第10回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム

2014年11月9日に、つくば国際会議場(茨城県つくば市)において、「第10回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」を開催しました。記念すべき第10回目となる今回は、全国の大学教職員、学生等507名(関係者含む)が参加し大変盛大な会となりました。第1回では164名の参加者でしたが、聴覚障害学生支援の広がりとともに毎年参加者が増加し、今年は初めて500名の大台を突破することができました。近年の聴覚障害学生支援への関心の高さと、本ネットワークの活動が広く認知されてきたことがうかがえます。皆様のご支援ご協力に深く感謝申し上げます。
午前中は全体会として、第10回を記念した特別企画「Let’s talk about the future!―10年を振り返ってこれからの日本を考える―」を行いました。第1部では白澤麻弓事務局長(筑波技術大学)による講演「海の向こうに行ったら日本が見えた―最前線の支援に学ぶ今後の課題―」、第2部では聴覚障害学生支援の歴史を築いてきた講師陣を迎えての座談会「現在の到達点とこれからの日本―これまでの10年で行ってきたことは?これからの10年でなすべきことは?―」が行われ、我が国の聴覚障害学生支援の将来像を見据えた重要な指摘がなされました。

全体会写真

続いて行われたランチセッションでは、今回で7回目となる「聴覚障害学生支援に関する実践事例コンテスト」を開催し、19の大学・団体から日頃の取り組みが紹介され、参加者の投票によって注目度の高い発表が表彰されました。あわせてミニセミナーや相談コーナーなど盛り沢山の企画で、時間が足りなくなるほどの盛況ぶりでした。
午後に設けた分科会では、(1) 筑波技術大学における聴覚障害学生への指導について、一般大学においても取り入れられる具体的方法を紹介した基礎講座「聴覚障害学生から学び培う教育・支援の取り組み―筑波技術大学における実践を参考に―」、(2) 聴覚障害学生が大学時代に身につけるべきことを中心に取り上げ、聴覚障害学生のエンパワメントを考える「支援を受ける側から支援を考える立場へ!―ドキュメンタリー映像を通してエンパワメントを考える―」、(3) 遠隔情報保障の現在と将来に向けた展開について取り上げた「遠隔情報保障で変わる聴覚障害学生支援」、(4) 情報保障者の取り組みから大学および大学の支援担当者に求められる役割を整理や利用学生の潜在的なニーズを引き出す手がかりを探る「聴覚障害学生のニーズを引き出す情報保障をめざして―手話通訳者・文字通訳者の取り組みから―」の4つの企画を行いました。いずれの企画も、非常に充実した意見交換が行われました。
本シンポジウムの開催にあたりましては、企画コーディネーター、講師等、多くの方々にご協力頂きました。また、ご参加頂きました皆様にも厚く御礼申し上げます。

10回のあゆみパネルの写真

2015年1月吉日
日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)事務局

開催要項

  • 日時 2014年11月9日(日) 10:00~17:00
  • 会場 つくば国際会議場

プログラム

【全体会Ⅰ】

10:00~10:15 開会式
10:15~12:00 第10回記念特別企画
■「Let’s talk about the future!―10年を振り返ってこれからの日本を考える―」
司会 :石原 保志(筑波技術大学 副学長)

  • 第1部 海の向こうに行ったら日本が見えた―最前線の支援に学ぶ今後の課題―
    講演者:白澤 麻弓(筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター/日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク 事務局長)
  • 第2部 現在の到達点とこれからの日本―これまでの10年で行ってきたことは?これからの10年でなすべきことは?―
    登壇者:松﨑 丈氏(宮城教育大学 特別支援教育講座)、中野聡子氏(広島大学 アクセシビリティセンター)、吉川あゆみ氏(関東聴覚障害学生サポートセンター)
    ファシリテーター:白澤 麻弓

12:00~14:30 ランチセッション

  • ミニセミナー
  • 聴覚障害学生支援に関する実践事例コンテスト展示
  • 相談コーナー“トーク&トーク”
  • 聴覚・視覚障害学生支援に関する機器展示
  • PEPNet-Japan連携大学・機関活動紹介展示
  • 筑波技術大学活動紹介展示

14:30~16:30 分科会

■分科会1「基礎講座 聴覚障害学生から学び培う教育・支援の取り組み―筑波技術大学における実践を参考に―」

  • 司会:及川 力(筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター)
  • 講師:石原保志(筑波技術大学 副学長)、須藤正彦(筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター長)、内藤一郎(筑波技術大学 産業技術学部長)、加藤伸子(筑波技術大学 産業技術学部)

■分科会2「支援を受ける側から支援を考える立場へ!―ドキュメンタリー映像を通してエンパワメントを考える―」

  • 司会:管野奈津美(筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター)
  • 講師:今村彩子氏(映像作家 / Studio AYA代表)、原 和大氏(愛知県立千種聾学校 教諭)、大杉 豊(筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター)

■分科会3「遠隔情報保障で変わる聴覚障害学生支援」

  • 司会:中野聡子氏(広島大学 アクセシビリティセンター)
  • 講師:髙橋岳之氏(愛知教育大学 教育学部)、三好茂樹(筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター)、及川麻衣子氏(宮城教育大学 しょうがい学生支援室)
  • 話題提供:森野 宅麻氏(学生)、松田 聡子氏(学生)

