教えて!先輩「ロールモデルに学ぶ-1」

聴覚障害学生の就職レディネスを高めていくためには、同じ障害をもつ先輩との出会いも大切です。本研修では、比較的参加者と年齢の近い先輩の聴覚障害者(20歳半ばから30歳前半)から、社会に出たときに直面した問題やそのときに取った対処方法について話を聞くことで、自分が将来社会に出て働くときの具体的なイメージを持つことを目的にしています。 また、単に先輩の話を聞くだけでなく、学生自身が事前にこの問題について考え、自分自身の意見を作った後、講師からのコメントをもらうことで、自身の考え方の違いや自分にはない社会人ならではの視点に気づいてもらうことを大切にしています。

◎ ねらい

  • ロールモデルとなる先輩の話を聞くことで、「働く」ことについての具体的なイメージを形成する。
  • 単に先輩から話を聞くだけでなく、「まず自分で考え、それを他者に説明し、他者の意見を聞き、また自分で考える」体験を得ることで、物事に対して主体的に考え、行動することの重要性を学ぶ。
  • 学生自らが先輩に対してたくさんの質問を行うことで、積極的に他者に聞き、その意見を取り入れることの重要性を知る。

◎ 時間

120分

◎ 役割及び人数

役割人数留意点
司会1名聴覚障害者の大学生活と社会生活の両方に精通している人が望ましい。情報保障の状況を把握しながら進行すること。
講師3・4名若手(20歳半ばから30歳前半)かつ現役で働いている社会人が良い。また、大学時代に何らかの支援を受けた経験があり、大学内外でのサークル活動等の積極的な活動経験がある方が望ましい。受講者が幅広い働き方に触れられるよう、講師はできるだけ性別、職種等が異なる方に依頼する。
タイムキーパー1名クロストークの際、タイムキーパーを担う。
受講者人数に応じて4・5名のグループに分かれる。

◎方法

詳細は指導計画を参照

<進め方>

  1. 参加者には、あらかじめ事前課題を送付し、就職後の問題について自分なりに考えて意見を書いてもらうようお願いする。内容については、「教えて!先輩「ロールモデルに学ぶ-1」(事前課題)」ページを参照のこと。
  2. 講師は、スライドを用いて参加者全体にこれから何を行うのかを伝える。
  3. はじめに講師の紹介を行った後、講師よりそれぞれ自分の生い立ちについて5分程度で話をしてもらう。
  4. 「働く」ということについて参加者により具体的なイメージを持ってもらうため、講師に対して「働くというのはどういうことか?実際に働き始めてどんなことに気づいたか?」を話してもらう。
  5. これらを受け、参加者と講師のクロストークを始める。ここではまず、参加者を4つのグループに分け、グループごとに「職場で困難を感じるのはどんなときか?」「それに対して、どんな解決方法が取れるか?」を考え、自分の意見を付箋に書く。書き終わったら、グループのメンバー間で書いた内容を共有し、講師に聞いてみたい内容を考える。
  6. ある程度意見がまとまったら、各グループに講師が一人ずつ入り、参加者からの質問に答えてアドバイスを行う。
  7. 15分経過したら講師は次のグループに移動し、6.と同様に参加者からの質問に答える。これを4回繰り返し、1順するまで続ける。
  8. なお、講師の数とグループの数が異なる場合には、司会者等がグループに入ってそれまでの話しの結果をまとめたり、次に来る講師に対して尋ねる内容をまとめる時間にあてるとよい。
  9. 終了後、あらかじめ講師に書いていただいた質問の回答を参加者に配布し、参考に読んでもらうよう伝える。

◎留意点

  • 引っ込み事案でなかなか質問ができない参加者もいるため、参加者同士でまんべんなく意見を言えるよう気遣うよう促すとともに、講師やアシスタントも様子を見守り、黙っている参加者がいる場合には、質問を引き出すよう工夫する。
  • 参加者の中には手話がわからないなどコミュニケーションモードの異なる学生もいるため、互いに配慮して全員がわかる形で進めるよう注意を促す。

