丈氏(宮城教育大学)
■分科会2「教職員に対する障害学生支援の理解向上のために」
- 司会:青野透氏(金沢大学大学教育開発・支援センター)
倉谷慶子氏(関東聴覚障害学生サポートセンター) - 話題提供:藤島省太氏(宮城教育大学)
小林直人氏(愛媛大学教育・学生支援機構)
青野透氏(金沢大学大学教育開発・支援センター)
■分科会3「コーディネーターの専門性と身分保障」
- 司会:金澤貴之氏(群馬大学)
- 話題提供:大椿裕子氏(関西学院大学教務部キャンパス自立支援課)
新津晶子氏(群馬大学障害学生支援室)
清水里奈氏(早稲田大学障がい学生支援室) - コメンテータ:山下恒生氏(大阪教育合同労働組合)
■分科会4「支援学生のスキルアップ―聴覚障害学生のニーズに応えるために―」
- 司会:甲斐更紗氏(鹿児島大学)
- 話題提供:児玉英之氏(学生)窪田祥子氏(学生)
- 事例紹介:辻井美帆氏(学生)山田洸平氏(学生)
瀬戸今日子氏(TeamACS 事務局)
12:00~14:00 ランチセッション
聴覚障害学生支援に関する実践実例コンテスト2009
14:00~17:00 全体会
■パネルディスカッション「聴覚障害学生の主体性を引き出す環境づくり―社会生活・就労を見据えたエンパワメント」
- 司会:白澤麻弓(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター)
- パネリスト:長野留美子氏(関東聴覚障害学生サポートセンター)
山本幹雄氏(広島大学アクセシビリティセンター)
平尾智隆氏(愛媛大学教育・学生支援機構)
石原保志(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター)
■コンテスト結果発表
参加費 無料
主催
- 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)
- 国立大学法人 筑波技術大学
協力 関東聴覚障害学生サポートセンター
後援 文部科学省 ・ 独立行政法人 日本学生支援機構
大会長 村上芳則(筑波技術大学学長)
実行委員
及川力・柴正彦・石原保志・小林正幸・長南浩人・三好茂樹・河野純大・白澤麻弓・蓮池通子・萩原彩子・磯田恭子・中島亜紀子・石野麻衣子(筑波技術大学)
金澤貴之(群馬大学)
倉谷慶子・吉川あゆみ・長野留美子・山本篤(関東聴覚障害学生サポートセンター)
甲斐更紗(鹿児島大学)
当日の様子
【分科会】
【分科会1】
分科会1は「基礎講座-1からわかる聴覚障害学生支援入門-」というテーマで、前半はミニレクチャーを、後半は講師にさらにアドバイザーの方々にも加わっていただき、Q&Aコーナーとしてグループディスカッションを行いました。これから聴覚障害学生支援を始めようとする大学教職員の方々や支援体制を構築してもらうための方策を考えている聴覚障害学生や保護者、支援学生の皆さんからの質問や疑問に、講師やアドバイザーから丁寧な助言が行われました。
【分科会2】
分科会2は「教職員に対する障害学生支援の理解向上のために」をテーマに、まず、聴覚障害学生支援に関するFDで先駆的な取り組みをされている大学から実例を挙げながら話題提供をいただきました。その後、実際に活用可能な理解啓発教材を体験していただき、感想を共有することでFD開催の意義と効果が確認されました。こちらも大学の教職員の方から、聴覚障害学生まで様々な立場の方達にご参加をいただきました。
【分科会3】
分科会3では、「コーディネーターの専門性と身分保障」というテーマで、3人の現役コーディネーターの方から情報提供をそして、労働組合の方からもコメントをいただきながら進められました。そして、これまであまり語られることのなかった、コーディネーターに求められる専門性と専門性を発揮できるために必要な身分保障について、より質の良い聴覚障害学生支援を提供するために必要な事項とからめながら議論を深めました。
【分科会4】
分科会4は、「支援学生のスキルアップ―聴覚障害学生のニーズに応えるために―」というテーマで、支援を受ける立場、支援をする立場それぞれ現役の学生さんから話題提供や実践事例をご紹介いただきました。そして最後には、参加者の皆さんにも実際にノートテイク用の練習教材を体験していただき、聴覚障害学生のニーズに応えるために必要なスキルアップとは何かについて理解を深めました。
【パネルディスカッション】
パネルディスカッションでは、「卒業後を見据えた聴覚障害学生のエンパワメント」について、聴覚障害者・企業・大学それぞれの立場から報告がなされ、大学在学中に身につけるべきスキル等を明らかにすることを目的とした。
大学においても企業においてもコミュニケーションが最も重要な課題ではあるが、受け身で情報を待っている支援体制に慣れてしまっている・障害を隠したいと思っている学生へのエンパワメントはどうするのか、など多くの意見が参加者から出されました。
【ランチセッション】
聴覚障害学生支援に関する実践実例コンテスト2009
ご好評をいただいた昨年度に引き続き、「聴覚障害学生支援に関する実践事例コンテスト」を行いました。今回は、皆様のご要望にお応えして少し時間を長めに取り、ゆっくりとそれぞれのポスター発表をご覧いただきました。そして、今年は、新たに「PR・啓発グッズ部門」を設け、5部門での表彰となりました。コンテストにご応募いただいた20校の皆さんの力作が一同にそろい、熱心に発表を聞く参加者も多く、「まだまだ時間が足りない」との声も聞かれるほど、大変盛り上がりました。