■分科会4「聴覚障害学生のニーズを引き出す情報保障をめざして―手話通訳者・文字通訳者の取り組みから―」

  • 司会:吉川あゆみ氏(関東聴覚障害学生サポートセンター)
  • 講師:神山みや子氏(文字通訳者)、原 恵美氏(手話通訳者)、窪田祥子氏(会社員 / 卒業生)

【全体会Ⅱ】

16:30~17:00 コンテスト表彰式/閉会式

参加費 無料

主催

  • 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)
  • 国立大学法人 筑波技術大学

後援

  • 文部科学省
  • 独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)

大会長  村上 芳則(筑波技術大学)

実行委員長  石原 保志(筑波技術大学)

事務局長  白澤 麻弓(筑波技術大学)

幹事  萩原 彩子(筑波技術大学)

実行委員

中野聡子(広島大学)
吉川あゆみ(関東聴覚障害学生サポートセンター)
須藤正彦・内藤一郎・及川 力・小林正幸・佐藤正幸・松藤みどり・山田重樹・大杉 豊・河野純大・三好茂樹・磯田恭子・中島亜紀子・五十嵐依子・石野麻衣子(筑波技術大学)

当日の様子

【全体会Ⅰ】

全体会Ⅰでは、開会式が行われた後、第10回を記念した特別企画を催しました。

【特別企画】

「Let’s talk about the future!-10年を振り返ってこれからの日本を考える」と題し、第1部「海の向こうに行ったら日本が見えた-最前線の支援に学ぶ今後の課題-」では、本ネットワーク事務局長の白澤麻弓(筑波技術大学)からアメリカの先進事例について紹介がなされました。それを受け、第2部「現在の到達点とこれからの日本-これまでの10年で行ってきたことは?これからの10年でなすべきことは? -」では、日本における聴覚障害学生支援の先駆者とも言える方々をお招きし、これまでの歩みを振り返るとともに、今後の10年でなすべき課題をテーマとした座談会が行われました。

特別企画写真

【分科会】

【分科会1】

基礎講座「聴覚障害学生から学び培う教育・支援の取り組み―筑波技術大学における実践を参考に―」では、筑波技術大学で実践している様々な取り組みの中から特に聴覚障害学生への指導について、一般大学においても取り入れられる具体的方法が紹介されました。また、それを受けて、高等教育機関における聴覚障害学生の指導・支援をどのように発展させていくことができるかについて、活発な議論が行われました。

分科会1写真
【分科会2】

「支援を受ける側から支援を考える立場へ!―ドキュメンタリー映像を通してエンパワメントを考える―」では、ろう・難聴学生の講義の情報保障や卒業後の様子を追ったドキュメンタリーを一部上映し、聴覚障害当事者である講師陣の経験談をもとにしたディスカッションが行われました。聴覚障害学生が大学時代に身につけるべき知識や、大学等への要望を伝えるためにどのように動くべきか、など聴覚障害学生のエンパワメントに関する発言が活発になされていました。また、教職員の参加者に対しても、エンパワメント指導の具体例を示すことができました。

分科会2写真
【分科会3】

「遠隔情報保障で変わる聴覚障害学生支援」は、企画コーディネーターの中野聡子氏(広島大学アクセシビリティセンター)の司会で進められました。遠隔情報保障について、その特性やシステムの一例紹介の他、遠隔情報保障を用いて先進的な取り組みを行っている大学のコーディネーターや支援学生・利用学生からの報告もありました。また、遠隔情報保障の現在と将来に向けた展開についても含め、多角的な視点から発表や話題提供がなされていました。

分科会3写真
【分科会4】

「聴覚障害学生のニーズを引き出す情報保障をめざして―手話通訳者・文字通訳者の取り組みから―」は、企画コーディネーターも務めた関東聴覚障害学生サポートセンターの吉川あゆみ氏の司会のもと進められました。実際に大学等で活動している手話通訳・文字通訳の方を講師にお迎えし、大学で通訳するにあたってどのようなことに気をつけているか、また、内容が専門的な場合にどう対応しているかという現場の経験をお話いただきました。そのうえで、聴覚障害当事者の講師から、手話通訳・文字通訳者に何を望むか、ご自身の経験を交えながらお話いただきました。

分科会4写真

【ランチセッション】

午後は、ランチセッションとして、複数の企画が行われました。

「ミニセミナー」では、「聴覚障害学生への就職指導」、「中途失聴・軽度難聴学生への対応」、「進歩する情報通信技術をどう生かすか-聴覚障害学生のエンパワメントへ向けて-」という3つのテーマについて、各30分程度の講演および活発な意見交換が行われました。
「相談コーナー」では、「支援体制に関すること」、「聴覚障害学生の支援業務に関すること」、「聴覚障害学生の研究活動に関すること」、「聴覚障害学生の就労に関すること」に関する相談を受け付けました。参加者の中には長時間話し込む様子も見られ、講師はひとりひとりに丁寧に対応してくださいました。

ランチセッション写真

「視聴覚障害学生支援に関する機器展示」では、8件の発表がありました。
その他、PEPNet-Japan連携大学・機関活動紹介ブースでは、全国の連携大学・機関の活動や各事業の取組がパネルで紹介されました。

毎年の恒例となった「聴覚障害学生支援に関する実践事例コンテスト」では、19団体から寄せられたポスターが並べられ、会場のあちこちで熱いプレゼンテーションが繰り広げられていました。
→『聴覚障害学生支援に関する実践事例コンテスト2014結果発表』のページ へ

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