指導計画

実際の研修会で利用できる指導計画案を掲載しています。ご自身の大学の状況に合わせて、適宜アレンジしてご利用下さい。

→PDFファイルのダウンロード

教室配置

教室配置図。内容は留意事項を参照のこと。

留意事項

教室の前方に司会者とゲストが着席し、これに向きあう形で参加者の席を配置する。
クロストーク時は、グループに分かれて話し合うため、机等の移動がしやすい教室を選択する。

情報保障

内容

  • コミュニケーション手段の異なる参加者が一同に介し、一方向に話を聞く形になるため、前半は手話通訳とパソコンノートテイクの両方を配置する。
  • 講師が発表時に使用するコミュニケーション方法を事前に十分確認し(手話・音声・文字通訳等)、情報保障の方法を検討しておく。
  • 手話通訳・パソコンノートテイクは、いずれも講師と学生の両方から見やすい位置に配置する。
  • クロストークの間は、グループに分かれてコミュニケーションを取るため、参加者同士が全員にわかる話し方を心がけるとともに、付箋や模造紙を用いて全員が内容を共有できるよう工夫する。

留意事項

手話から日本語、パソコンノートテイクとリレー形式で情報保障を行う場面では、この過程で情報の漏れが生じないよう配慮する。

進行・展開(事前準備)

参加学生向け事前課題

  • 研修に参加する参加者が、「働く」ということについて事前にイメージするとともに、将来直面するであろう課題に対して主体的に考えるきっかけを提供するため、参加者向けの事前課題を作成し、当日までに提出してもらう。内容は「教えて!先輩「ロールモデルに学ぶ-1」(事前課題)」を参照のこと。

(当日の流れ)

○ 導入(30分)
  • 情報保障体制について/事前課題の意図説明(5分)
  • 講師・ゲスト紹介/主旨説明(5分)
  • ゲストの自己紹介(15分=1人5分×3人)
○ 問題提起「働くとは?」(5分)

・ ゲストのみなさんにそれぞれ、自分の経歴を簡単に話していただくとともに、その中で得た「働く」ということに対する考え方を語っていただく。

留意事項

講師からは「自分の言葉」で「自分の経歴」を語ってもらう

○ クロストーク(80分)
  • ゲストの話を元に、クロストークを行う。まず司会から、クロストークの進行方法について説明する。(3分)
  • 進行方法は以下の通り。
    1) 5名程度のグループに分かれる。(3分)
    2) 参加者一人一人が以下のテーマに基づき、自分の考えを付箋紙に書くとともに、書き終わった付箋紙を模造紙に貼っていく(2分)

留意事項

この時、ゲストには自由に参加者の様子をみて回ってもらう。

[テーマ]

  • 「職場で困難を感じるのはどんな時か?」
  • 「そのような場面に直面した時に、どう対処しようと思うか?」
  • 「周囲の人々にはどうやって働きかけていくか?」

3) 全員で付箋紙の貼られた模造紙を見ながら、他のメンバーの意見を共有する。(10分)
4) ゲストが1名ずつグループに入り、模造紙の内容を見て参加者の質問に答える。(1グループ:15分×4人=60分)
5) 一定時間経過したらタイムキーパーが合図を行い、ゲストは次のグループに移動する。
6) グループまとめ(2分)

留意事項

進行役が、学生の持っているイメージをうまく引き出す。
答えを教える目的ではなく、学生に様々な仕事、工夫や働き方があることを気づかせるようにする。

○ まとめ(20分)
  • 全体で話ができる体制に戻り、改めてゲストの話を聞く。ここでは、本研修のまとめにかえて、ゲスト一人一人に自分にとってのロールモデルと、その方から学んだ内容について語ってもらう。(15分)
  • 司会のコメント(5分)

指導教材 資料

  • 説明用スライド
  • 学生への事前課題
  • 講師への5つの質問とその回答
  • 模造紙/付箋(大きめのもの)/太いペン
    →時間を節約するため、あらかじめ机の上に用意しておくと良い

指導教材

実際の研修会などで使用可能な教材を掲載しています。ダウンロードの上ご使用ください。

プレゼンテーション資料

説明時に講師が用いたスライドの例

スライドサムネイル画像

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